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最終章 第二幕
第47話 人魔戦争(魔頂村編)
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魔素と呼んでいるがこれは魔素を消す薬だ。ミミと共に開発し、ようやく完成したがシュテンは飲みたがらない。今のこの姿を気に入っていて、元に戻るつもりはないらしい。だからといって、他の魔族で試すこともできず今回攻め寄せてきた指揮官クラスなら良い素材になると思っていた。それゆえ捕らえたかった。片方が死んだ時クレオは表情には出さなかったが研究素材が一つ消えたという面でひどく落ち込んでいた。そしてもう1人の方は勝手に転がり込んできた。これをチャンスと捉えないクレオではなかった。魔族から魔の部分を消す薬。魔族に使えばどうなるのか見ておきたかったのだ。魔素を浴び魔族となったものにこの薬が通用するのかを確認するために、かといって魔物で試したところ身体から魔が消え動物となり、そのまま溶けてなくなったのだ。これが魔族にも起こり得るのかどうかを試す人体実験というやつだ。だがそんな素材を村から集めるなんてできない。相手から確保して何度か試したのだが魔物に近い魔族は溶けてしまった。なら人間に近い魔族だとどうなるのか?クレオはこれをどうしても試したかっただからこそ人間に近い指揮官を捕らえ実験材料にしようとしていた。その夢がついに叶うのだ。クレオは恐る恐る液体を入れた注射をヒカリに打つ。
「屈辱だわ。こんな終わり方なんてね。ぐっグゥぅぁぁぁぁぁぁぁ」
サキュバスであるヒカリからまず角が落ち、次に翼が落ち、最後に尻尾も落ちた。そして、真っ黒だった皮膚の色が白に変わるとやがて呼吸が安定する。
「ハァハァハァハァ。何これ。嘘でしょ。アンタなんてことしてくれたのよ」
「かっ可愛い」
「これは、さっきとはまるで別人ですな」
「親父、俺の妻にしてぇ」
「旦那様の前でそのような言葉はやめるのじゃゴブリル」
皆がさっきまで向けていた敵意とは違うものを感じたヒカリは急に顔が赤くなり真っ赤なリンゴ顔になる。
「なっ何よ。そんなこと言われたって許さないんだからね」
「一生許さなくて良いだ。オラの嫁さ来てくれ」
「誰がゴブリンなんかの嫁に、コラ引っ付くな離れろ下衆。えっ何で私の肌。えっえっえっ」
「君に投与したのはね。君から魔素を取り除く薬だよ」
「えっ魔素を取り除くって、えっえっえっ。じゃあ私、私って今何者なの?」
クレオが手渡した手のひらサイズの訳のわからないものを見て驚くヒカリ。
「何で、変な奴が出てくんのよ。ふざけんな。えっ攻撃が向こうに届かない!」
「そっかそっか、これはね鏡って言ってね。自分の姿を映すんだよ。うちの妻たちに自分の姿を見れるものが欲しいって言われて見よう見まねで作ったコンパクトタイプ。どう?新しい自分は?」
「えっ、この映ってるのがホントに私なの?」
「そうだよ。今皆んなが見てる君の姿」
「顔だけしか見えないんだ。ちょっと残念」
「おっ姿身希望なのね。了解」
クレオは大きいのを持ってきて、その前にヒカリを立たせると被せていた布を引き剥がす。大きな鏡が現れ、下着姿の女性が映し出される。
「キャー破廉恥。ってあっそっか自分自身なんだっけ。角はない。翼もない。尻尾もない。ってええええええええ。これってただの人間なんじゃ」
「うん。成功だ」
「最悪、どんな顔して、アンドレ様のところに帰ればいいのよ」
「返さないだ。お前さんはオラの嫁さなるだ」
「あーもう引っ付くなって、このゴブリン。そして汚いもの押し付けんな。離せって」
「ゴブリルがここまでメロメロになるなんて」
「あー良い匂いするだ。オラぜってぇ離さねぇだ」
「やめろこのゴブリン、離せ離せって」
「あっ魔王のところに戻ろうって事なら薬の効能もわかったし処分かな」
「えっえっえっ。それは話が違うじゃない」
「えっ何のこと。そうだなぁ。ゴブリルのお嫁さんになるならここに置いてやっても良いけど」
「何でこんなゴブリンの嫁にならないといけないのよ。ふざけんじゃないわよ」
「意外と真実の愛とやらに目覚めるかもよ」
「ないない、男なんてやることしか考えてない馬鹿ばかりなんだから」
「オラの嫁さなったら、そんなことないだ。毎日愛の言葉を囁きながら愛してやるだ」
「結局やってんじゃんそれ。はぁ。まぁ、こんな姿じゃ戻れないし、仕方ないわね。アンタの家で暫く厄介になってあげるわよ。但し、手を出したらすぐ出ていくからね」
「嬉しいだ。旦那様もありがとだ。オラ、これで父ちゃんを安心させてやれるだ」
ヒカリの手を引き引っ張っていくゴブリルそれを見送るゴブリットの羨ましそうな視線。
「ゴブリット、羨ましそうだな」
「旦那様、いえ、そのハハハ。家内を亡くしてから久々に息子が反応しちまったもんで」
「下ネタかよ」
「いけませんかな?」
「ハハハ。まぁ実の息子と取り合うことにならないようにな」
「息子の悲しむ顔を見たい親など居ませんよ」
だがその足取りは重そうだった。この後、ヒカリはゴブリルとの間の子供をたくさん産む事になる。その顔は幸せそうで、サキュバスに戻りたいかと聞いたら即座に否定する程度には人間としての新たな生を謳歌するのであった。
「屈辱だわ。こんな終わり方なんてね。ぐっグゥぅぁぁぁぁぁぁぁ」
サキュバスであるヒカリからまず角が落ち、次に翼が落ち、最後に尻尾も落ちた。そして、真っ黒だった皮膚の色が白に変わるとやがて呼吸が安定する。
「ハァハァハァハァ。何これ。嘘でしょ。アンタなんてことしてくれたのよ」
「かっ可愛い」
「これは、さっきとはまるで別人ですな」
「親父、俺の妻にしてぇ」
「旦那様の前でそのような言葉はやめるのじゃゴブリル」
皆がさっきまで向けていた敵意とは違うものを感じたヒカリは急に顔が赤くなり真っ赤なリンゴ顔になる。
「なっ何よ。そんなこと言われたって許さないんだからね」
「一生許さなくて良いだ。オラの嫁さ来てくれ」
「誰がゴブリンなんかの嫁に、コラ引っ付くな離れろ下衆。えっ何で私の肌。えっえっえっ」
「君に投与したのはね。君から魔素を取り除く薬だよ」
「えっ魔素を取り除くって、えっえっえっ。じゃあ私、私って今何者なの?」
クレオが手渡した手のひらサイズの訳のわからないものを見て驚くヒカリ。
「何で、変な奴が出てくんのよ。ふざけんな。えっ攻撃が向こうに届かない!」
「そっかそっか、これはね鏡って言ってね。自分の姿を映すんだよ。うちの妻たちに自分の姿を見れるものが欲しいって言われて見よう見まねで作ったコンパクトタイプ。どう?新しい自分は?」
「えっ、この映ってるのがホントに私なの?」
「そうだよ。今皆んなが見てる君の姿」
「顔だけしか見えないんだ。ちょっと残念」
「おっ姿身希望なのね。了解」
クレオは大きいのを持ってきて、その前にヒカリを立たせると被せていた布を引き剥がす。大きな鏡が現れ、下着姿の女性が映し出される。
「キャー破廉恥。ってあっそっか自分自身なんだっけ。角はない。翼もない。尻尾もない。ってええええええええ。これってただの人間なんじゃ」
「うん。成功だ」
「最悪、どんな顔して、アンドレ様のところに帰ればいいのよ」
「返さないだ。お前さんはオラの嫁さなるだ」
「あーもう引っ付くなって、このゴブリン。そして汚いもの押し付けんな。離せって」
「ゴブリルがここまでメロメロになるなんて」
「あー良い匂いするだ。オラぜってぇ離さねぇだ」
「やめろこのゴブリン、離せ離せって」
「あっ魔王のところに戻ろうって事なら薬の効能もわかったし処分かな」
「えっえっえっ。それは話が違うじゃない」
「えっ何のこと。そうだなぁ。ゴブリルのお嫁さんになるならここに置いてやっても良いけど」
「何でこんなゴブリンの嫁にならないといけないのよ。ふざけんじゃないわよ」
「意外と真実の愛とやらに目覚めるかもよ」
「ないない、男なんてやることしか考えてない馬鹿ばかりなんだから」
「オラの嫁さなったら、そんなことないだ。毎日愛の言葉を囁きながら愛してやるだ」
「結局やってんじゃんそれ。はぁ。まぁ、こんな姿じゃ戻れないし、仕方ないわね。アンタの家で暫く厄介になってあげるわよ。但し、手を出したらすぐ出ていくからね」
「嬉しいだ。旦那様もありがとだ。オラ、これで父ちゃんを安心させてやれるだ」
ヒカリの手を引き引っ張っていくゴブリルそれを見送るゴブリットの羨ましそうな視線。
「ゴブリット、羨ましそうだな」
「旦那様、いえ、そのハハハ。家内を亡くしてから久々に息子が反応しちまったもんで」
「下ネタかよ」
「いけませんかな?」
「ハハハ。まぁ実の息子と取り合うことにならないようにな」
「息子の悲しむ顔を見たい親など居ませんよ」
だがその足取りは重そうだった。この後、ヒカリはゴブリルとの間の子供をたくさん産む事になる。その顔は幸せそうで、サキュバスに戻りたいかと聞いたら即座に否定する程度には人間としての新たな生を謳歌するのであった。
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