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3章 領地改革と帝国の襲来

間話③ 軍団長会議

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【ダスティル視点】

クレオ様と共にクラス対抗戦を戦った俺たちがこの魔頂村に来てから早いもので2年が経とうとしていた。

クレオ様も13歳になりアリッサ様の成人まで残り半年程である。

我ら魔族も数が増えてきて今では一軍団100人規模になり、総人口も1000人を超えた。

村としてやっと大台といったところからこのまま人口が増えていけばいずれ1万人を越え晴れて街と呼べるだろう。

その時が今から待ち遠しい。

そんな我らの月一の軍団長会議も早いもので25回目となる。

議長は俺、副議長はシュテン、書記はアランだ。

今回は人間族の代表として元王家の兵士長であったラグラス殿とエルフ族の代表としてだけではなく俺の婚約者としてリンも出ている。

クレオ様には吊り橋効果みたいなものだからすぐ魔法は解けるなどと言われていたが一向に解けず押しの強いリンに押し切られる形となったが今では後悔していない。

もうすぐリンとの第一子も誕生する。

むしろ楽しみの方が多いのだ。

リーフやラス義父上とも頻繁に会っている。

ラス義父上からは、『婿殿と一緒になってから頻繁に帰ってきてくれるので今では好ましく思っているし寧ろありがたい』と言ってくれている。

早く孫の顔を見せてやりたいものだ。

リーフからは、『ダスティルがエルフと婚約するとは思わなかった。それもまさかリン様となんて』と驚かれたが祝福してくれた。

おっと俺のことばかり話していてはいけないな。

「ダスティル、某たちも百人将になった。そこでダスティルだけでなく某たちも各々副軍団長を任命したいと思っている。構わないか?」

スケルトンのサモンの提案に俺は頷く。

「あぁ確かに俺のとこ以外副軍団長の任命はしていなかったんだったな。うん。この機会に推薦者を出してくれ、俺がまとめてクレオ様に報告書を出す。アラン書取りは任せたぞ」

「承りましたわ」

「では先ず言い出しっぺの某から、スレイブを推したいと考えている」

「おい、待て、あの奴隷商人を副軍団長にするだとふざけるな」

「ふざけてなど居ない。そもそも稀なのだ。魂がそのまま残ることなど。それどころか奴は『新しく生まれ変われた今の自分がここにいることでかつての者たちを守ることが少しでも罪滅ぼしになるのならこの身を粉にして働く』とそう言っておったのだ。信じてやらねばカシラの名が泣くではないか」

「あぁ、もうわかったよ。変なことしねぇようにちゃんと見張ることも忘れんじゃねぇよ」

「かしこまった」

「ここに保護してもらっている分際で意見などするのは心苦しいのだが、我等元兵士10人はこの村のためにお前達と共に外敵と戦うことを決めた。元々重装歩兵隊所属のもの故シーザー殿の傘下に入りたいと考えている。許可を貰えないか?」

「シーザーどうだ?」

「俺の隊で良いのかい?ありがたい俺もクレオ様に言われて重装歩兵の勉強をしてる半端もんだ。元重装歩兵兵士長のラグラス殿から色々学びたいと思っていた。だがいつか人間達がこの村に集まるかもしれない。そうなったらそいつらの旗印になってやってくれ」

「御心遣い誠に痛み入る。俺が知っている重装歩兵としての戦い方を伝授しよう」

「よろしく頼む。うちの隊は客将のラグラス殿と俺が推薦する副軍団長のヘビーの2人体制になるが構わないか?」

「もちろんだ」

「じゃあ次は私の番ね。私の隊は副軍団長にアルチナを推すわ」

「メデイア。了解した」

「次は私の番だね。キャハ。私の隊の副軍団長は兵士長ラグラス殿と絶賛恋仲中のラッキーちゃんを推すね」

「ブゥーーーーーーーーー。ハピネス殿知ってたのですか?」

「うん、色々聞いてるよ。アレがその人間にしてはかなり逞しいとか。キャハ」

「やめてくだされ恥ずかしい」

「ハッハッハッ。流石にオーク級ではないだろう?」

「下でオークに勝てる人間など居ないでしょう」

「はーい変なところで張り合わないの。貴方のパパはお馬鹿さんでちゅねぇ」

お腹を撫でながらそんなことを言うリン。

「ハピネスもからかうのはやめてあげるぼん。うちの隊の副軍団長はファイアを推すぼん」

「フレイム、了解した」

「オラの隊からは副軍団長に息子のゴブリルを推すべ」

「おい、コネ人事は認めんぞ」

「息子可愛さに副軍団長になど推さねぇべ。馬鹿者だべ。決めるにあたり全てにおいて優秀な成績を収めたからだべ」

「ゴブリット、なら構わない」

「次はワシかのぅ。ワシの隊からはロックを推そうと考えておる」

「ロッキー、了解だ」

「俺の隊だな。俺の酒癖やら何やら色々と世話焼いてくれるイバラキを副軍団長に任命する」

「シュテンを諌められる副軍団長かなるほど。了解だ」

「最後に私ね。そうねぇ。シャドウを推そうと思っているわ」

「お前の男じゃねぇか。コネ人事は認めんって言ってるだろう」

「あら~シャドウは優秀よ。そもそも諜報活動担当の私が能力のないのを任命なんてしないわよ。それこそ死地に送り出しても帰って来れる人じゃないとねぇ」

「うっ疑って悪かった」

「わかれば良いのよぅ~ダスティルちゃん」

単槍匹馬の軍団長ダスティル、副軍団長ランス。
天魔外道の軍団長メデイア、副軍団長アルチナ。
輸攻墨守の軍団長シーザー、副軍団長ヘビー。客将のラグラス。
神出鬼没の軍団長ゴブリット、副軍団長ゴブリル。
一将万骨の軍団長サモン、副軍団長スレイブ。
社稷之守の軍団長ロッキー、副軍団長ロック。
蛇蚹蜩翼の軍団長ハピネス、副軍団長ラッキー。
気炎万丈の軍団長フレイム、副軍団長ファイア。
鬼出電入の軍団長シュテン、副軍団長イバラキ。
影迹無端の軍団長アラン、副軍団長シャドウ。

こうして各軍団の軍団長と副軍団長を纏めたものをクレオ様に持って行く。

「うん。良いと思うよ。でもまさかサモンのところの副軍団長がスレイブとはね。まぁやり直す機会がもらえたとして頑張るって言うなら僕も信じようと思う」

「後、エルフ隊の名前を決めて欲しいのです」

「あっオークと婚姻関係になるものが増えて、エルフの数もどんどん増えてたんだったね。そうだなぁ。柳緑花紅《りゅうりょくかこう》なんてどうかな?本来の自然のあるがままって意味で自然を愛するエルフにピッタリだと思わないかい?」

「リンも喜ぶと思います。では今回の報告は以上です。領主館前にて衛兵の任につきます」

「あぁよろしく頼むよ」

領主館前で衛兵の仕事をしていると見慣れぬスカウトバットが向かってきた。

「待て、見たこともないものは許可なくこの館に入ることは許さぬ。立ち去られよ」

「ダスティル、そのスカウトバットは玲王様の父上の従魔よ。通してあげて」

「リリ殿、了解した。失礼した。すぐ行かれよ」

「かたじけない。スカウトバットのバットンと申す。この御礼はいずれ。では急ぐゆえごめん」

リリ殿の焦り用もそうだが何かあったのだろうか?

嫌な胸騒ぎを覚える俺だった。
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