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1章 転生と吸血鬼を取り巻く情勢

幕間 ミルルのやらかしと動物たち

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【セイント視点】

「おいミルル、詳細情報ってスキル何だったっけ?」

我は唐突に隣にいたミルルに尋ねる。

「この前異世界転生を果たした子供に授けたスキルですわ」

ミルルが返す。

「それってどんなスキルなんだ」

我は次は効果について尋ねる。

「目で見たものが何かわかるスキルですわ」

ミルルが返す。

「なぁそれって言いにくいし別に鑑定で良くないか」

我がそういうとミルルは顔をみるみる青ざめる。

「やってしまいましたのですわ~確かに鑑定の方が完全な上位互換なのですわ」

我はそう聞くと幸いまだ産まれた直後なので詳細情報というスキルを消し去り鑑定を付与する。

「おっちょこちょいなミルルの代わりに我がやっておいたからもう心配するな。ハッハッハッ。でも後でクレオに伝えておいてくれよな」

ミルルの表情がみるみる元に戻る。

「ありがとうございますですわ。私のミスですからクレオには後でスキルの変更をしたことを伝えに行きますわ」

最近呼ばれもしないのにクレオに会いに行ってるのをみているに異界からの客人である彼のことを珍しく気に入っているのだろう。

「あっ次に行ったときに命に限りあるものだけを神は等しく愛すのだとかいうセイント教を崇めているリグレスト聖教国に関して創造主はまったく関係ないのでクレオに気にせず潰して構わないと伝えておいてくれアレはどちらかと言うと悪しき宗教の一つ邪教だからな」

ミルルは、目を丸くしながら呟く。

「セイント様を崇めている人が減れば貴方様のお力が弱くなりませんか?」

我はミルルの言葉を聞くと笑いながら述べた。

「あれは勝手に我を崇めているだけの輩で我が加護の祝福を渡しておらぬゆえ心配せずとも構わぬ」

ミルルは目を丸くして呟く。

「創造主を崇めるセイント教、国の名前はリグレスト聖教国。加護も与えていないのにこの名前にするなんてある意味凄いですわね」

「それにな奴らはヴァンパイアハンターなんてものを抱えて不死者を殺し回ってんだ。クレオも遠くない未来で接触し襲われる可能性があるだろ。前もって教えといてやるのもこの世界に転生させちまった神としてのアフターケアってやつだろ」

我はいつにもなく真剣な口調で言った。

「確かにそうですわね」

ミルルも頷き返した。

「えーこの世界への移住希望者が複数いてるみたいですわ。殆どが動物で玲王様に逢いたいと仰ってるそうですわ」

ミルルからの唐突な報告を聞き我は人たらしならぬ動物たらしのあいつならいずれこうなると思っていた。

さらに今回は人たらしの才まで芽生えつつあるみたいだからなぁ。

あいつは1歳の時に蜂を手懐け、3歳の時に猫を手懐け、5歳の時に雀を手懐け、7歳の時に蛇を手懐け、9歳の時に兎を手懐け、11歳の時に馬を手懐け、13歳の時に犬を手懐け、通っていた中学校は動物専門学校。

リアルビーストテイマーの性質を持っているのである。

あいつに逢いたいと来る動物たちなら必ずや皆助けとなるであろう。

「ミルル、全て受け入れると現実世界の神に伝えよ」

我はミルルにそういうと現実世界の面影の残した魔物にしてやることで玲王にもわかってもらいやすくしておくことにした。

「わかったのですわ。10種類全て受け入れます」

ミルルがそう言い通信を切る。

我の元に現れた10種類の動物たちを眺めながら一頭の犬に吸い寄せられる。

最初に玲王の元に遣わすのはこいつが良いだろう。

犬は飼い主が愛情を注ぐとそれに応えるように恩を返してくれる義理堅い生き物なのだ。

犬型の伝説級で強いのといえばヘルハウンドだろう地獄の番犬とも称される猟犬だ。

幼いあいつの守役としてこれ以上の存在は居ないだろう。

それにあの犬の最後は可哀想だった。

あいつもきっと会って謝りたいだろう。

これも何かの縁だ。

今度こそあいつと共に幸せになってもらいたい。

「ヘルハウンドとなりて、この異世界でお前の愛するご主人様を探せ」

そう言って全身を満遍なく撫でた。

「まさか亡霊犬のヘルハウンドにしてしまわれるなんてなのですわ」

ミルルが驚いたように言うので我は理由を説明してやった。

「うわーーーーん、あの子にそんな辛い過去があっただなんて~そこまでして大切な主人がクレオなのですね。確かに亡霊犬というチョイスもそう考えると完璧に思えますわ」

「あぁ、あいつのトラウマになってるかもしれないことの解決のためにもあいつは亡霊犬のヘルハウンドじゃないといけなかったのさ。それにこっちの世界なら吸血鬼なら知性のある魔物との意思疎通が可能だからな。お互いに想っていたことをぶつけ合えるだろう」

ミルルは我の話をうんうんと頷くとあいつへのスキル変更の報告も兼ねて消えた。

他の動物たちも我も我もと言い寄られながらもそんなにいっぺんに行くとあいつが驚いて死ぬかもしれないぞと言うと皆しおらしくなった。

ほんとあいつのことが大好きな動物たちなのだな。
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