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4章 三国鼎立

暴れたい男たち

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 朶思大王の言う通り、阿会喃と董荼那と金環三結の3人を放置していた孟獲は、意気揚々と突撃する3人を見て、頭を抱える。

 孟獲「何やってんだ。あの馬鹿共はよ!」

 孟優「あちゃー、跳ねっ返っちまいましたか」

 孟節「zzz」

 朶思大王「これで良い。向こうも兵を回すしかないからな」

 心配していた通りとなって激昂する孟獲・予想してましたよと面白そうに言う孟優。少し眠ると言って寝た孟節。朶思大王は、敵に緊張感が出て、劉璋の応援に回す兵の余裕が無くなるからこれで良いと言う。その眼下では、阿会喃と董荼那と金環三結が部隊を率いて、敵に襲いかかっていた。

 阿会喃「ヒャッハー。男の悲鳴を聞かせろ~」

 董荼那「ヒャッハー。退屈はごめんだぜ~」

 金環三結「ヒャッハー。オラオラ手応えねぇな~」

 ヒャッハー3兄弟と呼ばれる暴れん坊たちである。男の悲鳴で興奮する長兄の阿会喃。退屈は罪と断罪する次兄の董荼那。強者との戦いを好む末弟の金環三結。南蛮の台風と呼ばれる将軍でもある。

 朱褒兵士A「ヒィッ、あばばばばば」

 高定兵士A「なんだコイツら。どこから。うぐっ」

 雍闓兵士A「蛮族が舐めるな!武器が折れただと!?ガハッ」

 何処からともなく現れた蛮族たちに、ある者は悲鳴を上げながら絶望したところを容赦なく狩られ、ある者は全く違う方角から現れた事に驚きながらなす術もなく狩られ、ある者は手応えがないと言われ激昂するも力の差を前に武器をへし折られ、そのまま真っ二つに斬られる。そこは、一種の地獄絵図と呼べるだろう。それを止めるべく立ちはだかる男がいた。

 鄂煥「これ以上は許さんぞ!」

 方天戟《ホウテンゲキ》を振り回して、片っ端から蛮族共を叩き伏せる剛の者。

 高定兵士B「鄂煥殿!高定様は?」

 鄂煥「危機を知らせて体勢を整わせている。もう暫く耐えよ!」

 力強い言葉で激を飛ばす鄂煥の言葉で立ち直る兵士たち。

 阿会喃「鳴かせたいなぁ。すっごく鳴かせたいなぁ」

 董荼那「退屈させてくれるなよ」

 金環三結「さて、手応えがあるんだろうなぁ!」

 阿会喃は、刀と呼ばれる大太刀。董荼那は、双剣。金環三結は、強者の多くが用いる武器として名高い槍。卑怯と言われようとも三兄弟で力を合わせて、鄂煥に向かっていく。それは、3人も言葉とは裏腹に、鄂煥の精神力の高さとその武勇は並々ならないと判断したからである。

 鄂煥「3人がかりとは卑怯と言いたいところだがそれは無粋であろう。戦場ゆえ、それも作戦として理に適っているからな。だが、これ以上、仲間がやられるのを見ている程、某は生易しくはないぞ!」

 鄂煥は斬りかかってくる阿会喃の大太刀を方天戟で受け止めると隙だらけの脇腹に蹴りを繰り出して、距離を取る。続いて向かってくる董荼那の双剣を方天戟の先で左右に振って、攻撃を弾き、疲れたところに鋭い突きを繰り出し、双剣をクロスさせて防御した董荼那が弾き飛ばされる。董荼那を助けるべく向かってきた金環三結の鋭い槍の連続攻撃を互角に打ち合う。鄂煥は3人を相手に、一歩も引かないどころか押していた。

 阿会喃「オリャァァァァァ」

 鄂煥「珍しい武器を使っているな。だがそんな大振りでは隙だらけだぞ」

 阿会喃「!?ゴフッ」

 董荼那「兄者!今助ける」

 鄂煥「双剣か。面白い」

 董荼那「なんて奴だ。戟の左右で全ての攻撃をいなしてやがる。!?危ねぇなぁ。おい!」

 鄂煥「ほぉ。あの状態からよく防御へと移行したな。褒めておこう」

 金環三結「手応えがありそうだなぁ。おい!」

 鄂煥「見事な連携だな。隙がありそうでお互いを守りあっている。練度は高いと見える。並の兵ではあるまい」

 金環三結「俺の攻撃全部に合わせて、尚も余裕で話すお前の方こそ並の兵じゃねぇだろ」

 阿会喃「お前みたいな強者の悲鳴が聞きてぇなぁ」

 董荼那「退屈しなくてすみそうだなぁ」

 鄂煥「某も久々に楽しかったぞ。しかし、残念だったな。こちらの準備は完了した。今度はお前たちが数の暴力に押される番よ」

 朱褒と高定と雍闓が体勢を整えて、大軍にて押し返そうとしていた。

 朱褒「鄂煥殿、よくぞ耐えた」

 高定「鄂煥、良くやった」

 雍闓「テメェ、なかなかやるじゃねぇの。蛮族ども、覚悟しやがれ!」

 阿会喃「お前の悲鳴を聞きたかったなぁ。あぁ」

 董荼那「やれやれ、その程度で我らを打ち崩せると。退屈から解放されて嬉しいねぇ」

 金環三結「おいオメェら。暴れ足りねぇよなぁ!」

 金環三結の言葉に南蛮が肯定するかのように雄叫びを上げる。開戦の合図だ。両者激しくぶつかり合うが日々生い茂る森で猛獣と戦う男たちである。平地の人間を捻り潰すことなど容易く。寧ろ数で勝ってるのに押されているのは、朱褒たちである。

 金環三結「オラオラ、どうした!骨のあるやつはさっきのやつだけか!オラァ」

 阿会喃「あぁ悲鳴が俺を強くしてくれる。もっと聞かせろ、お前らの絶望の叫びを」

 董荼那「退屈だなぁ」

 鄂煥「集団戦では武が悪いか。あの3人は某が引き受ける。高定様、それ以外を頼みますぞ」

 高定「鄂煥、無理をするなよ。こちらは任された!」

 鄂煥は集団戦では不利と判断し阿会喃・董荼那・金環三結の抑えに向かい、南蛮の相手を高定たちに任せることにするが、それでも事態は好転しない。抑えることはできても討つには至らないのである。1人1人の武力はそれなりでも3人の連携の成せる技に、鄂煥は技術では上回っていても討つ一手とはならなかったのである。

 鄂煥「このままでは、こちらの方がじわりと首を絞められているか」

 阿会喃「オリャァァァァァァァァ」

 董荼那「ソリャソリャ」

 金環三結「ハァァァァァァァァ」

 鄂煥「考え事をしていては駄目だな」

 阿会喃「隙を晒しても凌ぐほどの腕前か。ますますテメェの悲鳴が聴きたいねぇ」

 董荼那「3人がかりで、ここまで壊れないやつがいるなんて退屈しなくて良い!」

 金環三結「手応えあるやつとの戦いは楽しいぜ!」

 鄂煥「やれやれ、困った困った」

 しかし、この行動が法正たちにとっては朗報をもたらし、劉璋たちにとっては悲報となるのであった。
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