上 下
421 / 520
4章 三国鼎立

劉璋のやり残し

しおりを挟む
 劉備軍の侵攻を聞いた劉璋は、攻めから守りへと転じるしかなかった。イライラを隠しきれない劉璋は、法正の友人ということだけで縛り付けている張松を蹴り上げる。

 劉璋「劉備のクソが!荊州侵攻された腹いせだと。どこも攻略できてねぇよ!テメェらを恨んでんのは、俺の方なんだよ!この、この、クソが!」

 張松「ゴフッ。ゲフッ(どうして、こんな目に、もう死にたい)」

 王累「劉璋様、お戯れはその辺に、牂牁郡は、馬超殿に任せるとして、南蛮どもの相手には、雍闓ヨウガイ朱褒シュホウ高定コウテイの3将に、守ってばかりもいられませぬゆえ、我らは、反乱軍の拠点の一つ巴郡へと侵攻するのが良いかと」

 劉璋「妥当な判断だな。法正と呉懿には、死を持って償ってもらうぞ。張松、お前には友人が一人一人死ぬ様を見せつけてやるから覚悟せよ」

 張松「んんんん、んんん、んんんんん」

 劉璋「そうかそうか泣くぐらい嬉しいか。オラァ」

 劉璋は張松の男の象徴を潰すぐらいの勢いでおもいっきり蹴り上げた。

 張松「ガッ」

 劉璋「なんじゃ、この程度で気絶しよって、牢に転がせておけ」

 劉璋は、近くの兵に命じ、手をパンパンと叩いた後、言う。

 劉璋「我らの帰還を防ごうとした巴郡の馬鹿共を殺す。その前に、連れて来い」

 1人の老人が兵士に連れられてくる。

 劉璋「下がって良いぞ」

 兵士を下がらせると連れてこられたかつて呆けたので、療養施設に送り込んだ父、劉焉と向き合う。

 劉璋「まさか、呆け老人のフリをされているとは思いませんでしたよ父上」

 劉焉「我が息子にこのような言葉をかける日がこようとはな。地獄に落ちろ!」

 劉璋「地獄に落ちろですか。えぇ、貴方の息子なら俺を残して、全員始末して差し上げましたよ。文字通り、地獄にねぇ。後はお前とあのクソ女を殺せば終わりだ。趙筰の奴をたぶらかして、巴郡に籠るクソ女をな!」

 劉焉「ワシが間違えていたことは謝ろう。他所の女に産ませたお前を妻に育てさせたことも、それを苦に感じていて、自死したことも。だがなぁ、貴様のような化け物を生み出したのはワシの落ち度。ワシ自らの手で、葬れないことが悔やまられるわ」

 劉璋は不敵な笑みを浮かべる。

 劉璋「安心してくださいよ。俺には父も母も居ませんよ。それに、俺から最愛の人を傷つけ奪ったテメェだけは、絶対に許さないって決めてたからなぁ。ボケて何も覚えてない罪の自覚すらねぇ。テメェをわざわざ療養施設に入れたのは、なんでだと思う?まさか、子が親に持つ愛情だとでも?勘違いも甚だしい、この時を待ってたのさ。テメェが罪を告白し、それを聞いた俺がこの手で貴様を殺す時をな!さぁ、答えろ。俺を産んだのは、誰だ?」

 劉焉「もう、わかっていよう。ワシは張衡と1人の女を取り合っていた。負けたワシは、別の女との間に劉範・劉誕・劉瑁をもうけた。それは幸せな時間じゃったよ。だが張衡が亡くなったと聞いた時、ワシは己の中にあるドス黒い欲望を止めることはできんかった。ワシは、張姜子を拉致し、ワシの子を産むように迫った。そして、ワシは子と引き換えに漢中の自治を認めた。これがワシ自身の口から聞きたかったのであろう?」

 劉璋「きちんと覚えてるみてぇだなクソ野郎が。だったら俺がこんなに歪んじまった理由もわかるよなぁ?」

 劉焉「母といってもお前にとっては、育ての母への恋慕か?」

 劉璋「あぁその通りだよ。俺は、母さんに恋するなんて変だって、ずっと自分はおかしいんだって、そう思ってた。でもなぁ!何のことはねぇ。だってよ、俺と母さんは血の繋がりなんて全くないんだからよ!俺は、母さんを愛してた。テメェのようなクソ野郎よりもずっとな!これは、俺の復讐なんかじゃねぇ!失意の中、死んだ母さんへの手向けだ。あばよ。クゾジジイ。テメェのことなんて、親と思ったことなんてねぇんだよ。馬鹿が」

 劉璋の振り下ろした剣が劉焉の首を床へと落とす。こうして、劉璋は、張姜子を除く、少なからず血の繋がりのある父と兄弟を皆殺しにしたのである。

 劉璋「さて、処刑は終わった。巴郡を奪って、隠れてるクソババアを狩るとしようか」

 床に転がる劉焉の亡骸に唾を吐き捨てて、出ていく劉璋は、皆の前に現れると宣言する。

 劉璋「反乱分子どもは、根絶やしにする。アイツらは、この俺が妻に対して酷い扱いをしたとそう吹聴しているようだが大事な女を満足させられなかったのは誰だ?大事なら何よりも優先するものであろう。寂しい思いをさせたアイツらの代わりに慰めてやっただけのこと。あんな戯言を吹聴される言われなどない」

 堂々と不倫してましたという宣言だ。普通なら何してんの?となるところだがここにいる者たちは。

 劉璋軍兵士A「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!劉璋様のいう通りだ!満足させられない野郎はクズ」

 劉璋軍兵士B「いつもうちの妻を満足させていただき感謝しております劉璋様!」

 このように劉璋の為すことを全肯定する者たちなのである。

 劉璋「お前たちのような部下を持てて、幸せだ。全軍、反乱分子共を駆逐せよ!」

 うおおおおおおおおという雄叫びと共に劉璋軍が巴郡へと向かう。間も無くして、巴郡では、趙筰率いる反乱軍と劉璋率いる政府軍とのバトルが始まる。

 その頃、牂牁郡では、馬超軍と劉備軍が。益州郡の雍闓と越巂郡の高定は、永昌郡の孟獲と睨み合いをしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライムの、のんびり冒険者生活

南柱骨太
ファンタジー
 いわゆる転生モノ。  神様に拾ってもらい、異世界に転生したらスライムだった! いくら種族が選べないからってそりゃないよ!  そう思っていた時期が僕にもありました(笑)。  スライムってね、レベルが低いから弱いんだね。前世からの知能があって、レベル上がったら、けっこう強くなれたよ。しかもスライムだから形状容姿は自由自在。さらに神様にもらったスキルで冒険者ランクも上がってウハウハだよ。  そんなスライムの僕が、人間のフリをして冒険者の生活をする、そんな物語。 ※ある程度まとめての更新になります。おそらく章単位。 ※月に数回の更新になると思います。 ※長編か短編かで迷いましたが、たぶん短編。予定では8章(80~100話)で終了。 ※R15は保険。R18にはしない予定(汗)。

エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~

ロクマルJ
SF
百万年の時を越え 地球最強のサイボーグ兵士が目覚めた時 人類の文明は衰退し 地上は、魔法と古代文明が入り混じる ファンタジー世界へと変容していた。 新たなる世界で、兵士は 冒険者を目指す一人の少女と出会い 再び人類の守り手として歩き出す。 そして世界の真実が解き明かされる時 人類の運命の歯車は 再び大きく動き始める... ※書き物初挑戦となります、拙い文章でお見苦しい所も多々あるとは思いますが  もし気に入って頂ける方が良ければ幸しく思います  週1話のペースを目標に更新して参ります  よろしくお願いします ▼表紙絵、挿絵プロジェクト進行中▼ イラストレーター:東雲飛鶴様協力の元、表紙・挿絵を制作中です! 表紙の原案候補その1(2019/2/25)アップしました 後にまた完成版をアップ致します!

離縁してほしいというので出て行きますけど、多分大変ですよ。

日向はび
恋愛
「離縁してほしい」その言葉にウィネアは呆然とした。この浮気をし、散財し、借金まみれで働かない男から、そんなことを言われるとは思ってなかったのだ。彼の生活は今までウィネアによってなんとか補われてきたもの。なのに離縁していいのだろうか。「彼女との間に子供ができた」なんて言ってますけど、育てるのも大変なのに……。まぁいいか。私は私で幸せにならせていただきますね。

学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

したらき
恋愛
神坂冬樹(かみさかふゆき)はクラスメイトに陥れられて犯罪者の烙印を押されてしまった。約2ヶ月で無実を晴らすことができたのだが、信じてくれなかった家族・幼なじみ・友人・教師などを信頼することができなくなっていた。 ■作者より■ 主人公は神坂冬樹ですが、群像劇的にサブキャラにも人物視点を転換していき、その都度冒頭で誰の視点で展開しているのかを表記しています。 237話より改行のルールを変更しております(236話以前を遡及しての修正は行いません)。 前・後書きはできるだけシンプルを心掛け、陳腐化したら適宜削除を行っていきます。 以下X(Twitter)アカウントにて作品についてや感想への回答もつぶやいております。 https://twitter.com/shirata_9 ( @shirata_9 ) 更新は行える時に行う不定期更新です。 ※《小説家になろう》《カクヨム》にて同時並行投稿を行っております。

アルケミア・オンライン

メビウス
SF
※現在不定期更新中。多忙なため期間が大きく開く可能性あり。 『錬金術を携えて強敵に挑め!』 ゲーム好きの少年、芦名昴は、幸運にも最新VRMMORPGの「アルケミア・オンライン」事前登録の抽選に当選する。常識外れとも言えるキャラクタービルドでプレイする最中、彼は1人の刀使いと出会う。 宝石に秘められた謎、仮想世界を取り巻くヒトとAIの関係、そして密かに動き出す陰謀。メガヒットゲーム作品が映し出す『世界の真実』とは────? これは、AIに愛され仮想世界に選ばれた1人の少年と、ヒトになろうとしたAIとの、運命の戦いを描いた物語。

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。

和泉鷹央
恋愛
 アイリスは国母候補として長年にわたる教育を受けてきた、王太子アズライルの許嫁。  自分を正室として考えてくれるなら、十歳年上の殿下の浮気にも目を瞑ろう。  だって、殿下にはすでに非公式ながら側妃ダイアナがいるのだし。  しかし、素知らぬふりをして見逃せるのも、結婚式前夜までだった。  結婚式前夜には互いに床を共にするという習慣があるのに――彼は深夜になっても戻ってこない。  炎の女神の司祭という側面を持つアイリスの怒りが、静かに爆発する‥‥‥  2021年9月2日。  完結しました。  応援、ありがとうございます。  他の投稿サイトにも掲載しています。

死神公爵と契約結婚…と見せかけてバリバリの大本命婚を成し遂げます!

daru
恋愛
 侯爵令嬢である私、フローラ・アルヴィエは、どうやら親友アリスの婚約者であるマーセル王子殿下に好意を持たれているらしい。  困りましたわ。殿下にこれっぽっちも興味は無いし、アリスと仲違いをしたくもない。  かくなる上は…、 「殿下の天敵、死神公爵様と結婚をしてみせますわ!」 本編は中編です。

処理中です...