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4章 三国鼎立

原因不明の病

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 義賢が熱を出してうなされている頃、董白は水で濡らしタオルでおでこと首を冷やすなど甲斐甲斐しく看病していた。
 董白「義賢、私を置いて行かないで、貴方が居なくなったら私」
 槃李杏「董白姐様、ずっと看病していては疲れます。今日はもうお休みに、後は私が見ていますから」
 董白「嫌よ。側を離れないわ。今日はここで寝るから、李杏ちゃんこそ。もう帰りなさい」
 槃李杏「いえ。主人が張角様を呼びに行ったっきり帰ってきませんから。董白姐様をお手伝いします」
 義賢「うぅぅぅぅぅぅ」
 董白「また熱が上がった。どうしてどうして下がらないよ。いつもはこれで下がるじゃない!義賢、義賢、死んだらダメよ」
 槃李杏「そんなに身体を揺すっては」
 董白「じゃあ、どうしたら良いってのよ!もう、ほっといてよ。あっごめんなさい」
 槃李杏「良いのですよ。大事な人が原因不明の熱で生死の境を彷徨っているのに取り乱さない人は居ませんよ」
 董白「ありがとう。冷たい水を汲んで来てもらっても良いかしら?」
 槃李杏「えぇ、勿論です。看病は体力勝負です。私も何回、あの子たちで気を揉んだことか。だから休める時に休まないと持ちませんよ。起きた時に、やつれた董白姐様を見て、劉丁様はどう思うでしょうか?」
 董白「義賢のことだから、心配しちゃうわね。次、タオルを変えたら休むわ。ありがとう李杏ちゃん」
 槃李杏「いえ、それでは失礼致します」
 槃李杏が冷たい水を汲みに向かう。
 董白「こんなに心配かけて、この馬鹿!目を覚ましたら文句言ってやるんだからね!」
 義賢「うっうぅぅぅぅ」
 義賢が寝込んで、1週間が経ちようやく張角が到着した。
 魏延「おいジジイ。もっと速く来い!」
 張角「誰がジジイじゃ。全く、最近の若いもんは口の聞き方がなっとらん」
 魏延「うるせぇ。劉丁殿が死にかけてるんだぞ!お前も命を救われたんだろうが!このノロマのジジイが!」
 張角「劉丁殿が?それを早く言わんかこの馬鹿者が!」
 魏延「さっきからずっと言ってるだろうが!耳まで遠くなったんじゃねぇのかジジイ!」
 張角「やれやれ、そうやって年寄り扱いしているといつか足元を掬われることになるぞ」
 魏延「フン。とにかく急いでくれ。一刻を争うんだ!」
 張角「わかったわかった。じゃからそんなに急かさんでくれ」
 魏延が義賢の家の扉を強く叩くと董白が出てきた。その姿は、目にはクマができていて、泣きはらしたかのように真っ赤な目で、やつれていた。
 魏延「開けてくれ!先生を連れて来た」
 董白「ありがとう魏延殿。張角先生、こちらです」
 張角「うむ」
 張角が義賢を見る。
 張角「ふむぅ。流行病かと思ったがそうではなさそうじゃ。舌も晴れておらんし。額と首が物凄く熱いだけときたもんじゃ。まーったく、わからん」
 魏延「おいジジイ!テメェ、勝手なこと言ってんじゃねぇぞ!」
 董白「やめて魏延殿」
 魏延「ですが董白様!」
 董白「良いの。なんかそんな気がしてたから。またなのね。今度は何日戻るのかしら。貴方はそうやって皆を守ってきたんだものね」
 魏延「何を言っておられるのですか?どうして、そんなに落ち着いていられるのです!何故、諦める!」
 槃李杏「董白姐様、もうお休みください。ここ最近、寝ておられませんよね?」
 董白「そうね。張角先生でわからないならどうしようもないものね」
 董白は義賢の寝る部屋を出て行くと倒れた。
 張角「これはいかん!こんな訳のわからない病の看病をしていたのだ!うつっていたら手の施しようがないぞ」
 魏延「テメェ、またでたらめ言いやがって!この世に原因不明の病なんかあるわけねぇだろうが!」
 槃李杏「やめなさい!私たちの恩人がこんな目にあって取り乱すのはわかるわ。でも、だからと言ってそんな暴言を吐いて良いわけじゃない!少し頭を冷やしてきなさい!」
 魏延「李杏、俺はただ。わーったよ。クソッ」
 槃李杏に怒られて魏延が渋々、部屋を後にして、外に出る。
 槃李杏「うちの主人が申し訳ありませんでした張角先生」
 張角「良い。じゃがワシとしてもこんなのは初めてじゃ。まーったく原因がわからん熱など」
 槃李杏「董白姐様はどうでしょうか?」
 張角「安心せい。ただの過労じゃ。心配でつきっきりで看病していたのであろう。どうやらワシにできることは何もなさそうじゃが容態が急変せんとも限らん。暫く近くの宿に泊まらせてもらうので、何かあったらすぐに知らせに来るんじゃ」
 槃李杏「ありがとうございます」
 張角も外に出ていく。
 槃李杏「はぁ。もう起きて良いですよ」
 義賢「いつからわかってた?」
 槃李杏「先程です。張角先生に恥を欠かさないようにするのが大変でしたよ。全く、よく見たら脇に丸い玉を挟んで、血流を止めて、仮死状態になるとか何を考えているのです!董白姐様がどれだけ心配したと!」
 義賢「これに関しては、本当に偶然なのだ。恐らく牝愛と遊んでいて、そのまま脇にボールが」
 槃李杏「はぁ。張角先生ならすぐわかるかと思って、ヒヤヒヤしましたよ」
 義賢「わかっていただろうな。冗談っぽくまーったくわからんと言ってたからな。それにしても董白には本当に申し訳ないことをした。起きた時に驚かせてやるとしよう」
 槃李杏「本当に良い性格してますね。流石、私たちを滅ぼすためにあれだけの数を犠牲にして、地図なんてものを作っただけはありますよ。まぁそのお陰でこうして命を救われて愛する人とも一緒になれて、董白姐様とも知り合えたのですからそれは良しとしましょう。私は怒られたくありませんからこれで失礼します。うんと董白姐様に怒られてください!」
 義賢「地図?そんなものは書いてないぞ。俺たちは本当にあの戦いで全滅していてもおかしくなかった」
 槃李杏「あの2人がハッタリに騙されたとはね」
 義賢「黙っていてくれてありがとう。でも董白が倒れた時は、すぐに起き上がりそうになった。李杏殿がいてくれて助かった。こんな恥ずかしいこと知られたくなかったので」
 槃李杏「全くですよ。何処に子供と遊んでいて、傍に丸い玉を挟んで、血流が止まって、仮死なんて情けないことになる人がいるんでしょうね?」
 義賢「ここに」
 槃李杏「うんと董白姐様に怒られてください!」
 義賢「はい」
 こうして義賢は、起き上がって、董白の部屋で看病するのだった。
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