えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

4章 三国鼎立

南海城内にて一騎討ち

　士祇が壁に立てかけられていた大太刀を手に取り、向かってくる。劉備は雌雄一対の剣を十字にクロスさせて受け止める。
　士祇「ほぉ。我が一撃を止めるか。面白い。噂に聞いていただけであったが相当の手練れのようだな。そうでなくては面白くない」
　劉備「何という力だ。これも何かの薬か？」
　士祇「そう思うのも無理はないだろうがこれは正真正銘、俺の力だ」
　劉備「何故、このような力を持ちながら人の為に使わないのだ？」
　士祇「俺は俺なりにこの交州の人を守っているつもりだ。簒奪者からな」
　民男「そうだ士祇様、やってしまってください！」
　民老「士祇様こそが国を守る守護神じゃ。簒奪者にどうか死を」
　民女「士祇様が亡くなられたらこの爆弾で簒奪者を殺します」
　士頌「兄上～負けないで～私を愛して～」
　士幹「兄様～士頌じゃなくて私を愛して～」
　劉備は完全なアウェーの中、士祇の攻撃を防戦一方で受け止めていた。
　士祇「どうしたどうした。自分だけ黄色い声援がなくて、力が出ぬか。それともこれがお前の力か。つまらんぞ」
　劉備「こちらは部下たちを帰らされてしまったんでな」
　打ち合っているように見えるがその実、少しづつ傷を負っている劉備。
　士祇「守るべきものが増えて、お前は弱くなってしまったようだ」
　劉備「何を言っている。守るものがあるからこそ人は強くなれるのだ」
　さらに打ち合うが打開策を見出せない劉備にどんどん傷が増えていた。
　民男「その調子です士祇様。虐殺王にトドメを」
　民老「流石士祇様じゃ。我らが手を下すまでもありませんでしたな。簒奪者に死を」
　民女「士祇様～カッコいい～。強姦王なんて女の敵にトドメを～」
　士頌「兄上～そんなやつ早く殺して愛して～」
　士幹「兄様～兄様、兄様～」
　士祇「やれやれ、もっと期待していたのだがこれで王道も終わりか。いや、次は俺が王道を振り翳して曹操様と。それも一興か」
　劉備「俺の次は曹操殿だと。舐められたものだ」
　士祇「どうした癇に障ったか？」
　劉備「あぁ、お前のようにまるで遊びのようにこの世界を乱すものがいるから私も曹操殿も立ち上がるしかなかったのだ。少なくとも私たちは自分の信念に正直にそれを遂行したいと邁進してきた。何の信念もなく国を乱すだけのお前には負けん！」
　士祇「ほぉ。先ほどより力が漲っているな。これは楽しめそうだ」
　劉備は、この一撃で仕留めるために力を込める。その時、頭の中で兄弟たちや臣下たちや息子の声援が聞こえた。
　張飛「大兄者！何辛い顔してんだよ！そんな奴に負けんじゃねえ！俺が支えてやっからよ」
　関羽「兄者よ。どうされた。兄者の力はこんなものではなかろう。さぁ、その前の敵を斬られよ。力が足りないのは我が刃を貸しましょうぞ」
　劉丁「兄上、何を迷っているのですか？兄上らしくありませんね。芙蓉義姉さんを助けた時の方が何倍も苦しかったでしょう」
　義賢「兄上、俺が必ず兄上を天下人に、だからまだ死なないでくださいよ」
　田豫「玄徳、そんな奴に苦戦するお前じゃ無いだろ。俺に夢を見させた責任を取れ、すっかり離れられなくなってしまったんだからな」
　簡雍「やれやれ玄徳ともあろうもんが、あっしは戦は苦手だと言っただろう。でもお前さんの背を支えることぐらいはしてやれるさ」
　趙雲「殿がこのような姿を見せるとは、苦しいなら頼ってください。我が槍は、殿のためにあるのですから」
　黄忠「殿、らしくありませんぞい。そのような男の口車に乗って、御身を危険に晒すなぞ。ですが勝算あってのことでしょうな。我が弓を預けましょうぞ」
　陳到「殿！まだまだ親衛隊としての務めを果たさせてください。殿の親衛隊の力はいつも殿と共に」
　張郃「殿！私が女とわかっても変わらず信頼してくださり軍を預けてくださいました。まだまだ返せてない恩だらけなんです。負けないで」
　荀彧「殿、今言うんですが実は曹操殿のところに行こうとしていたんです。それを引き止め夢を見させたのは殿と劉丁殿ですよ。さぁ立ってください」
　諸葛亮「玄徳殿、このような道半ばで全てを投げ出すつもりですか？そのような男に勝てなくて曹操に勝てるでしょうか？さぁお立ちなさい」
　阿斗「父さん、別に死んでも僕は大丈夫だよ。そしたら尚香お姉ちゃんと僕が結婚して、ムフフ大帝国を築くから。ほんと泣いたりしないから。泣いたりしないから」
　芙蓉姫「貴方らしくありませんね。どうしたのです。傷が痛くて立ってるのもやっとですか？このようなところで死ぬことなど許しませんよ。ほら力を込めなさい」
　甘梅「玄徳様、私感謝してるの玄徳様と出会えて生き別れたお兄ちゃんにも会えた。私、今凄く幸せだよ。だから、絶対に生きて帰ってきてね。待ってるから」
　劉備は頭の中だけで聞こえる声だと理解しつつも身体の奥底から力が湧き上がってくるのを感じていた。
　劉備「皆、ありがとう。私は、この一撃でコイツに勝つ」
　士祇「面白い。先程まで一太刀も浴びせられなかったくせして、どうやって勝つというのだ。せっかくだから受け切ってから殺してやろうぞ」
　士祇は劉備の一撃を受け止めようと構えるが劉備の持つ2本の剣の一振りめで、大太刀が折られてしまった。そして、すかさずもう一振りが脳天にザシュッと突き刺さるのだった。
　士祇「何だと！？我が大太刀が？しまった！劉備は双剣。クガァァァァァァァァァァァァァァァ」
　劉備「敵将、士祇。劉玄徳がその命を頂戴した。ハァハァハァハァ」
　しかし、士祇を討ち取って、交州制覇とはならなそうだった。士祇の2人の弟が民たちの方へと近づいていくのだった。