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4章 三国鼎立

甄姫の話と馬超の話

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【甄姫の話】
 数週間前、甄姫は曹操軍に包囲されている倉亭新城を商人の振りをして抜け出した。青州にいるという袁煕から会いたいと馴染みの商人から手紙を受け取ったからだ。
 甄姫「こんな事を手伝わせて、すみません。商央ショウオウ
 商央「袁煕様にも甄姫様にも御贔屓にしていただいてますからなぁ。なーに、包囲してる曹操軍といえ、優しいものです。民を飢えさせては、制圧した後困ると言って、商人の往来は許されてますからなぁ。まぁ、商人のやることにいちいち気にしていないだけかもしれませんがな。ガハハ」
 甄姫「青州と冀州の間の緩衝地にある村にて、匿ってもらっていると」
 商央「ここからすぐですな。やはり、曹操軍の包囲で身動きが取れないと見えますなぁ。ここは一つ商人として頑張りますかな。ガハハ」
 甄姫「よろしくお願いします」
 こうして、甄姫は袁煕が匿われている村へとやってきた。
 袁煕「甄姫、逢いたかった」
 甄姫「袁煕様。皆様は?」
 袁煕「ごめん。君に逢いたくて、嘘をついた。尚たちは、ゆっくりだが青州を抜けようとしている。俺だけここに戻ってきたんだ」
 甄姫「この大馬鹿者!貴方の役目は何ですか!袁尚様を守ることでしょう!貴方を捨てた妻に逢うことが重要なことですか!」
 袁煕「今からでも遅くない。こうして、外に出られたんだ。一緒に逃げよう」
 甄姫「それは叶いません。私が逃げれば、袁譚様は殺されるでしょう。それにあの時、約束したではないですか!例え、曹操の側室となろうとも袁譚様と民のことは私が守りますと」
 袁煕「全く君には敵わないな。だからこんなにも心惹かれるんだろう。ずっと見ていたい」
 甄姫「何を?」
 袁煕「最後に君を抱かせてくれないか。今までもこれからも君だけを愛してる。思い出をくれないか?」
 甄姫「酷い人ね。そんな言われ方をしたら断れないじゃない」
 2人はまるでこれが最後であるかのように情熱的に絡み合った。
 袁煕「甄姫、ありがとう。この思い出を胸に頑張っていけそうだ」
 甄姫「袁煕様、ひょっとしたら出来たかも」
 袁煕「それは嬉しいが子の顔も見れないのは残念だ。それに、その子は曹操の子として育てられるだろう」
 甄姫「えぇ。でも私たちが知っていれば、何れ会えるわ」
 袁煕「君に似て、可愛いんだろうな」
 甄姫「あら、袁煕様に似てカッコよくなるわ」
 2人とも笑い合う。
 袁煕「大好きだよ甄姫」
 甄姫「私もよ。お互い、大事な物のために精一杯生き抜きましょう」
 袁煕「あぁ。約束だ。後一つ頼まれてくれる?」
 甄姫「何かしら?」
 袁煕「この手紙を万が一の時には兄上に。兄上は、俺たちのために命を投げ出す人だから」
 甄姫「わかったわ。絶対に死なせないから。袁煕様も絶対に捕まらないで」
 袁煕「わかった。徐州の呂布殿を頼ろうと思っている。彼が父に捨て駒のように使われていた頃に面識があるんだ」
 甄姫「それは良いわ。徐州か。豊かな土地だそうね。行ってみたいわ」
 袁煕「フフ。いつかの楽しみに取っておくよ。甄姫と2人で気ままに旅をね」
 甄姫「えぇ、いつの日か」
 こうして甄姫が袁煕と密会した数日後、倉亭新城は落ちたのである。
【馬超の話】
 倉亭新城が落ち華北が曹操の手に落ちたことにより、馬超は涼州へと帰ることとなる。
 曹操「馬超殿、噂に違わぬ武働きであった」
 馬超「父が世話になっているのだ。これぐらい当然のこと。また何かあれば(曹操の次の侵攻先は我が涼州だ。急ぎ戻り皆と話し合わねば)」
 曹操「うむ。此度の援軍。心より感謝する(次は涼州だ。涼州にも美人がいると聞く。王異だったか?楽しみだ)」
 馬超「こちらこそ。父のことをくれぐれも頼む」
 曹操「勿論だ」
 馬超が涼州に戻るとすっかり仲良くなった王異と閻行が出迎える。
 王異「馬超様、ご無事を祈っておりましたがこうしてお顔を見れて。キャッ。馬超様?」
 馬超「袁尚は滅んだ。曹操の次の狙いはこの涼州だ。その手助けをしてしまった」
 王異「錦馬超と恐れられる方が弱気なんてみっともない。私の愛した馬超様は、そんな弱気を言う人ではありません。攻めてくるというのならこの涼州で迎撃してやれば良いのです」
 楊笙鈴「馬超様、皆で支えますから」
 馬超「あぁ。父を人質に取られ、お前たちまで苦労をかけると少し弱気になっていた」
 閻行「熱々だなぁ」
 馬超「閻行、変わりなかったか?」
 閻行「おぅ。お前の嫁とやり合って、少し仲良くなったぐらいだ」
 馬超「王異と?」
 閻行「いい嫁を持ったじゃねぇか。勿体ねぇぜ」
 王異「閻行、私はまだ許したわけではないと言ったはずだ。ここで、再戦しても良いんだぞ」
 閻行「怖い怖い。愛する人に向ける笑顔とまるで違うじゃねぇか」
 王異「当然だ」
 馬超「止めるのだ2人とも。今は大事な仲間であらう。誰1人抜けてもこの涼州は守れないんだからな。ほら王異、笑って。怖い顔は似合わないぞ」
 王異「馬超様。エヘヘ」
 馬超「まだ堅いな。でも、可愛いから許す」
 馬柳「あっあっ兄上。ぼっぼっ僕は、霧毯のところに」
 馬超「あぁ、柳。行っておいで。阿貴殿も、お前の活躍を聞けばきっと結婚を許してくれるさ」
 王異「その事なのですが。馬超様、不在の間に氐族が反乱を起こしまして、反乱の鎮圧には成功したのですが。その」
 馬柳「霧毯に何かあったの?教えてよ王異義姉さん!」
 王異「見てもらえれば、こちらです」
 王異が案内した部屋に阿貴と霧毯が居た。
 阿貴「霧毯、わかるか。トト様だ。ほら、返事をしてくれ。何故だ。何故。こんなことに。ワシがワシが千万の野心に気付いて居れば」
 霧毯は虚空を見上げて、全く反応がない。
 馬柳「そんな。霧毯に一体何が?」
 阿貴「千万の奴が強姦したのだ。何度も何度も地下に響くぐらいギシギシと音が鳴っていた。ワシはワシは助けられなんだ。すまんすまん馬柳殿」
 馬柳「霧毯、僕だよ。わかる」
 霧毯「・・・・・・」
 馬柳「こんなことになるぐらいなら。手柄なんていらなかった。ずっとそばに居てあげれば良かった。霧毯のことを守ってあげられなかった」
 霧毯「・・・・・・」
 馬柳「僕がずっとそばにいるから。君が感情を取り戻すまで、ずっと」
 この日から馬柳はまるで魂が抜けたかのように、霧毯の側を離れなくなった。馬超は、弟の悲痛な想いを見ているしかできなかった。だが、刻一刻とこの間にも曹操は準備を着々と進めている。時間は待ってはくれないのだ。馬超も連日、臣下たちを集めて協議する日々を送るのであった。
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