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4章 三国鼎立

文聘と劉琮

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 劉琮は自分が女だとバレたことに恥ずかしさのあまりまた部屋に閉じこもってしまった。
 劉琮「なんで、なんで、バラしちゃうかなぁ。仲業だけが知ってるって特別感しか娘扱いしてくる私と仲業の繋がりがなかったのに。みんなにバレたら特別感が無くなっちゃうじゃん。私ばっかり好きで馬鹿みたい。馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、仲業なんて大嫌い、、、、やっぱり好き。どうしよう~」
 ドンドンドンと部屋の扉を叩く音が聞こえる。
 文聘「あの、劉琮様、まだ怒ってますかな?」
 劉琮「当たり前でしょ!胸だよ胸。しかもどさくさに紛れて下から上に揉みほぐすように」
 文聘「あわわわ。そんなハッキリと言わんでください!俺としたことが抱きついた拍子に手が滑っちまいまして」
 劉琮「そっ。手が滑ったなら仕方ないね。空いてるから入ってきて」
 文聘「許してくださるのですか?それでは、失礼します」
 劉琮は入ってきた文聘を抱き寄せると口付けした。
 文聘「んん!?なっ何を!?」
 劉琮「あっごめん仲業、口が滑っちゃったぁ」
 文聘「劉琮様、これは笑えない冗談ですぞ」
 劉琮「冗談なんかじゃないもん!本気だもん!」
 文聘「へっ?ええええええ!?いやいや本気って、俺に?こんな一回りも離れたオッサンに?」
 劉琮「何よ!嫌なの?嫌なら言いなさいよ!」
 文聘「いえ、その驚いて言葉を失っているだけで、劉琮様の唇は柔らかくて、りんごの味がしました」
 劉琮「りんごなんて食べてないわよ?」
 文聘「例えですよ。りんごのように水々しくて甘い味だったと」
 文聘の言葉を聞いて、顔だけでなく耳まで真っ赤になっている劉琮。
 文聘「真っ赤っかでまるでりんごですな。ゴホン。劉琮様が本気なら俺もきちんと返事をせねばなりませんな」
 劉琮は文聘の言葉を聞いて唾をゴクリと飲み込んだ。
 文聘「初めてお会いした時は、なんでこんな少女のお守りをしないといけないのだと思ったものですな。あの時はまだ俺も将として取り立てられたばかりのペーペーで、戦で手柄を挙げる事こそ男の花道なんて思っていましたからな。ですが劉琮様と接するうちに、こんな華奢な女性でありながら病弱の兄に代わって、皆を守ろうと尽力する御姿。父の期待に必死に応えようとするひたむきさにいつのまにか惹かれておりました。ですが身分の違いが邪魔をして俺なんかには無理だと。劉琮様は新しく殿となられた劉備様の大事な養女、俺なんかよりも素敵な殿方が現れるでしょう。大変、有難いのですがこれを思い出とします」
 劉琮「なんでよ!養父様は、身分の違いを気にする人じゃないもん!やっとやっと結ばれるかもしれないって勇気出したのに、なんでなんで断るのよ!なんで一緒に養父様にお願いするとか考えないのよ!仲業なんて、知らない。阿呆・馬鹿・愚図、嫌い嫌い大嫌い!出てって!出てってよ!」
 劉琮に押される形で外へと出される文聘。
 文聘「劉琮様、そこで聞いていてください。そこまでの覚悟だったのですな。また、踏み躙ってしまいましたな。俺は、いつも肝心な時に足が前に出ない。劉琮様が勇気を出して告白してくださったというのに、俺は俺は。俺だって劉琮様が別の奴の嫁になるところとか嫌なんだ。でも、仕方ないじゃないか。俺は新しく殿になった劉備様に仕えて、日も浅い手柄すらない。そんな俺に殿が大事な養女である劉琮様をくださるわけがない。頼むだけ無駄だとそう思ったんです。もう少しだけ待ってて貰えませんか?俺が最高の武功を上げたとき、殿から貰える報奨で俺は土地や城じゃなくて劉琮様が良い。そう言いますから!これは俺も劉琮様を好いている決意表明ですから!」
 文聘が言うだけ言って、答えを聞かずに離れていく足音だけが聞こえる。
 劉琮「仲業の馬鹿!あんな大声で言ったらきっと蒯越や蒯良やみんなも聞いちゃってるよ。でも、凄く嬉しい。待っててだなんて、もう10年以上も待ってるのにまだ私のことを待たせるのかな。ねっパンちゃん」
 劉琮はパンダが笹の葉を加えているぬいぐるみに話しかけていた。
 劉琮「まだお母様が優しかった時に、パンダが好きな私のために手に針を刺しながら編んでくれた可愛いぬいぐるみ。いつも私のそばに居てくれる私の大事な大事な友達。パンちゃんにも魂が宿ったら良いのになぁ。私はいつまでも待つよ。例え養父様が政略結婚を言い渡してきたとしても。だから政略結婚を覆すような大きい男になってよね仲業。さっ、私も太守としてやるべきことをやらないとね。皆んなにみっともない姿見せちゃったし」
 劉琮が外に出て、甲板に出るとそこには、大量の矢を持ち帰った船頭さんとそれらを盾で守り抜いた荊州水軍の兵の姿があった。
 船頭「劉琮ちゃん、ゴホン。劉琮様のためにホラ見てくれよ大量に矢を集めてやったぜ。アイツらポンポンポンポン矢を射ってくれて助かったぜ」
 荊州水軍兵「見てください劉琮ちゃん。ゴホン劉琮様、必死に船頭さんたちを守りましたぞ。褒美に手で良いですから口付けを」
 劉琮「!?私の唇は安くないんだから!ゴホン。何を言っているんですか?僕は男ですよ。御苦労様でした」
 荊州水軍兵「女の子の一人称が僕。なんて興奮する響きなんだ」
 蒯越「えぇい、浮かれるな馬鹿ども。それに残念であったな。先程、文聘が一足先に劉琮様に告白しておったわ。返事はよく聞こえんかったが文聘の様子からして、良かったのだろう」
 荊州水軍兵「俺たちのアイドルを文聘に!ずるいぞ。ずっと独り占めにしておいて、まだ独り占めにする気か!」
 船頭「劉琮ちゃんはみんなのもんだ!」
 蒯良「兄上、この熱狂ぶりは少し異常では?」
 蒯越「ふむぅ。いつも気にかけてくれる劉琮様が女と知り、信奉に近い沼に溺れているのかもしれんな。どうしたものか?」
 劉琮「船頭さんたちもみんなも大好きだけど私の幸せは祈ってくれないのね。私、精神的打撃で寝込んじゃいそう」
 船頭「し、し、幸せを祈ってますって。おい、文聘。お前、劉琮ちゃんを泣かせたらゆるさねぇからな」
 荊州水軍兵「もっもっもっ勿論、幸せを祈っております。おい、文聘。お前、何がなんでも第一功を挙げろよ。そうじゃなきゃ。やるさねぇからな」
 蒯越「心配は、稀有であったな。劉琮様は、兵の扱い方も民の扱い方も超一流であったわ」
 蒯良「あぁいうのを魔性の女というのでは?文聘が心配になるのですが」
 文聘の決意を聞いて、心が弾んだ劉琮は、指揮に戻り、孫権の率いる呉水軍へと攻撃を開始するのだった。
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