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4章 三国鼎立

人に非る力を正しく使えなかった男の末路

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 凌操と鄧当に助け出された孫策。鮮血を流して伏した于吉。しかし、操っている于吉が倒れても黄祖たちは、依然として操られたままだった。
 甘寧「おいおい、于吉が血を流して倒れたってのに黄祖たちは操られたまんまだぞ」
 左慈「どう言うことじゃ?確かに鮮血を流して倒れたはずじゃ。アヤツは、仙人ではない。流石にあの血では生きていられまいはず」
 丘の上の様子がなんだかおかしい。
 于吉「クックックッ。アヒャヒャヒャヒャ。やれやれ、痛いではないか。じゃが、成功のようじゃ。まさか、こちらの方が先に覚醒するとはな」
 ???「ここは、何処だ?俺は?誰?何も思い出せない。だが、やるべきことはわかっている。アヤツのせいで再び分かたれたこの国を統一する」
 孫策「まさか、覇王の好敵手と呼ばれた。前漢、初代皇帝高祖。またの名を劉邦だと言うのか!」
 劉邦「うっ。高祖?劉邦?お前は何を言っている。うぐっ。貴様の中に見えるぞ。微かに宿るアヤツが。戦乱を産む覇王が。貴様はこの手で誅殺してくれる」
 于吉「うーむ。強すぎる血ゆえ。制御がままならぬか。いや、切られた傷を呪術で治すために力を使ったせいか。やれやれ困ったわい」
 左慈「まさか、あの禁断の降霊の秘術を使ったと言うのか于吉」
 于吉「降霊ではない召喚じゃ。劉岱・劉繇に色んな血を混ぜて、どうなるかと思っていたがいやいや完璧ではないか。流石、血の召喚魔術。血の全てを使ってやっとであったがな」
 劉邦「貴様は、さっきから煩い奴だ。少し黙っていろ」
 于吉「ガハッ。何故、ワシが」
 劉邦により貫かれ再び鮮血を流して倒れる于吉。
 劉邦「次は貴様だ。項羽」
 目の前の男に項羽を重ねた劉邦の次なる標的は孫策だった。
 孫策「俺を古の英雄項羽と勘違いしてくれるのは光栄だが。生憎、俺は覇王項羽ではない。俺の名は孫伯符。古の英雄と刃を合わせられる機会をみすみす逃すつもりはない」
 劉邦「ほぅ。我に挑むか」
 孫策の攻撃で簡単に吹っ飛ばされる劉邦。
 劉邦「見事」
 孫策「はっ!?嘘だよな。こんなに弱いわけねぇよなぁ。しかも俺は疲労困憊だってのに。嘘だろ嘘だと言ってくれよ」
 周瑜「高祖帝は、人徳と優秀な部下たちによって統一した御方だ。統率力と魅力は随一だろうが武力も高かったとは聞いたことがない。そもそも覇王項羽には、幾度も負けている」
 劉邦「フハハハハ。やはり強いな。何故、無意味な虐殺をする。恐怖で人は付いてはこない。人徳こそが人を導く光なのだ。そうだ、俺は劉邦。そうかここは俺の時代よりもずっと先の時代なのだな。すまなかった。アヤツの影を身体に宿す青年よ。願わくば、アヤツと同じ道を進まぬことを願うぞ」
 孫策「おい待てよ。言うだけ言って消えちまいやがってよ」
 劉邦の身体から血が流れ、身体が全て血に変わり、消えてゆく。
 于吉「嘘じゃ嘘じゃ嘘じゃ。高祖劉邦がこんなに弱いはずが。やはり、血がダメだったんじゃ。もっと優秀な血であれば」
 左慈が白頭に乗り、丘の上に降り立つ。
 左慈「万策、尽きたようじゃな于吉よ」
 于吉「クハハハハハハ。何を言う。ワシは不死身じゃ。今一度、破れようとも必ず地獄の底から舞い戻ってくれる」
 左慈「まだ、そのようなことができると思っているとは」
 于吉「アヒャヒャヒャヒャ。貴様に何ができる」
 そこに于吉のことをよく知っているあの男が来た。
 ???「確かに死んだと思っていたかつての兄弟子の気配がしたので来てみれば、生きていたとはのぅ」
 于吉「貴様は張角!貴様が俺の掌の上で踊って、殺されていれば、もっと早くこの術が完成していたんじゃ」
 張角「そんな死者を冒涜するような術。あってはならんもんじゃ。ましてやそれが我が師匠が太平清領書から編み出した太平要術の応用なら尚更じゃ。今こそ、我が師匠南華仙人様の仇をとらせてもらうぞ」
 于吉「アイツの仙術のお陰で、不死身の肉体を手に入れたワシを仙人になりきれぬお前如きがふざけるな」
 張角「于吉よ。どうやらお前さんは師匠の悪しきことに使うと身を滅ぼすと言われたことを理解しておらんかったようじゃな。ワシがトドメを刺すまでもなかったようじゃ。己の身体を見てみい」
 于吉が視線を身体に移すとそこら中から鮮血が吹き出し、身体の再生が間に合っていなかった。
 于吉「なんじゃコレは?身体が崩れてイク。ナゼ、ナゼ、オレガ、ニンゲンをシンカさせるソンザイのオレがァァァァァァァァ」
 左慈「哀れなやつよ。小生が介錯してやろうと思うたが貴様は混沌を撒き散らした。その罪を身体で償うが良い」
 于吉「サージー・チョーウカーク・シューユー、キサマラはゼッタイにユルサヌーーーーーーーー」
 于吉は恨みの言葉を吐きながらその身体はまるで全ての細胞が破壊されたかのように、さらに本来あるはずの骨すら残っていなかった。
 周瑜「かつての于吉道士の面影がない。人に非る力は、時としてこうも人を狂わせるのか。呉郡で于吉道士と聞けば、民の病を無料で治し、信奉されていた。その化けの皮がこんなにも醜悪な存在だったとは、俺もすっかり騙されていた。于吉道士が自分からボロを出してくれなければ、俺も騙されたままだっただろう。何はともあれ伯符を助け出すことができて良かった。此度の劉備軍の協力感謝する。約束通り、我らは荊州戦線から撤退する」
 孫策「おい公瑾。俺はそんな話、認めねぇぞ」
 周瑜「伯符、君は何を言っている。そんな傷だらけで動いて、義姉上をもっと心配させるつもりか?暫くは自宅療養という名の家族に奉仕するのだ」
 孫策「ゲッ大喬のやつ。そんなに怒ってんのか?」
 周瑜「怒り半分。心配半分ってところでしょうか」
 孫策「それはまずい。劉備軍、助けられた借りは、荊州戦線から身を引くことでチャラだからな」
 左慈「うむ。小生がその言葉の承認となろう」
 周瑜「では、我々はこれにて失礼する」
 孫策軍が呉郡へと撤退し、于吉が死に黄祖たちにかけられていた于吉の術が解けるのだった。
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