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3章 群雄割拠

張済軍vs曹操軍

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 小沛城にて、劉備と謁見した張繍と胡車児の口から宛城での曹操軍との戦について語られる。
 劉備「張繍に胡車児に鄒豊麗よ。劉備軍は、お前たちを歓迎する」
 張繍「有難き。必ずや武働きにてお返しいたします」
 胡車児「今度こそ、あの悪来とかいう男を討ち取ってやらぁ」
 鄒豊麗「庇護していただき感謝致します」
 劉備「して、曹操軍が宛城に攻め寄せてきたとのことだが、わかる範囲で詳しく教えてくれないか?」
 張繍「はっ」
 張繍の話によるといきなり曹操軍が攻め寄せてきたとのことだ。
 張済「曹操よ。何故、この地を狙う。私は、敵対する気はない。速やかに帰られよ」
 曹操「敵対する気が無いのなら人質を出してもらおうか。お前の奥方である鄒豊麗をな」
 張済「貴様。我が妻狙いで、この城を狙うというのか」
 曹操「美人だと聞いたのでな。お前のように野心のない男には勿体なかろう」
 張済「クソが。相手をしてやる。かかってこい」
 張済は、曹操軍と戦う決意を固めた。
 曹操「郭嘉、これで良かったか?」
 郭嘉「えぇ。お前の妻を貰うと煽った事により、張済は、戦へと舵を切りました。後は、徐々に包囲を狭めて、張済を討ち宛城を手に入れるだけです」
 宛城城内にて、張繍を呼び出した張済。
 張済「繍よ。お前の武を見込んで、頼みがある。鄒を連れて、この城から逃げよ。劉表は、損得で動く男。恐らく負け戦で兵を減らすかもしれない戦いになぞ援軍を送らぬ」
 張繍「いえ、俺も叔父上と共に、曹操と戦います」
 張済「ならん。曹操の狙いは、この城と鄒なのだ。どちらもやるのは、癪だからな」
 張繍「それではまるで死ぬと申しているではありませんか」
 張済「あぁ、曹操と戦い勝利するのは無理であろう」
 張繍「叔父上、わかりました。ですが張先チョウセン雷叙ライジョを置いていきます。いかようにもお使いください」
 張済「すまぬ。繍よ」
 張繍「いえ、叔父上。叔母上のことは必ず俺が御守りして、南へと逃げます」
 張済「頼んだ」
 張繍は、胡車児と鄒豊麗を連れ、裏門よりこっそりと城を出て南を目指す事にする。だが、張繍と鄒豊麗が裏門を出たところで胡車児がバタリと閉じた。
 張繍「胡車児、お前何を考えているのだ」
 胡車児「殿に拾ってもらった命、殿のため、果てるも本望。この裏門を必ず死守しますゆえ。殿は、鄒豊麗様を連れて、南へとお逃げください。最後の御奉公となりますことをお許し下され」
 張繍「胡車児、胡車児ーーーーー」
 鄒豊麗「張繍、あまり騒いでは曹操軍に見つかってしまいます。胡車児の想いを無駄にせぬためにも、南へと参りましょう」
 張繍「叔母上、はぃ」
 外では、張済軍と曹操軍による戦いが始まっていた。
 許褚「オイラの怪力で踏み潰してやるんだなぁ」
 典韋「虎痴の野郎、張り切ってやがんな。俺も負けてられねぇな」
 張済軍兵士「えぇい、これ以上曹操軍を進ませるな。ギャァ」
 城内では、賈詡が策があると張済の元に来ていた。
 張済「賈詡か。どうした?」
 賈詡「今からでも遅くありません。曹操に降伏して、鄒豊麗様と引き合わせて、油断させるのです。そこをサクッと刺すのです」
 張済「そのようなことできん。鄒を曹操に渡すなどありえん」
 賈詡「何故です?利用できる者はなんでも利用して、最終的に勝利をもぎ取れば良いのです。そのために鄒豊麗様に少し曹操の相手をしてもらうだけ。それで、曹操を油断させられるのです」
 張済「曹操は油断させられても、側に控えている息子の曹昂や甥の曹安民ソウアンミンは、そうはいかぬであろう。鄒を殺すかもしれん。妻を危ない目に合わせることなどできんのだ。わかってくれ賈詡よ」
 賈詡「不躾なことを申しました。お忘れください(張済では、私の知謀を使いこなすことはできなかったようだ。ならこれまで。曹操に降伏するとしよう。ここで死ぬつもりはないゆえな)」
 スタスタと去っていく賈詡。城門前では、張先と雷叙が曹操軍を食い止めていた。
 張先「ここからは先には行かせない」
 許褚「鬱陶しいんだなぁ。オイラが踏み潰してやるだ」
 許褚の怪力から繰り出される大槌の一撃でペチャンコになる張先。
 張先「ギャァ」
 許褚「なんだかしらねぇけど敵将、潰しちまっただ」
 雷叙「己、張先を」
 曹昂「おっとどこ行こうとしてるんだい。君の相手は、僕だよ」
 雷叙「爽やかにいってんじゃねぇぞ」
 曹昂「すまないねぇ。これも父上に刃向かう君たちがいけないんだよ」
 雷叙「いちいち言い方が鼻につくやろうだ。一思いに仕留めてやるよ」
 曹昂の剣捌きにより、何度も切りつけられる雷叙。
 雷叙「ガハッ。こんな爽やかな野郎に俺様が破れるだと」
 曹昂「敵将、曹子脩が討ち取ったよ」
 張先と雷叙を失い。曹操軍が宛城城内へと流れ込む。
 張済軍兵士「殿を守るのだ。これ以上進ませるな。ガハッ」
 曹操「いかに精強な張済軍でも、この数相手では、何もできなかったようだな」
 張済「ここまで来たか。この張済が相手となろう」
 お互い、戦場で腕を磨いた者同士である。数合打ち合うがやがて張済の剣が弾き飛ばされる。張済の首元に剣を当てがい、最後通告をする。
 曹操「どうだ張済よ。奥方を差し出すのであれば不問としてやる」
 張済「断る」
 曹操「そうか。ならお前を殺して奪うまでよな」
 曹操は、首元に当てていた剣で張済の首を落とす。
 張済「(繍よ。後は任せたぞ)」
 曹操「敵総大将張済。曹孟徳が討ち取った」
 曹安民「叔父上、どこにも張繍と張済の奥方と思われる方が見つかりません」
 曹昂「父上、こっちに裏門へと続く道がその先を偉丈夫が塞いでおります」
 典韋「暴れたらなかったところだ。俺が相手してやるよ」
 胡車児「大殿が討たれたか。ここから先へは何人たりとも通さん」
 胡車児の気迫に典韋が何度も押される。
 典韋「なんてやろうだ」
 許褚「典韋、助太刀するんだなぁ」
 典韋と許褚ヲ相手にしても胡車児は打ち負けていない。
 胡車児「何人たりともここは決して通さぬ」
 典韋「ハァハァ。コイツ化け物かよ」
 許褚「ハァハァ。良い加減潰れるんだなぁ」
 そんな胡車児の脇腹を剣で貫く。
 胡車児「貴様、賈詡。何故?」
 賈詡「胡車児殿、横っ腹がガラ空きでしたぞ」
 胡車児「グフッ。貴様、裏切ったのか?」
 賈詡「裏切ったなど。とんでもない。より、我が知謀を使いこなせる方に付いたまでのこと。早く張繍と鄒豊麗の居場所を吐いた方が身のためですよ胡車児」
 胡車児「誰が言うか」
 賈詡「そうですか。では、これでトドメです」
 傷を負って、動けない胡車児に容赦なく刀が振り下ろされるのであった。
 胡車児「ガハッ。張繍様、申し訳ありませぬ」
 気を失った胡車児を死んだものとして、海へと投げ捨てる曹操軍。
 曹操「賈詡よ。これからの働きに期待する」
 賈詡「お任せください殿」
 曹操「逃げた張繍と張済の奥方を捜索せよ」
 こうして曹操は宛城を手に入れる。しかし、逃げた張繍と鄒豊麗を捕えることはできなかったのである。
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