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まずは落ち着いて話を聞くところから
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桜庵の女将である桜舞にくってかかる2人を引き離す。
「ちょっとアンタ何すんのよ」
「そうよそうよ。部外者は引っ込んでなさいよ」
山里愛子と竹下育美の怒りはおさまらない。私はそんな2人に警察手帳を提示した。
「刑事ならとっとと捕まえなさいよ」
「そうよ。コイツが散梨花を殺した犯人よ」
尚も怒りのおさまらない2人に私は話を聞くためにも落ち着かせる事にした。
「待ってください。先ずは落ち着いて、2人の見た事について詳しくお聞かせ願えませんか?話も聞かずに逮捕することなどできません」
2人は、目の前で起こったことを語り始めた。
「あれは、昨日の深夜のことよ。いつものように道筋様との逢瀬を終えた私たちはトイレへと向かった。散梨花はその時に従業員室に忘れたっていう忘れ物を取りに行ったの。でもいつまでも帰ってこないから様子を見に行ったら、散梨花を何度も刺し不敵に笑うビスクドールを見たのよ。そのビスクドールは紛れもなくこの女が大事にして飾っている入り口の人形だったのよ」
「メリーちゃんはそんなことしないわ。それに動くなんて突拍子もない事で私を犯人呼ばわりしないでちょうだい」
「まだ、とぼけるのね。道筋様が私たちに本気になって、嫉妬してたんでしょう」
「そうよ。この卵無し女」
「私が卵無しなのはその通りよ。それが何。私はこの人がさっき話すまで愛人の存在すら知らなかったのよ。それに、私のことは何を言っても構わない。でも、私の大事なメリーちゃんが木下さんを殺したなんて、それだけは許せないわ」
「知らなかったわけないじゃない」
「そうよそうよ」
尚も女将である桜舞へと詰め寄る2人を桜道筋が止める。
「妻が知らなかったのは、事実だ。それにお前たちとは子供を為すための契約。本気になったことなど一度もない」
「そんな、酷い。あの言葉も嘘だったのね」
「この人でなしのクズ」
この人は止めに入ったかと思ったら悪化させてるし、これじゃあ話が進まない。私は止めに入る。
「そこまでにしてください。今はそんな内輪の話で無駄な時間を過ごしている暇はありません。彼女たちが見たことを聞き、犯人を捕まえなければなりません。2人とも、そのぐらいにして、続きを話してください」
「えぇ、必ず私たちの言葉でこの女を逮捕してもらうんだから。えーっと、そのビスクドールは散梨花を刺しながら、不敵な笑みを浮かべて悍ましい声でこう言ったの『ボクヲコロシタサンニンノオンナユルサナイ。マズハヒトリ。ハリツケシサツ。ツギハハリツケボクサツ。サイゴハハリツケハリネズミ。タノシイナ。ママノシアワセノタメニパパニチカヅクオンナハミナゴロシ』ってね。あのビスクドールを操って、この女が私たちに筋違いの復讐をしているのよ」
「そうよ。そうよ?とっとと白状して捕まりなさいよ。この人殺し」
「そんなメリーちゃんにあの子が宿っているというの」
「馬鹿馬鹿しい、舞もそんな話を鵜呑みにするな。どうせコイツらが俺との逢瀬の回数を増やすために殺したんだろう。そしてその罪を舞に被せようとしているだけだ」
「ふざけんじゃないわよ。アンタのどんな屈辱なプレイにも喜んで、従ったのは、子供を産んだら女将にしてくれるって貴方が言ったからよ」
「そうよそうよ」
「フン。そう言うと、お前たちも子供を成す為に頑張るだろう。その後お前たちから子供だけを奪えば良い。そうだな、生活力不足とかで何とでもできる」
「このドクズ」
「何とでもいえ。桜庵のために子供だけが欲しかった。俺の血筋を汲む子がな。お前たちに愛情などあるわけなかろう。それも全てアクセントだよ。行為に及ぶためのな」
「酷い」
「全くだな。さっきから聞いてりゃ。お前は男じゃねぇよ。何人の女性を傷付けたら気が済むんだ。女将さん、亡くなった木下さん、それに山里さんと竹下さんだったっけか。代理出産だの。愛人の子を妻と育てるだの。全てテメェのエゴじゃねぇか」
山波宇宙が怒気を強めた声で桜道筋を突き刺す。
「お客様だから何を言っても許されるとでも思ってんのか?あぁ、俺は何度も言ってるだろう妻のことは愛している。傷付けちゃいねぇんだよ。コイツらのことは道具だ。そう子供を産むためのな。それ以上でも以下でもない存在。俺に取り入ろうとしたコイツらにお似合いだろ。イテェー」
バチーンっと鈍い音が2度響き渡る。桜道筋を張り手打ちしたのは女将さんと楓だった。
「私が傷付いてないですって。そんなことあるわけないでしょう。旦那が知らないうちに3人の愛人を作っていて、それが従業員で、そしてこの桜庵で夜な夜な密会していた。それを聞いて私が傷付いて無いなんてよく言えるわね」
「女将さんが傷付いてないですって。そんなことがよく言えたわね。この人で無し。結局は女将さんのことも子供を産むための道具としてしか思ってなかったのよ。貴方は女将さんとの子供が欲しかったわけじゃない。桜庵を継ぐ子供が欲しかっただけよ。こんなの貴方のことを愛している女将さんがあんまりじゃない」
私もまた話が脱線していたが、あまりにも身勝手な桜道筋のこの結末は当然だと思うのであった。
「ちょっとアンタ何すんのよ」
「そうよそうよ。部外者は引っ込んでなさいよ」
山里愛子と竹下育美の怒りはおさまらない。私はそんな2人に警察手帳を提示した。
「刑事ならとっとと捕まえなさいよ」
「そうよ。コイツが散梨花を殺した犯人よ」
尚も怒りのおさまらない2人に私は話を聞くためにも落ち着かせる事にした。
「待ってください。先ずは落ち着いて、2人の見た事について詳しくお聞かせ願えませんか?話も聞かずに逮捕することなどできません」
2人は、目の前で起こったことを語り始めた。
「あれは、昨日の深夜のことよ。いつものように道筋様との逢瀬を終えた私たちはトイレへと向かった。散梨花はその時に従業員室に忘れたっていう忘れ物を取りに行ったの。でもいつまでも帰ってこないから様子を見に行ったら、散梨花を何度も刺し不敵に笑うビスクドールを見たのよ。そのビスクドールは紛れもなくこの女が大事にして飾っている入り口の人形だったのよ」
「メリーちゃんはそんなことしないわ。それに動くなんて突拍子もない事で私を犯人呼ばわりしないでちょうだい」
「まだ、とぼけるのね。道筋様が私たちに本気になって、嫉妬してたんでしょう」
「そうよ。この卵無し女」
「私が卵無しなのはその通りよ。それが何。私はこの人がさっき話すまで愛人の存在すら知らなかったのよ。それに、私のことは何を言っても構わない。でも、私の大事なメリーちゃんが木下さんを殺したなんて、それだけは許せないわ」
「知らなかったわけないじゃない」
「そうよそうよ」
尚も女将である桜舞へと詰め寄る2人を桜道筋が止める。
「妻が知らなかったのは、事実だ。それにお前たちとは子供を為すための契約。本気になったことなど一度もない」
「そんな、酷い。あの言葉も嘘だったのね」
「この人でなしのクズ」
この人は止めに入ったかと思ったら悪化させてるし、これじゃあ話が進まない。私は止めに入る。
「そこまでにしてください。今はそんな内輪の話で無駄な時間を過ごしている暇はありません。彼女たちが見たことを聞き、犯人を捕まえなければなりません。2人とも、そのぐらいにして、続きを話してください」
「えぇ、必ず私たちの言葉でこの女を逮捕してもらうんだから。えーっと、そのビスクドールは散梨花を刺しながら、不敵な笑みを浮かべて悍ましい声でこう言ったの『ボクヲコロシタサンニンノオンナユルサナイ。マズハヒトリ。ハリツケシサツ。ツギハハリツケボクサツ。サイゴハハリツケハリネズミ。タノシイナ。ママノシアワセノタメニパパニチカヅクオンナハミナゴロシ』ってね。あのビスクドールを操って、この女が私たちに筋違いの復讐をしているのよ」
「そうよ。そうよ?とっとと白状して捕まりなさいよ。この人殺し」
「そんなメリーちゃんにあの子が宿っているというの」
「馬鹿馬鹿しい、舞もそんな話を鵜呑みにするな。どうせコイツらが俺との逢瀬の回数を増やすために殺したんだろう。そしてその罪を舞に被せようとしているだけだ」
「ふざけんじゃないわよ。アンタのどんな屈辱なプレイにも喜んで、従ったのは、子供を産んだら女将にしてくれるって貴方が言ったからよ」
「そうよそうよ」
「フン。そう言うと、お前たちも子供を成す為に頑張るだろう。その後お前たちから子供だけを奪えば良い。そうだな、生活力不足とかで何とでもできる」
「このドクズ」
「何とでもいえ。桜庵のために子供だけが欲しかった。俺の血筋を汲む子がな。お前たちに愛情などあるわけなかろう。それも全てアクセントだよ。行為に及ぶためのな」
「酷い」
「全くだな。さっきから聞いてりゃ。お前は男じゃねぇよ。何人の女性を傷付けたら気が済むんだ。女将さん、亡くなった木下さん、それに山里さんと竹下さんだったっけか。代理出産だの。愛人の子を妻と育てるだの。全てテメェのエゴじゃねぇか」
山波宇宙が怒気を強めた声で桜道筋を突き刺す。
「お客様だから何を言っても許されるとでも思ってんのか?あぁ、俺は何度も言ってるだろう妻のことは愛している。傷付けちゃいねぇんだよ。コイツらのことは道具だ。そう子供を産むためのな。それ以上でも以下でもない存在。俺に取り入ろうとしたコイツらにお似合いだろ。イテェー」
バチーンっと鈍い音が2度響き渡る。桜道筋を張り手打ちしたのは女将さんと楓だった。
「私が傷付いてないですって。そんなことあるわけないでしょう。旦那が知らないうちに3人の愛人を作っていて、それが従業員で、そしてこの桜庵で夜な夜な密会していた。それを聞いて私が傷付いて無いなんてよく言えるわね」
「女将さんが傷付いてないですって。そんなことがよく言えたわね。この人で無し。結局は女将さんのことも子供を産むための道具としてしか思ってなかったのよ。貴方は女将さんとの子供が欲しかったわけじゃない。桜庵を継ぐ子供が欲しかっただけよ。こんなの貴方のことを愛している女将さんがあんまりじゃない」
私もまた話が脱線していたが、あまりにも身勝手な桜道筋のこの結末は当然だと思うのであった。
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