上 下
7 / 16

Heavenでの聞き込み!

しおりを挟む
Heavenに連絡をしたところ、『今は営業外で誰も居ないので夕方ごろに来て欲しい』とのことなので、先ずは腹ごしらえを済ませることにする。
「今日は何にしようかなぁ」
ブラブラと飯屋を探している美和は、一軒の定食屋で足を止める。
「美味しそうな匂いがする。今日はここにしましょう」
ガラガラガラと戸を開けて中に入る。
「いらっしゃいませ」
中から店員の元気な声が響く。美和は、カウンター席に座る。店員が最初の1杯目の水を入れてメニュー表を持ってやってくる。
「お水とおしぼりはセルフとなっております。あちらからどうぞ。メニューはこちらです。メニューが決まりましたらこちらの呼び鈴を押してお呼びください」
「はい」
美和は、メニュー表に目を通し、一つの料理に目が惹かれた。呼び鈴を押して店員さんを呼ぶ。
「メニューは決まりましたか?」
「はい。鯖の塩焼き定食をお願いします」
「かしこまりました。今キャンペーンをしていまして、こちらのクジを引いていただき当たりが出たら店長オススメの一品をサービスさせて頂きます」
「へぇ~そんなキャンペーンやってるんですね。でも入るかな」
「もちろんサービスの一品は、テイクアウトOKですよ」
「そうなんですね。じゃあこれで」
美和は手をクジの入った箱に突っ込み引いた。
「おめでとうございます。当たりです」
「ヤッター」
「持ち帰りで、よろしいでしょうか?」
「はい。お願いします」
「かしこまりました」
それから数分後、店員さんが料理を運んできた。
「鯖の塩焼き定食です。店長オススメの一品は、お帰りの際にお渡しさせていただきますね」
「はい、よろしくお願いします」
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
店員さんはスタスタと戻って行った。
美和は「いただきます」と手を合わせると食べ始めた。
この鯖、肉厚でジューシー。身もホクホクしててすごく美味しい。味噌汁の程よい塩加減も疲れた身体に染み渡る。ゆっくりと味わいながら食べ30分ほどで完食した。
「ごちそうさまでした」
美和はそう言うと会計に向かう。
「鯖の塩焼き定食750円になります」
「1000円で」
「250円のお釣りとなります。そしてこちらが店長オススメの一品となっております。またのお越しをお待ちしております」
「すごく美味しかったです。ご馳走様でした」
美和は店員さんにそう告げると店を後にした。

少し早いがHeavenの近くに移動しておくことにしよう。しばらく待つと夕方になったので、Heavenに向かう。
店内は、キャバクラと聞いていたがどちらかというとクラブ寄りで、バックヤードで、ママのアケミさんが対応してくれた。
「やっと警察が動いてくれたのね」
アケミさんが開口一番に言い戸惑う美和。
「あのどういうことでしょうか?」
「鶴田というクズがテルミちゃんを殺したことについてじゃないの?」
「鶴田がテルミを殺した?」
「えぇ、テルミちゃんと胎に宿っていた赤子殺しね」
「詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「はぁ~またこれ。警察って、どうして管轄が違うとわかりません的なの多いのかしら。全て共有すれば良いと思わない」
「申し訳ございません」
「まぁ良いわ。テルミちゃんはね。胎の子供の認知を鶴田にお願いしに行った帰り、階段から落ちて、今も意識が戻らずこの5年、久根総合病院で入院してるのよ。かける君が不憫でね。私がテルミちゃんの医療費を肩代わりしているの」
「翔君?」
「えぇ、両親を事故で亡くしたテルミちゃんのたった1人の弟でね。テルミちゃんが夜の仕事をしていたのも翔君の学費のためなの。そんな彼女に金払いの良い客だったのが鶴田啓一つるたけいいちという会社役員で、社会勉強のために息子さんの同伴を頼まれて、まぁ親がいるなら良いかと許可をしたのが間違いだったの」
「テルミさんが強姦されてしまったんですね?」
アケミさんは目を丸くする。
「誰からお聞きしたんですか?」
「鶴田という高校生から証言を得ました」
「やっぱり鶴田がテルミちゃんを許せない。あんな良い子をよくも必ず殺してやる」
「刑事の前で殺すと言ってはいけませんよ。今回は何も聞かなかったことにしますが」
「取り乱してしまい、すみません」
「いえ、性格には鶴田は、走田一がやったことの尻拭いをしたということらしいです」
「では、走田一と呼ばれる男がテルミちゃんを?」
「えぇ、テルミさんの胎の中にいた赤子に関しては、証言を聞く限り正しいかと」
「きっとそれだけじゃないわ。用心深いテルミちゃんが階段から足を踏み外すなんてありえない。きっと突き落としたのよ」
「その走田も亡くなりましたので、真実についてはわからなくなりましたが明らかにしたくて、テルミさんの周辺について調べているんです。翔君について教えてもらえますか?」
「走田が亡くなった?いい気味ね。バチが当たったのよ。成程、走田の事件を調べてて、テルミちゃんの周辺に犯人がいると思っている。その犯人が翔君だとそう言いたいんですね。何も話すことはありません。おかえりください」
「待ってください」
もう話すことはないとアケミさんは取り合ってくれない。そうして、追い出される美和。アケミさんは、勘の鋭い人だったらしく美和の言葉の端々から読み取ってしまったらしい。これ以上、アケミさんから聞くことは不可能に近い。途方に暮れる美和であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

怪奇事件捜査File2 ドッペルゲンガーと謎の電話編

揚惇命
ミステリー
首なしライダー事件を解決して3ヶ月経った夏の暑さの厳しい中、出雲美和の新たな事件が幕を開ける。今度の怪異はドッペルゲンガー、それにえっメリーさん。浮かび上がる死のメッセージの数々、突然出られなくなる温泉宿。外との連絡も途絶え。首なしライダー事件で世話になった鈴宮楓と山南宇宙、閉鎖された温泉宿に取り残された人達と共にこの温泉宿から無事に脱出することはできるのか。怪異ドッペルゲンガーの正体とは。怪異メリーさんとの関係は。謎が謎を呼ぶ。迫り来る死の恐怖の数々に出雲美和は立ち向かうことができるのか。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

機織姫

ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

警狼ゲーム

如月いさみ
ミステリー
東大路将はIT業界に憧れながらも警察官の道へ入ることになり、警察学校へいくことになった。しかし、現在の警察はある組織からの人間に密かに浸食されており、その歯止めとして警察学校でその組織からの人間を更迭するために人狼ゲームを通してその人物を炙り出す計画が持ち上がっており、その実行に巻き込まれる。 警察と組織からの狼とが繰り広げる人狼ゲーム。それに翻弄されながら東大路将は狼を見抜くが……。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

後宮生活困窮中

真魚
ミステリー
一、二年前に「祥雪華」名義でこちらのサイトに投降したものの、完結後に削除した『後宮生活絶賛困窮中 ―めざせ媽祖大祭』のリライト版です。ちなみに前回はジャンル「キャラ文芸」で投稿していました。 このリライト版は、「真魚」名義で「小説家になろう」にもすでに投稿してあります。 以下あらすじ 19世紀江南~ベトナムあたりをイメージした架空の王国「双樹下国」の後宮に、あるとき突然金髪の「法狼機人」の正后ジュヌヴィエーヴが嫁いできます。 一夫一妻制の文化圏からきたジュヌヴィエーヴは一夫多妻制の後宮になじめず、結局、後宮を出て新宮殿に映ってしまいます。 結果、困窮した旧後宮は、年末の祭の費用の捻出のため、経理を担う高位女官である主計判官の趙雪衣と、護衛の女性武官、武芸妓官の蕎月牙を、海辺の交易都市、海都へと派遣します。しかし、その最中に、新宮殿で正后ジュヌヴィエーヴが毒殺されかけ、月牙と雪衣に、身に覚えのない冤罪が着せられてしまいます。 逃亡女官コンビが冤罪を晴らすべく身を隠して奔走します。

処理中です...