だから、私は愛した。

惰眠

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第七章

カエル

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 今日は平日。

 私は学校を休み、彼の家の前に着いた。

 彼の両親は共働きで、この時間にはいないことはわかっている。

 インターホンを鳴らす。

 彼が、出てくれた。

 インターホンには、カメラが付いていないので、誰かを確認し辛くなっている。

「お届け物です。」

 私は、一言告げる。

 奥から、彼の足音が近づく。
 愛する彼の足音だ。

 鍵が開く。

 ガシャン。

 チェーンを付けたままの扉が開かれた。

 私は、隙間からチェーンカッターを入れ込み、切断する。

 バキンッ!

 チェーンが切断され、チェーンがそれぞれ、壁やドアにぶつかる音がする。

 彼に緊張が走る。

 私は、片足をドアの隙間に挟む。
 そこから先は、ドアは閉まらない。

 彼と私の目が合う。
 再開の素晴らしい瞬間だった。

 彼は、何を思ったかどこかに走っていく。

 私は、ゆっくりと扉を開き、彼の家へお邪魔する。

「お邪魔します。」

 私は丁寧に、靴を脱ぎ揃えて、玄関に置く。

「久しぶり、元気にしてた?寂しかったよね。私が来たから安心だよ?私、あなたの顔が見たいの。見せてくれる?」

 私は、ゆっくりと懐かしそうに彼の自宅を歩く。

 彼の家は物静かで、私の足音ぐらいしか音がしない。

 トイレの扉を叩く。

「お腹痛くて入ってる?大丈夫?」

 扉を開けるが、誰もいない。

「残念。」

 私の思いの詰まったリュックが、ガシャガシャと音を立てながら進む。

 リビングは暗く、彼もここにはいなかったのだろう。

 きっと彼の部屋にいるはずだ。

 私は、リビングの机にリュックをどさっと置き、一本の果物ナイフを取り出した。

 リュックを背負いなおし、トントンと軽い足取りで、彼の部屋へと続く扉を目指す。

「夏樹君。久しぶりだね。いつも君のことを考えて辛かったんだ。だから会いに来たよ。」

 私は、彼に語り掛けながら近づいていく。

 きっと、彼も心を開いてくれるはずだ。

 ドアをノックする。

「入るよ?」

 彼に一言告げて、ドアを開く。

「おはよう。夏樹君。お届け物は私でした~。」

 私は満面の笑みで、彼に話しかける。

 彼は寒いのか震えている。
 冬になりかけの今の時期は寒いのだろう。

 私は、やっとのことで会えた彼に恥ずかしくなって、手を後ろで組んでいる。

 感動のあまり、肩の力が緩んでしまった。

 肩からリュックが落ち、中のものが床に散らばる。

 チャックを閉め忘れていたようだ。

 それを見た彼は、小さな悲鳴を上げる。
 とても、かわいい。

「あ、これは違うの。君のことを思うとついつい集めちゃって、見せたくて持ってきたの。」

 私は、彼に近付く。

 リュックの中から飛び出した、ニッパーやハサミ、ロープといった者たちと一緒に、手の中のナイフも落としていた。

 私は、小さくかわいく縮こまる彼の元に行き、勢い良く抱きしめる。

 なんて可愛いのだろう。

 暴れる姿が愛らしくて仕方がない。

 この匂いも私は何日も嗅げなかったことを思うと、今は救われる気持ちになる。

 私は、彼に一言告げる。

「寂しかったんだから。」
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