君を知るということ

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文化祭

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「おまたせしました。ご注文の品とお飲物になります。」

「サンキュー」

「…なんで来てるんですか、先輩。」

文化祭1日目。
我がクラスの『男女逆転喫茶』はそれなりに好評で、店も順調に回っている。
メニューはピザトーストやホットドックといった軽食に、クレープやワッフルも揃えている。
ガスコンロが使用禁止の都合上、冷凍物をトースターや電子レンジで温めるだけの簡単な調理で、学祭らしく提供は紙皿。
一応飲み物もあるが、こちらは市販のペットボトルを透明なコップに移し替えただけだ。

「後輩の様子を見るのは当然だろ。せっかくだし、凪の写真も展示に追加するか?」

「…本気でやめてください。」

勇利先輩は笑いながら、生クリームを乗せたクレープを頬張る。
シフトが終わるまで後十五分。
否応なしに慣れてしまったメイド服の皺を叩いた。

(…やっと終わった)

「お疲れ様。」

「売れ行きも順調?」と聞いてきた湊は実行委員の仕事である見回りから帰ってきたところらしく、生徒会の腕章を着けている。
同じく制服に着替えた翔也とも合流し、非日常感に舞い上がるように装飾が施された廊下を進む。

「いいのか?」

二人で回りたいのではないかと問う。

「明日もあるから。それに、翔也なら凪と一緒の方が楽しいって言うだろうし。」

湊の指差す方向には、早速屋台で購入した食べ物を握り、こちらへと招く翔也が。
想像通りのはしゃぎ様に「…どんだけ食う気だよ」と悪態をつく。
アメリカンドックやらポップコーンで腹を満たし、どこか遊べる場所はあるかと目を向ける。
お化け屋敷に、縁日。
王道の店が並ぶ先、少し変わった看板があった。

「これやりたい!」

「サバゲー?」

「水鉄砲を使ったサバイバルゲームです。」

「へー、面白そう。」

「でも奇数じゃチーム組めなくないか?」

「そこは任せろ。」

おもむろにスマホを取り出した翔也が電話をかけるとほどなくして、三人組がやってきた。
くじ引きでチームを分け、作戦会議に入る。

「武器も色々あるんだな。」

昨今の水鉄砲は種類が抱負だ。
一般的な引き金式の物から攻撃に優れた加圧式まで。
その中で俺が翔也に勧めたのは、機動性抜群の軽量タイプ。

「動き回るなら軽い方がいい。水切れ用に予備も持たせとくか。」

「千歳はどうするんだ?」

「俺は援護に徹底する。」

俺と翔也、そしてもう一人のチームメイトになった宮村。
向こう側の集団からやたらと視線を感じるのは、おそらく湊の嫉妬のオーラのせいか。
あいつは妙に運がない。
直接文句を言わないからこそ、後が恐ろしい。

「じゃあ、指揮は千歳に頼むわ。あっちは佐川がやるだろうし。」

スコープ付きのライフルを手に持つ。
このタイプなら以前使用したことがあるし、コツも教えてもらった。

「お手柔らかにね。」

「それはこっちの台詞だ。」

(日頃の仕返しだ)

湊の挑発に嘲け返す。
宴の空気に乗っているのは、俺も同じだった。
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