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Chapter5 色欲の唇
第51話 友
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満たされたいのなら、唇を重ねろ。果てることなきその淫欲は、全てを吸い尽くす。
*
【友】という存在について、黒時も考えたことがあった。
彼の中では大半の人間は壊れかけの仮面を被った人形、いわば仮初の人間なのだが、それでもそれらの関係性について考えていた時期もあったのだ。
他人との関係、それは誰もが一度ならず常に悩み抱えているものだろうけれど、黒時の場合は一時の間だけで、今となっては脳裏をよぎることすらない。
考えても答えが出ないから、だから黒時はやめたのである。
そもそも【友】というこの関係性、はたまた概念は何を定義として唱えられているのか。
長時間共にいれば【友】であるのか、同一のグループに属していれば【友】であるのか、それとも利害関係を無視した関係性が【友】であるのか。
考えれば考えるほどに正解のような答えが出てくるが、しかし所詮それは、ような、の域を越えるものではなく、とどのつまり明確な答えなどないのである。
ならばなぜ、この世界で、はたまた社会で異口同音に【友】という判然としない曖昧な概念を、まるで必要不可欠なものとして唱えることができるのか。
【友】とは【透明人間】である。
曖昧模糊で明快ではない、その存在があるのかどうかすら危うい見えない物体なのである。
黒時は考える。そして、思う。
それでもこの世界は、この【友】という概念を真として、正義として謳い続けるのだ、と。
しかし、それは誰も明確に説明することはできないのだ。理解不能なものに寄り添い、賛美して生きる。
なんて滑稽なのだろう。
笑えてくる。
いや、実際に笑った。黒時は、嘲笑するかのように一人笑った。
見えぬものにしがみつきたいのなら、そうしなければ生きていけないのなら、そうすればいい。
ただ、自分は違う。
こんなお遊戯でもしているような世界の中で生きている人形たちとは違う。
明確で明快でその存在を認識できるものだけを追い求める。確固たる真だけに寄り添い生きる。
だから――いらない。
答えのない【友】というその存在は、必要ない。
黒時はずっと、そう思って生きてきた。
そして今も、そう思っている。これから先もずっとそう思っている。
黒時は思っている。思い続けている。
思い続けたがっている。
*
【友】という存在について、黒時も考えたことがあった。
彼の中では大半の人間は壊れかけの仮面を被った人形、いわば仮初の人間なのだが、それでもそれらの関係性について考えていた時期もあったのだ。
他人との関係、それは誰もが一度ならず常に悩み抱えているものだろうけれど、黒時の場合は一時の間だけで、今となっては脳裏をよぎることすらない。
考えても答えが出ないから、だから黒時はやめたのである。
そもそも【友】というこの関係性、はたまた概念は何を定義として唱えられているのか。
長時間共にいれば【友】であるのか、同一のグループに属していれば【友】であるのか、それとも利害関係を無視した関係性が【友】であるのか。
考えれば考えるほどに正解のような答えが出てくるが、しかし所詮それは、ような、の域を越えるものではなく、とどのつまり明確な答えなどないのである。
ならばなぜ、この世界で、はたまた社会で異口同音に【友】という判然としない曖昧な概念を、まるで必要不可欠なものとして唱えることができるのか。
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黒時は考える。そして、思う。
それでもこの世界は、この【友】という概念を真として、正義として謳い続けるのだ、と。
しかし、それは誰も明確に説明することはできないのだ。理解不能なものに寄り添い、賛美して生きる。
なんて滑稽なのだろう。
笑えてくる。
いや、実際に笑った。黒時は、嘲笑するかのように一人笑った。
見えぬものにしがみつきたいのなら、そうしなければ生きていけないのなら、そうすればいい。
ただ、自分は違う。
こんなお遊戯でもしているような世界の中で生きている人形たちとは違う。
明確で明快でその存在を認識できるものだけを追い求める。確固たる真だけに寄り添い生きる。
だから――いらない。
答えのない【友】というその存在は、必要ない。
黒時はずっと、そう思って生きてきた。
そして今も、そう思っている。これから先もずっとそう思っている。
黒時は思っている。思い続けている。
思い続けたがっている。
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