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Chapter2 暴食の腹
第27話 無慈悲な大口
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「あれ? そういえば黒時先輩、あの子豚ちゃんは?」
そう言われて黒時は首を回し駄紋の姿を探した。
だが、彼の姿はどこにも見当たらない。もしかしたら既に喰われてしまったのだろうか、と頭によぎったと同時に遠方から声が聞こえた。
「持ってきたぞ黒時!」
既にベルゼブブに喰われてしまっていた【Staff Only】と書かれた扉があった先から、どこで仕入れてきたのか、栄作はカートを押しながら現れた。
妬美は息を切らしながら後から現れた。
カートには籠がセットされ中には目視では数え切れない程の包丁が入れてあった。
彩香の光の腕の時と同様、予想外の出来事であったが今回はプラスの予想外だった。栄作と妬美の帰還が、予想を遥かに上回るほどに速かったのである。
黒時としてはあと数回、命の危険にさらされる覚悟をしていたのだが、栄作と妬美の頑張りによってその覚悟は不要なものとなったようだ。
「栄作! 籠ごと上に放り投げろ!」
「は!? たく、またわけの分からんことを……、けど、しゃーねえ。先生、そっち側持って下さい。思いっ切り放り投げますよ!」
「わ、分かった!」
籠をカートから外し、二人の男が籠の両端を持つ。
そして、力一杯に上空に放り投げ、籠の中に詰められた幾本もの包丁は宙にばらまかれた。
『なあに?』
上空の音に反応してベルゼブブが上を向いた。
宙に現れた何かを食べようと口を大きく開く。これは黒時にとってまたも嬉しい誤算だった。
当初の予定では、一点に攻撃を集中させて肉を突き破る予定だったのだが、まさか自ら肉の薄い部分をさらしてくれようとは。
黒時が飛び上がる。
ばらまかれた包丁よりも更に上。
狙いを定め、着地する。着地場所は、包丁であった。
『がぎゅ!?』
黒時は包丁の上に着地し、そしてまた飛び上がり、また別の包丁の上に着地をする。巧みな足技で包丁の切っ先は下に向けられ、それらの動作を宙を舞う包丁が無くなるまで繰り返していく。
上から衝撃を受けた包丁たちはまるで隕石のように凄まじい速さで落下していく。
そう、黒時の狙いは切っ先の尖ったものによる複数の斬撃、包丁の雨だったのだ。
『ぐぎゃぐぎゃぎゃぎゃぎゃゃゃぁぁぁ――――!?』
矢継ぎ早に上空から勢いよく降り落ちてくる包丁が、ベルゼブブの口内へと落ちていく。
ベルゼブブの口からは黒い血が吹き出し、辺りが漆黒に染まっていく。斬撃はやはり効果はあるようだった。
『ぎゅわあああああぁぁぁぁぁ――――!』
ベルゼブブの巨体は悶え、マモンと同じく黒い血を噴出しながら倒れていく。両目を失い、内臓も裂かれたのだ。まだ死んでいないとはいえ、最早勝負はついただろう。
「よっしゃあ! 俺達の勝ちだぁ!」
――だが。
「さっすが、先輩! かっこいい!」
ここでまた予想外の出来事が起こった。
「お疲れ様、灰ヶ原君」
やはりプラスに偏りすぎてしまうと、それをゼロに戻そうとする要因が働いてしまうようで――つまり、今回は黒時の身にマイナスの予想外が降りかかってくることとなった。
「ああ、なんとか――」
ばくっ、とそんな音が聞こえたような気がした。
不気味な巨体が大口を開け、そしてそれをまた閉じたような、何かを喰らった様な、そんな音。
実際には聞こえるわけではないのだけれど、その場にいた全員がそう聞こえたように感じた。感じずにいられなかった。
とりあえずそう感じておかなければ、あまりにも凄惨な現実に向き合わなければならないのだから。
「え?」
といっても、現実と向き合うのが少し遅れるだけで、結局その時は訪れるわけで。
「黒時ぃぃぃ――!」
灰ヶ原黒時は、瀕死状態のベルゼブブにばくっと喰われたのだった。
そう言われて黒時は首を回し駄紋の姿を探した。
だが、彼の姿はどこにも見当たらない。もしかしたら既に喰われてしまったのだろうか、と頭によぎったと同時に遠方から声が聞こえた。
「持ってきたぞ黒時!」
既にベルゼブブに喰われてしまっていた【Staff Only】と書かれた扉があった先から、どこで仕入れてきたのか、栄作はカートを押しながら現れた。
妬美は息を切らしながら後から現れた。
カートには籠がセットされ中には目視では数え切れない程の包丁が入れてあった。
彩香の光の腕の時と同様、予想外の出来事であったが今回はプラスの予想外だった。栄作と妬美の帰還が、予想を遥かに上回るほどに速かったのである。
黒時としてはあと数回、命の危険にさらされる覚悟をしていたのだが、栄作と妬美の頑張りによってその覚悟は不要なものとなったようだ。
「栄作! 籠ごと上に放り投げろ!」
「は!? たく、またわけの分からんことを……、けど、しゃーねえ。先生、そっち側持って下さい。思いっ切り放り投げますよ!」
「わ、分かった!」
籠をカートから外し、二人の男が籠の両端を持つ。
そして、力一杯に上空に放り投げ、籠の中に詰められた幾本もの包丁は宙にばらまかれた。
『なあに?』
上空の音に反応してベルゼブブが上を向いた。
宙に現れた何かを食べようと口を大きく開く。これは黒時にとってまたも嬉しい誤算だった。
当初の予定では、一点に攻撃を集中させて肉を突き破る予定だったのだが、まさか自ら肉の薄い部分をさらしてくれようとは。
黒時が飛び上がる。
ばらまかれた包丁よりも更に上。
狙いを定め、着地する。着地場所は、包丁であった。
『がぎゅ!?』
黒時は包丁の上に着地し、そしてまた飛び上がり、また別の包丁の上に着地をする。巧みな足技で包丁の切っ先は下に向けられ、それらの動作を宙を舞う包丁が無くなるまで繰り返していく。
上から衝撃を受けた包丁たちはまるで隕石のように凄まじい速さで落下していく。
そう、黒時の狙いは切っ先の尖ったものによる複数の斬撃、包丁の雨だったのだ。
『ぐぎゃぐぎゃぎゃぎゃぎゃゃゃぁぁぁ――――!?』
矢継ぎ早に上空から勢いよく降り落ちてくる包丁が、ベルゼブブの口内へと落ちていく。
ベルゼブブの口からは黒い血が吹き出し、辺りが漆黒に染まっていく。斬撃はやはり効果はあるようだった。
『ぎゅわあああああぁぁぁぁぁ――――!』
ベルゼブブの巨体は悶え、マモンと同じく黒い血を噴出しながら倒れていく。両目を失い、内臓も裂かれたのだ。まだ死んでいないとはいえ、最早勝負はついただろう。
「よっしゃあ! 俺達の勝ちだぁ!」
――だが。
「さっすが、先輩! かっこいい!」
ここでまた予想外の出来事が起こった。
「お疲れ様、灰ヶ原君」
やはりプラスに偏りすぎてしまうと、それをゼロに戻そうとする要因が働いてしまうようで――つまり、今回は黒時の身にマイナスの予想外が降りかかってくることとなった。
「ああ、なんとか――」
ばくっ、とそんな音が聞こえたような気がした。
不気味な巨体が大口を開け、そしてそれをまた閉じたような、何かを喰らった様な、そんな音。
実際には聞こえるわけではないのだけれど、その場にいた全員がそう聞こえたように感じた。感じずにいられなかった。
とりあえずそう感じておかなければ、あまりにも凄惨な現実に向き合わなければならないのだから。
「え?」
といっても、現実と向き合うのが少し遅れるだけで、結局その時は訪れるわけで。
「黒時ぃぃぃ――!」
灰ヶ原黒時は、瀕死状態のベルゼブブにばくっと喰われたのだった。
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