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第18話 日渡瑠璃②-1

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 先日、花音ちゃんに連れられて学年主任の先生の所へ向かった私は、正直なところあの時、安堵していた。彼に突然褒められて、胸の中がじんわりと暖かくなってきて、気付けば私は、彼の姿をじっと見つめていたのだ。

 翌日になって振り返ってみれば、なんてことをしていたのだろうと思うけれど、気持ちの高揚が抑えられなかったのかもしれない。
 じっと見つめて、そうしていると不意に彼と目があった。心臓が飛び出るかと思った。どこからかは分からないけれど。
 
 いつもなら彼と目が会った瞬間に逸らしているはずが、自分の意思とは裏腹に心がそれを拒んだ。二人の視線をもっと混じらせたい。そんな不埒な思いが、私の全てを蝕んでいた。

 だから突然、強制連行をされて助かった。花音ちゃんの強引な行動がなければ、私は何をしていたか自分でも分からない。あの時の彼の真意が嘘か真かも知らないまま、痛い目を見る結果になっていたかもしれない。それも、同じ部活の後輩の目の前でだ。救いようがないにもほどがある。

 私は花音ちゃんの横に並んで歩きながら、愚かな自分を罵り反省した。このまま何事もなく平穏に高校生活を過ごしたいのなら、彼とは極力絡むべきではない。この先の一年、彼の姿が目に入る度、泣きそうになるのを堪えるのは辛いものがある。

 職員室に着いた私たちは、目的の先生のもとへ行き事情を話した。花音ちゃんが胸元のボタンを幾つか外しておけばきっといける、などと言っていたので、私が率先して先生と会話をした。先生は逡巡することもなく即答で快諾してくれた。まあ、お菓子は駄目だったけれど。

 後で花音ちゃんからもっと色気をださないからだ、という説教を受けたので、説教をし返しておいた。そういうのは大事な時にするべきだ、と。私の発言の内容は、言ってからまずいと思ったけれど、時は既に遅し、にやにやと笑う花音ちゃんに何度もからかわれる羽目になってしまった。

 私たちと屋上に残っていた二人は再び屋上で合流し、結果を報告してから解散した。ほんの短い時間だったはずだけれど、屋上に戻ると彼と遠藤君が妙に仲良くなっていて、少し微笑ましく思った。花音ちゃんと一緒の帰り道に、花音ちゃんにからかわれ続けて、その微笑ましさも家の屋根から飛び立っていった鳩のように、どこかへ行ってしまった。

 そして翌日。つまりは、今だ。
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