UNLUCKY?

おりのめぐむ

文字の大きさ
上 下
28 / 49

不安な疑惑の準備期間 8 ~賭けの代償~

しおりを挟む
「ちょ~、助かったんだけど」

「ミクリン、マジありがと」

「この借り、忘れないから」

「ってゆーか、マジ友だし?」

 目の前で茶髪で化粧で制服改造姿の4人組が言う。
 全くご縁の無かったはずの田中美樹、中島麻耶、原田紗江、前川梨奈の彼女ら。
 ビューティー・カルテットと名のる、顔をまともに合わせたことの無い派手な連中。
 そんな彼女らと関わることになったのは1週間をさかのぼる。
 例の騒動があった月曜日がきっかけ。
 あの日の放課後、得意気な顔で高山が車に乗り込んだ。

「倉持、賭け、憶えてるよな?」

 もちろん忘れてはいなかった。
 私と高山との根拠の無い噂は全く無かったことに安心した後、脳裏に過ぎったもの。
 賭けた内容を思い出し、途端に青ざめる。
 …高山のことだ、ろくでもないことを言うに違いない。
 ミラー越しに微笑んでる顔を見てため息を一つ。
 高山との噂の件で気が晴れたものの、高山との賭けで再び気が重くなる。
 重い口調で憶えてますと答えた。

「それじゃあ、選択肢を与えよう。どっちがいいか選んで」

 駐車場に車を止めるとそのまま振り向いて高山がニコリと笑って言う。

「一つは倉持からオレに熱いキスしてくれること」

 はぁ? キス? 冗談じゃないっつーの!

「もう一つは倉持がオレの代わりに指導すること」

 指導? 何それ?

「…どっちがいい?」

 首を少しかしげながら私の返答を待つ。

「ちょっと待って! 指導って何なの?」

「ん、ある生徒らに勉強を教えてほしいんだけど」

 勉強を教える? そっちの方がマシじゃんか!

「…だったら指導の方がいいです!!」

「成立だな」

 意外にあっさりと決まり、素早く車を降りる高山。
 キスの強要をするのかと思いきや、私に選ばせるなんて。
 教えるのは関口良子で慣れてるから全然楽。
 だからこそ何か裏があるんじゃないかと勘ぐってしまう。
 指導ってのも引っかかるし。
 エレベーターに乗り込み、ちらちらと高山の顔を窺う私。

「何? やっぱりキスの方が良かった?」

 目が合った瞬間、顔を近づけてくる。

「いいえっ、全く!!」

 顔を背けると高山の笑い声が聞こえてくる。
 くっそ~、からかってやがるな、コイツ。
 家に入ると気を取り直して詳しい内容を聞き出す。
 それがビューティー・カルテットたちのことだった。

「正直、オレも困ってて」

 リビングルームのソファーに腰掛けて高山はため息混じりに呟く。

「アイツら、この間のテストで赤点だったわけ。このままじゃヤバイって思ってさ」

 近々追試が行なわれるからその勉強を教えて欲しいんだってさ。
 つーか、高山のあのテストでひと桁なんて信じられない。
 記号問題で軽く20点は取れただろうに!!

「だからヤバイって思ってるわけ。今のうちに手を打っとかないとアイツら留年しそうだからな」

 どうやら裏はなさそうだと納得し、着替えようとリビングから出ようとした時、腕を掴まれる。

「…ところで、今日の洋楽の解答、聞いてないんだけど?」

 ん、げっ! すっかり忘れてた!! それどころじゃなかったから!
 作成途中で集中できなくて放置。だけど、何とか答えることは出来るはず。

「い、今から答える!!」

「あれ? 締め切りは下校時までだったよな?」 

 悪魔のような微笑で確認する高山。
 その通りで何も言えない。

「ペナルティーだ」

 そう言ってギュッと抱きしめたかと思ったら唇にキス!!!
 固まる私から離れ、日課のシャワータイムでリビングから去っていく。
 ちくしょ~~!! 結局は唇、奪われてるじゃんか!!
 二兎を得た高山に腹を立てながらその日は終わった。
 そして彼女らの指導が始まることになる。
 淡々と教えてたはずなのに何故か次第に親しみを持たれ、ミクリンという変なあだ名まで付けられるまでになった。
 当初は生物だけの指導が出来の悪い他教科までにも身を乗り出す始末になり、どうやら追試をパスしたらしい。
 クリアできなかったら補習が待ってたらしく、有意義な夏休みが送れると感謝された。
 いよいよ来週からは夏休み。私の短期留学が始まる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

JC💋フェラ

山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……

彼女の母は蜜の味

緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…

処理中です...