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おりのめぐむ

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不審な特別指導と講師 5 ~洋楽で罰ゲーム?~

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 ようやく月曜日。
 週末は訳の分からない特別指導とかであっという間に過ぎていった。

 貴重な土日の時間がほとんど高山一色だった気がする。
 寝ても醒めてもそばに居やがったんだよな、コイツ。
 追い出して鍵を隠したはずの寝室にいつの間にか侵入していやがるしっ!
 元々はコイツの家なんだし、何かカラクリがあるんだとようやく気づく。
 結局、3日間、添い寝してた形になるんだよな、くぅ!

「充実した週末だったよな?」

 週初めの今日、学校が始まるということで高山の車で優雅にご出発。
 もちろん、後部座席に座ってだけどね。
 そもそも教員の出勤時間に合わせて登校しなくてもいいのにさ。
 悪いけど、学校までの位置を把握すれば一人でも通えるし。
 方向音痴でもなし、交通費は支給してもらえるから問題ないのに。
 高山曰く、通学時間も貴重な指導時間なんだとか。
 ではお手並み拝見といくかってことで乗り込んでるわけ。
 それなのに充実した週末を嬉しそうに語ってやがる。

「で、指導の方は?」

「…相変わらず、勉強熱心だよな。倉持は」

 ちょっと呆れがちに鏡越しから私を見る高山。
 それ以外、何の価値もないでしょうがあんたはっ!
 エロ教師だけど、そうじゃない部分もあるって少しは認めてやってるんだから。

「じゃ、リクエストにお答えしますか。では耳を澄ませて」

 言ってカーステレオのスイッチをポン!
 突然スピーカーから響き渡る音楽。
 うう~、これまた英語。つまり洋楽だ。

「学校に到着するまで何度もリピートするからしっかり聞き取れよ。下校までに歌詞と和訳を書いておくように。もし、出来なかったら…」

「は?」

「楽しい楽しい罰ゲームが待ってます♪」

 ば、罰ゲームだとぉお?!

「ちょ、何言ってるのよ!」

「ハイ、1回目が終了。この曲は短いし、聞き取りやすいからがんばりたまえ」

 有無を言わせぬうちに訳の分からない指導が開始されていた。
 学校までの約30分。延々と聴きなれない洋楽を耳にすることになる。
 いつもより早い登校時間。当然、教室には誰も居ない。
 私は聞き覚えた英語をつらつらと紙に書き出してみる。
 とはいえ、正確に聞き出せてる訳でもなく、こんな雰囲気の発音英語ってのは調べるしかなかった。

「く、倉持さん? おはよう」

 意外そうな顔をした関口良子が朝のご挨拶。
 彼女は唯一フルネームで覚えているクラスの同級生。
 同じ特待生らしく、クラス委員長でもあるしね。
 そして何より、私に対して何故だか裏表なく接してくる貴重な人物。
 苦手な教科は古典らしく、よく分からないところを聞いてきたりする。
 とはいえ、親しいというわけではない。
 やりたい放題のクラスをまとめるために奮闘しているんだと思う。

「…おはよう」

 私はチラリと彼女を見ると、すぐさま辞書と共に格闘中。
 罰ゲームだなんて考えただけでも恐ろしい。
 エロ教師の高山が言うことなんて知れている。
 だから絶対に完璧に答えてやる!! と闘志を燃やす。
 午前中の授業を棒に振り、つじつまの合うように歌詞を仕上げた。
 頭の中はずっとこの曲に振り回されて迎えた昼休み。
 したくもない放課後の待ち合わせ時間よりも早く生物準備室へ繰り出す。

「お、倉持。少しでも早くオレに会いたくなったのか?」

 息巻いてやってきた私に対して白衣姿の高山は嬉しそうに笑う。
 冗談じゃないっ! 誰がそう思うかってーの。
 笹山の姿がないのは残念だけど、少しでも罰ゲームの呪縛から開放されたい。
 高山の目の前に自信作ともいえる英文を差し出す。

「へえ~、下校時刻まででいいのに随分と早いご回答で」

 ニヤリと笑いながら私を見る。笑ってられるのも今のうちだっ!

「じゃ、せっかくだから聴かせてよ。倉持の回答、曲にのせて」

 きょ、曲にのせてぇ? 歌えってーのか、この私にっ!!

「ほら、ちゃんと聴かないと正しく聞き取れてるのか確認できないだろ?」

 歌い渋る私に高山は意地悪く微笑む。
 くっそ~! 罰ゲームよりタチが悪いかも?!
 もうこうなったらヤケクソだっ!!
 赤面しながら高山の前で歌ってみせたつーのっ!

「正解! よくできました。これは合格のしるし」

 歌い終え、屈辱に震え立ちすくむ私のほっぺにチュ。
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