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子爵令嬢、平民落ちする
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私は下地としてアリバイ工作に専念する。
最近アーデンの体調がすぐれないと装い、食事を消化のいいものにしてほしいと調理場に頼みこむ。
食欲不振を装い、具合の悪そうな空気感を出すためだけど、実際は私の分もあるので本人のものと入れ替えているけど、優しいアーデンは半分こしてきたりとか。
とりあえず突発来訪の際、功を制したのか見事にアーデンを病欠として参加せずに誤魔化せた。
やはりその他大勢の一員として同化して気づかれなかったに違いない。
この作戦は成功かも! こんな風に過ごしていけば外へのお稽古事がいける!!
早速、職業斡旋所へ依頼しよう。ちょうどいい相手が見つかるかは分からないけども。
そう、意気込んでいたのに……。
「ガゼボの方に、ですか?」
「お待ちしていますのでお急ぎを!」
誤魔化しの通じた翌週、再び突発来訪があった。この日はいつものようにお出迎えに参加。
そのあとは部屋に戻って寛いでいる時に公爵侍女からの伝達がある。
突如、マーデリンからのお茶の誘いが舞い込んできたのだ。
侍女に促されるように慌ててアーデンと共にガゼボへ向かう。
そろそろ風も冷たくなり始めるような時期でもあるが昼間はぎりぎりちょうどいい気候といえる。
こじんまりとした庭の紅葉した木々が色づいており、舞い散った葉がとても綺麗だ。
その一角に小さなガゼボがある。周りには護衛らしき男の人が立っている。
中の様子は見えないけど、人影があることは分かる。
これはもしかして!! もしかすると!!!
胸の鼓動が高鳴る。今まで声でしか気配を感じなかったヒロインがその場にいる?
とはいえ、しがない侍女でもあるため、ガゼボ近くに待機し、背を向けて立つことしかできない立場。
「お待たせしました。アレクシスラント王女」
「まあ……。名で呼んでくれないと悲しいわ。ところでアーデン、具合はどうかしら?」
ついにアーデンとマーデリンとの接触を目の当たりにすることになる。声のみだけど。
よくこの状況をブランディンが許したなぁと思えばいない様子。
「先日、体調を崩していると耳にしてお見舞いに伺おうとしたのだけど、……遠慮してしまったの。今日はそのお詫びとしてお茶でもどうかと誘ってみたのよ。……今、ブランディンは席を外しているけれどすぐに戻るわ」
鈴を転がすような声が響き渡る。すっぽかしたあの日、その他大勢としての認識だと思っていたのにさすが王女様、全体を把握しているとは。
「……それと、あなたもこちらへどうぞ」
何だか私に向かって聞こえる気が……と感じていると護衛さんが声をかけてきた。
信じられないことに太陽姫が私を呼んでいる!!!
私は頭を下げたまま、座っているアーデンの後ろに立つ。すぐに頭をあげるように促される。
その目に飛び込んできたのはまばゆいばかりのご尊顔!
”穏やかな風の流れと輝かしい光を反射したようなハニーブロンドの長い髪を靡かせ、雲一つない澄んだ青空のような瞳を持つ凛々しくて愛らしい娘”
小説で描写されたまんま、いやそれ以上のキラキラしたオーラを放つ太陽姫の存在。
彼女こそがアーデンを幸せに導いてくれる念願のヒロインで私は気絶しそうになった。
「機会がなくて挨拶が遅れてしまってごめんなさい。あなたはアーデンの侍女だと伺ったわ。どうぞよろしくね」
にっこりと微笑む笑顔が眩しい。正に直射日光を目の当たりにしたような輝き。だてに太陽姫と呼ばれているわけじゃない。
「……ととととと、とんでもございません。ありがとうございます!」
テーブルを囲んだアーデンとマーデリンのツーショットが目に映る。最強の組み合わせでまともに見ていられない。
ようやく二人の対面の瞬間を確認でき、あの悶々とした日々が一瞬で吹き飛んでしまった。
時間がかかって余計なことを考えたけど、小説通り進んでいくのかも?
そして念押しとしてこれを機会に貴族教育への支援を頼めるチャンスなのではと頭に過ぎった。
最近アーデンの体調がすぐれないと装い、食事を消化のいいものにしてほしいと調理場に頼みこむ。
食欲不振を装い、具合の悪そうな空気感を出すためだけど、実際は私の分もあるので本人のものと入れ替えているけど、優しいアーデンは半分こしてきたりとか。
とりあえず突発来訪の際、功を制したのか見事にアーデンを病欠として参加せずに誤魔化せた。
やはりその他大勢の一員として同化して気づかれなかったに違いない。
この作戦は成功かも! こんな風に過ごしていけば外へのお稽古事がいける!!
早速、職業斡旋所へ依頼しよう。ちょうどいい相手が見つかるかは分からないけども。
そう、意気込んでいたのに……。
「ガゼボの方に、ですか?」
「お待ちしていますのでお急ぎを!」
誤魔化しの通じた翌週、再び突発来訪があった。この日はいつものようにお出迎えに参加。
そのあとは部屋に戻って寛いでいる時に公爵侍女からの伝達がある。
突如、マーデリンからのお茶の誘いが舞い込んできたのだ。
侍女に促されるように慌ててアーデンと共にガゼボへ向かう。
そろそろ風も冷たくなり始めるような時期でもあるが昼間はぎりぎりちょうどいい気候といえる。
こじんまりとした庭の紅葉した木々が色づいており、舞い散った葉がとても綺麗だ。
その一角に小さなガゼボがある。周りには護衛らしき男の人が立っている。
中の様子は見えないけど、人影があることは分かる。
これはもしかして!! もしかすると!!!
胸の鼓動が高鳴る。今まで声でしか気配を感じなかったヒロインがその場にいる?
とはいえ、しがない侍女でもあるため、ガゼボ近くに待機し、背を向けて立つことしかできない立場。
「お待たせしました。アレクシスラント王女」
「まあ……。名で呼んでくれないと悲しいわ。ところでアーデン、具合はどうかしら?」
ついにアーデンとマーデリンとの接触を目の当たりにすることになる。声のみだけど。
よくこの状況をブランディンが許したなぁと思えばいない様子。
「先日、体調を崩していると耳にしてお見舞いに伺おうとしたのだけど、……遠慮してしまったの。今日はそのお詫びとしてお茶でもどうかと誘ってみたのよ。……今、ブランディンは席を外しているけれどすぐに戻るわ」
鈴を転がすような声が響き渡る。すっぽかしたあの日、その他大勢としての認識だと思っていたのにさすが王女様、全体を把握しているとは。
「……それと、あなたもこちらへどうぞ」
何だか私に向かって聞こえる気が……と感じていると護衛さんが声をかけてきた。
信じられないことに太陽姫が私を呼んでいる!!!
私は頭を下げたまま、座っているアーデンの後ろに立つ。すぐに頭をあげるように促される。
その目に飛び込んできたのはまばゆいばかりのご尊顔!
”穏やかな風の流れと輝かしい光を反射したようなハニーブロンドの長い髪を靡かせ、雲一つない澄んだ青空のような瞳を持つ凛々しくて愛らしい娘”
小説で描写されたまんま、いやそれ以上のキラキラしたオーラを放つ太陽姫の存在。
彼女こそがアーデンを幸せに導いてくれる念願のヒロインで私は気絶しそうになった。
「機会がなくて挨拶が遅れてしまってごめんなさい。あなたはアーデンの侍女だと伺ったわ。どうぞよろしくね」
にっこりと微笑む笑顔が眩しい。正に直射日光を目の当たりにしたような輝き。だてに太陽姫と呼ばれているわけじゃない。
「……ととととと、とんでもございません。ありがとうございます!」
テーブルを囲んだアーデンとマーデリンのツーショットが目に映る。最強の組み合わせでまともに見ていられない。
ようやく二人の対面の瞬間を確認でき、あの悶々とした日々が一瞬で吹き飛んでしまった。
時間がかかって余計なことを考えたけど、小説通り進んでいくのかも?
そして念押しとしてこれを機会に貴族教育への支援を頼めるチャンスなのではと頭に過ぎった。
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