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子爵侍女、前世を思い出す
閑話SS アーデン様の入浴事情
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つくづく思う。湯船に浸かりたい!
フロンテ領に訪れて男爵令嬢たちと3人になって以来からというもの、お湯に浸かるということがなくなってしまった。
例の令嬢追い出し作戦でバスタブを使わせてもらえなくなってずっとタライ利用のみが続いている。
ここ2年以上は冷えたようなぬるま湯か水を身体にかけるか、温かいお湯で絞った布で体を拭くかのどちらかでしか身体を清めていない。
銭湯や温泉がある日本に生まれ育った人間としてはやっぱり時折湯船に浸かりたいと思ってしまうのだ。
例え普段はシャワーに慣れ親しんでいたとしてもたまにはのんびりゆっくりと。
まさかこんなに長いこと浸かれないと状態が続くとは思ってなく、本能的に入りたいと感じるのだ。
使用人ごときがなんて贅沢なと思われようが浸かりたいものは浸かりたい。水風呂でもいいから浸かりたい。
そうずっと思ってきたからタライにすっぽり入れるアーデンが少し羨ましかった。
けれど私の身体ではさすがにタライに入ることすらままならないため、アーデンの背中を流しながらも一緒に入れたならいいのになと思っていた。
もちろんいくら子どもとはいえども高貴な身分の方に自分の裸をさらすことなんてしていない。
こんな狭いタライしかない場所でスッポンポンになればお湯に浸かるどころか露出狂の痴女扱いになって失礼にあたる。
せめて身体を覆いつくす水量に浸かれるとなれば身体も隠れてギリOKと思えるし、効率よく一緒に入れるのになとため息をつく。
昔、弟と入っていた頃を思い出す。お湯を掛け合ったり、水鉄砲したりなどと手がシワシワになるまで遊んだっけ。
懐かしさに浸りつつもアーデンの湯浴みを終えて屋根裏に送り出すと今度は私自身の身体を清めるといういつものルーティーンを繰り返していた。
そんな雨期も明けたある日、森探索から帰ってきたアーデンから川があったと報告される。
それを耳にした私は早速その場所を案内された。森の奥まった場所にある川はフロンテ領に初めて訪れた時に見た大きな湖と続いているようだった。
形状に沿って流れる透き通った綺麗な水がざあっと音を立てている。中央部はそこそこ深そうに見えた。
すぐさま入りたいと思ったものの、仕事を抜け出している身としてはできかねない状態。
夕食後では森の中に入るのは遅くなってしまうと、翌日の早朝に行こうとアーデンと約束した。
2年越しの念願が叶えられると張り切って川へと向かった私は服を脱ぎ捨て早々に入った。
丁度いい水量は座るとすっぽりと体を覆い、髪も流れに添わせながら洗えてしまう。
喜び勇んで浸かる私に遅れて恐る恐る近づいてくるアーデン。
水の勢いで時折押されそうになりながら不安定な足取りで身体の半分以上は浸かったまま、私に近づいていた。
その時、川底の何かに躓いたようで細身の身体がぐらりと傾き、私は反射的に抱き留めた。
つい自分の欲望に浸り、幼い身体ということがすっかり頭から抜けていた。川の事故なんて生前よく聞いた話。
小さい子が足を取られて流されるとか何て危険に晒してしまったんだろう。
アーデンと向き合いながら無事を確かめると安堵からもう一度ギュッと抱きしめた。
謝罪をしながらアーデンの体を背後から覆うようにしっかり抱きしめ直すと髪を洗ってあげた。
アーデンは恐怖からなのか震えながら何も言わず大人しくされるがままになっている。
これ以上怖がらせてはいけないと手早く水浴びを済ますと抱っこして川から出た。
「ぼく、もう一人で入れるから」
その日以来、タライにお湯を溜めた後はそう主張し、私個人の用事を済ますようにと、追いやられた。
私があの時我を忘れたせいで溺れそうになった恐怖からか、失態を恥じているのか、一人で湯浴みすることを望むようになってしまったと思う。
さらには私の水浴びで川へと付いて来るものの、浅瀬で顔を洗う程度で頑なに中に入ろうとしなかった。
川への恐怖を幼い子に植え付けてしまったと後悔するものの、浸かるという誘惑には勝てずに申し訳なく思う。
いつか再び入れるようになって欲しいと願いつつ、川に浸かりながら自分の身体を清めてしまうのだった。
フロンテ領に訪れて男爵令嬢たちと3人になって以来からというもの、お湯に浸かるということがなくなってしまった。
例の令嬢追い出し作戦でバスタブを使わせてもらえなくなってずっとタライ利用のみが続いている。
ここ2年以上は冷えたようなぬるま湯か水を身体にかけるか、温かいお湯で絞った布で体を拭くかのどちらかでしか身体を清めていない。
銭湯や温泉がある日本に生まれ育った人間としてはやっぱり時折湯船に浸かりたいと思ってしまうのだ。
例え普段はシャワーに慣れ親しんでいたとしてもたまにはのんびりゆっくりと。
まさかこんなに長いこと浸かれないと状態が続くとは思ってなく、本能的に入りたいと感じるのだ。
使用人ごときがなんて贅沢なと思われようが浸かりたいものは浸かりたい。水風呂でもいいから浸かりたい。
そうずっと思ってきたからタライにすっぽり入れるアーデンが少し羨ましかった。
けれど私の身体ではさすがにタライに入ることすらままならないため、アーデンの背中を流しながらも一緒に入れたならいいのになと思っていた。
もちろんいくら子どもとはいえども高貴な身分の方に自分の裸をさらすことなんてしていない。
こんな狭いタライしかない場所でスッポンポンになればお湯に浸かるどころか露出狂の痴女扱いになって失礼にあたる。
せめて身体を覆いつくす水量に浸かれるとなれば身体も隠れてギリOKと思えるし、効率よく一緒に入れるのになとため息をつく。
昔、弟と入っていた頃を思い出す。お湯を掛け合ったり、水鉄砲したりなどと手がシワシワになるまで遊んだっけ。
懐かしさに浸りつつもアーデンの湯浴みを終えて屋根裏に送り出すと今度は私自身の身体を清めるといういつものルーティーンを繰り返していた。
そんな雨期も明けたある日、森探索から帰ってきたアーデンから川があったと報告される。
それを耳にした私は早速その場所を案内された。森の奥まった場所にある川はフロンテ領に初めて訪れた時に見た大きな湖と続いているようだった。
形状に沿って流れる透き通った綺麗な水がざあっと音を立てている。中央部はそこそこ深そうに見えた。
すぐさま入りたいと思ったものの、仕事を抜け出している身としてはできかねない状態。
夕食後では森の中に入るのは遅くなってしまうと、翌日の早朝に行こうとアーデンと約束した。
2年越しの念願が叶えられると張り切って川へと向かった私は服を脱ぎ捨て早々に入った。
丁度いい水量は座るとすっぽりと体を覆い、髪も流れに添わせながら洗えてしまう。
喜び勇んで浸かる私に遅れて恐る恐る近づいてくるアーデン。
水の勢いで時折押されそうになりながら不安定な足取りで身体の半分以上は浸かったまま、私に近づいていた。
その時、川底の何かに躓いたようで細身の身体がぐらりと傾き、私は反射的に抱き留めた。
つい自分の欲望に浸り、幼い身体ということがすっかり頭から抜けていた。川の事故なんて生前よく聞いた話。
小さい子が足を取られて流されるとか何て危険に晒してしまったんだろう。
アーデンと向き合いながら無事を確かめると安堵からもう一度ギュッと抱きしめた。
謝罪をしながらアーデンの体を背後から覆うようにしっかり抱きしめ直すと髪を洗ってあげた。
アーデンは恐怖からなのか震えながら何も言わず大人しくされるがままになっている。
これ以上怖がらせてはいけないと手早く水浴びを済ますと抱っこして川から出た。
「ぼく、もう一人で入れるから」
その日以来、タライにお湯を溜めた後はそう主張し、私個人の用事を済ますようにと、追いやられた。
私があの時我を忘れたせいで溺れそうになった恐怖からか、失態を恥じているのか、一人で湯浴みすることを望むようになってしまったと思う。
さらには私の水浴びで川へと付いて来るものの、浅瀬で顔を洗う程度で頑なに中に入ろうとしなかった。
川への恐怖を幼い子に植え付けてしまったと後悔するものの、浸かるという誘惑には勝てずに申し訳なく思う。
いつか再び入れるようになって欲しいと願いつつ、川に浸かりながら自分の身体を清めてしまうのだった。
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