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神竜の審判

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 ついにこの日が来てしまいました。
 今日は鳥が鳴く頃の早朝、乾草小屋から直接叩き起こされました。
 あのお目付け役っぽいAさんとBさんに、です。
 それもいつもの服装ではなく、仕立ての良さそうな布地の白をベースにして縁どられた色は青色。
 胸に竜の紋章が入った袖なしのチュニック型をしたちょっと見慣れない格好のいいものです。 
 一応、1カ月前にも1週間前にも二人にはお目にかかっていたのですが、相変わらず聞く耳もたず仕舞いという。
 ただただ、正直に話せ、そうすれば審判は回避できるとまで言ってましたが。
 命の関わるものと知った今は回避できるに越したことはないのですが、如何せん、伝えることは伝えました。
 私は何をこれ以上話せばいいのか分からないし、むしろ問うてみましたよ。
 けれどもお返事はありませんでした。
 そしてこのざまです。
 審判当日、食事ももらえることなく、いきなり現れました。
 当然、今まで行っていた作業には取りかからずにすみそうですが、急なのは何やら審判が行われる場所に行くためだそうです。
 距離があるため、出発を早める必要があり、事前に知らせておくと逃げ出す輩もいるそうだからとか。

「最後に聞くが、本当のことを話すつもりはないんだな?」

 Aさんが大きな鼻から息を吐きだしながら半ば諦めたように問いかけます。

「ですから、本当のことは伝えてます。これ以上、何を話せばいいのか判りません」

 もちろん、1週間前にはアニーさんから聴き出せたことも伝えましたよ。
 黙秘を貫いていると思われているからどう聴きだしたのか怪しそうにされましたが。

「もういいよ。こいつらはずっとこんな調子だし、命が惜しくないんだよ」

 Bさんが大きな口から呆れたようなため息をこぼします。
 どうせアニーさんの話だって作り話のように思われているみたいですし。

「ほら、行くぞ。後悔してももう遅いからな」

 そう言うと私たちは両手にひもが繋がれ、引っ張るようにして連れていかれました。
 2カ月前は明るかった朝も今ではだんだんと明けるのが遅くなっているようでほんのり薄暗いです。
 いい匂いの乾草小屋も皿洗いの建物も通り過ぎながらついにココとはお別れするようですね。
 まるで実感がありませんが本当に死ぬんでしょうか?
 
 出口らしい場所に移動するとAさんとBさんは用意してあった馬にまたがり、私たちを引っ張りながらゆっくりと歩みを進めました。
 ううっ、また歩かされるんですね。
 でもこの2カ月、素足で過ごしたせいか随分と足の皮が厚くなった気がしますよ。
 あの肉体労働で心なしか筋肉質になった気も。
 とはいえ、食事がまともでないから最小限でしょうけど。
 どこまで歩くのか分かりませんがご飯がないのが辛いです。
 死ぬ実感はないのですがお腹は空いてますよ。
 死刑確定人にとって最後の晩餐すらないなんて。
 ひどい、ひどすぎますよ。神龍さま。
 せめて食事だけでもとらせてくれてもいいじゃないですか!
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