上 下
1 / 1

妹に婚約者を略奪されたのですが…。

しおりを挟む
私の婚約者はパーシヴァルという侯爵令息だ。
中性的な顔立ちのイケメンで、低くもなく高くもない優しい声をしている。
その声で名前を呼ばれるのが好きだった。

政略結婚ではあったけど、彼は私に、

「愛してる」

とよく言ってくれた。
もちろん、私も彼のことが好きだった。



ある日、私は用事があって外出した。
それから数時間後、帰宅したところ……。

私の妹・ロザリンダの部屋から、パーシヴァルが出てくるのが見えた。

「パーシヴァル様?」

声をかけると、彼の顔が強張った。その彼の背後から、妹が顔を覗かせた。

「どうして、ロザリンダの部屋から出てきたのですか?」

訊ねても、パーシヴァルは無言のままだった。
なんて言おうかと頭を絞っているのだろう。

「パーシヴァル様はお優しいから、本当のことを言えないのね」

ロザリンダがこの場の雰囲気にそぐわない明るい声色で言う。

「彼は、お姉さまよりも私を愛しているのよ。ねえ、そうですよね?」

そう言って、ロザリンダはパーシヴァル様の肩に手をそっと置いた。
彼がロザリンダの手に自分の手を重ねる。

「すまない。私は君との婚約を破棄したいと思っている」

頭を打たれたような感覚になった。

嘘だと思いたい。
でも、彼らの間に流れる甘い雰囲気から、本当のことなのだろうと思う。




後日、私とパーシヴァルの婚約は破棄となった。
そして、パーシヴァルはロザリンダと結婚した。

ロザリンダは結婚してからというもの、パーシヴァルにかなり溺愛され、大切にされているらしい。
「パーシヴァル様に高いネックレスを貰った」「何でもない日に花束を貰った」などの自慢を書いた手紙が彼女から送られてきて辟易とする。


だが、ロザリンダは実家に戻ってきた。
なんと、手紙に書いていたパーシヴァルに貰ったネックレスや花束は、ロザリンダがパーシヴァルにおねだりした物だったそうだ。
パーシヴァルはロザリンダのわがままに呆れ、離縁を言い渡した。

そして、パーシヴァルから私に「復縁したい」という手紙が届いた。
もちろん、断る。

だって、私には他に好きな人がいるから。

パーシヴァルとの婚約が破棄となって落ち込んでいた私は、侯爵のレアンドルとパーティーで知り合い親しくなった。
そのレアンドルと結婚する予定なのだ。
パーシヴァルと復縁するつもりはない。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

聖女である御姉様は男性に抱かれたら普通の女になりますよね? だから、その婚約者をわたしに下さいな。

星ふくろう
恋愛
 公爵家令嬢クローディアは聖女である。  神様が誰かはどうだっていい。  聖女は処女が原則だ。  なら、婚約者要りませんよね?  正妻の娘である妹がそう言いだした時、婚約者であるこの国の王子マクシミリアンもそれに賛同する。  狂った家族に婚約者なんか要らないわ‥‥‥  クローディアは、自分の神である氷の精霊王にある願いをするのだった。  他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】義母が斡旋した相手と婚約破棄することになりまして。~申し訳ありませんが、私は王子と結婚します~

西東友一
恋愛
義母と義理の姉妹と暮らしていた私。 義母も義姉も義妹も私をイジメてきて、雑用ばかりさせてきましたが、 結婚できる歳になったら、売り払われるように商人と結婚させられそうになったのですが・・・・・・ 申し訳ありませんが、王子と結婚します。 ※※ 別の作品だと会話が多いのですが、今回は地の文を増やして一人の少女が心の中で感じたことを書くスタイルにしてみました。 ダイジェストっぽくなったような気もしますが、それも含めてコメントいただけるとありがたいです。 この作品だけ読むだけでも、嬉しいですが、他の作品を読んだり、お気に入りしていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

さようなら、あなたとはもうお別れです

四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。 幸せになれると思っていた。 そう夢みていたのだ。 しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される

中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。 実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。 それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。 ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。 目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。 すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。 抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……? 傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに たっぷり愛され甘やかされるお話。 このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。 修正をしながら順次更新していきます。 また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。 もし御覧頂けた際にはご注意ください。 ※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。

やって良かったの声「婚約破棄してきた王太子殿下にざまぁしてやりましたわ!」

家紋武範
恋愛
 ポチャ娘のミゼット公爵令嬢は突然、王太子殿下より婚約破棄を受けてしまう。殿下の後ろにはピンクブロンドの男爵令嬢。  ミゼットは余りのショックで寝込んでしまうのだった。

処理中です...