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エックハルトは優しくて、抱きしめられただけで安心する。
朝、目が覚めてエックハルトいると幸せだなと胸がじんわりと温かくなる。

「おはよう。イレーネちゃん」
「おはようございます。エックハルトさん」

一緒に起きて、ご飯を食べて、仕事に向かうエックハルトさんを玄関で見送る。
それから、私は裁縫をしたり、本を読んだりして過ごす。
夕方頃になると、使用人と一緒に夕食を作る。使用人は手伝う必要はないと言うけど、花嫁修行でそれなりに料理をしたことがあるし、エックハルトに私の料理を食べてもらいたいから、毎日夕食を作る。
エックハルトが帰ってきたら出迎えて、一緒に夕食を食べて。

「おやすみ」

と言い合って、就寝する。

私たちの結婚生活はこんな感じで、喧嘩をすることもなく、幸せそのものだった。


ある日の昼下がり。

「奥様。お手紙が届いております」

使用人に手紙を渡された。
両親か、友人だろうと思って差出人を見ると。

「ユーカ?」

私の元婚約者を奪った親戚の女の子の名前だった。

「どうして?」

封を切り、便箋を開く。
そこには、「結婚のお祝いをしたい」「婚約者を略奪したことについて謝りたい」という内容が書かれていた。
ユーカには結婚したことを話していなかったから、誰かから聞いたのだろう。

お祝いなんていらないし、謝罪なんて今更だ。
丁寧にお断りの手紙を書き、使用人に頼んで送ってもらった。

一応と思って、エックハルトに手紙が来たことを話した。

「仕事帰りに会ったよ。ユーカって子と」
「え」

ユーカがエックハルトに接触するなんて。
どんな情報網を持っているんだと不安になった。

「結婚生活に不満とかありませんか?とか、あの子愛嬌がないでしょ?とかいろいろ言われたけど、好きな人と結婚して不満なんかないし、イレーネちゃんは愛嬌あって可愛いって話して、適当にあしらったよ」
「そうですか。あの子、昔から私のこと敵視してきて、困ってるんです」
「君のことが妬ましいのかもね。イレーネちゃんも大変だ」

それから、エックハルトはユーカとよく出くわすようになったらしい。
きっと、私からエックハルトを奪おうとしているのだ。元婚約者を略奪したように。

「結構、しつこいね。いつもと違う道を通ったりして工夫しているんだけど、その翌日には仕事場の前で待たれて困っているんだよね」
「エックハルトさんにも迷惑をかけてすみません。元婚約者に手紙を書いたんですが、彼とは離婚したみたいで」
「奪っておいて、離婚したの」
「ええ。性格が合わなかったそうで」

エックハルトさんと私は呆れたように笑った。
ユーカには、はっきりと私の大事な人を奪うのは辞めてと言おう。

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