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お見合い相手の恋人があなただったなんてね。

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よく晴れた春の日のこと。
私は幼馴染のルミアの家に遊びに行った。ルミアは私よりずっと可愛らしい女の子で、美しい金の糸のような長い髪が眩しい。

客間でルミアと世間話をしていたら、彼女がふと思い出したように、

「そういえば、ソニア。あなた、ドゥエスダン伯爵とお見合いするって話していたわよね。どうなったの?」

確かに、この前ルミアの家に来た時お見合いの話をした。
少し話しにくいことなのだけれど。

「お見合い相手が……」

「どうしたのよ。もしかして、ブスで性悪だったのかしら?」

「半分正解。美形だけど性悪だったわ」

ドゥエスダン伯爵は眉目秀麗な男性で、初めて見た時胸が高鳴った。

「あらあら。それで、ソニアはその人と結婚するの?」

「もうお父様が盛り上がっちゃって、結婚したくないなんて思ってても言えないのよ。第一印象は良かったの。だけれど……」

「だけれど?」

「お見合いで二人っきりになった時、言われたのよ。『僕には、大事な恋人がいます』って」

そう言った時の伯爵の目が忘れられない。きっと、その恋人を思い浮かべていたのだろう。彼の目は幸せそうな色をしていた。

「何の宣言よ。そのようなこと、いちいち言う必要があるのかしら」

「結婚前にこういうこと言われるときついのよね」

「酷い人ね」

「私、伯爵に聞いてみたの。『恋人って誰ですか?』って。そうしたら、彼はあなたの名前を出したわ」

ルミアが大きな目を見開いた。 
私はフッと微笑んで、

「ねぇ、ルミア。彼と別れてくれないかしら?あなたなら、彼より素敵な人と出会えるわよ。何だったら、私が紹介するわよ」

「嫌よ!私だって、彼のことを愛しているもの」

「じゃあ、しょうがないわね」

私は近くにあった花瓶を持ち、思いっきりルミアの頭を殴った。
彼女がドサッと絨毯の上に倒れた。
絨毯に赤い血が広がっていった。


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