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婚約者に愛されていると思っていましたが、婚約破棄を言い渡されました。
しおりを挟む先日、私、レイラは侯爵のアントーンと婚約した。
アントーンは私の父の知り合いの息子である。その縁で私と彼は婚約することになったんだ。
彼は綺麗な顔立ちをした人だった。可愛くもなく、かと言って不細工でもない私にはもったいないくらいの人だ。だから、この人と婚約することになったのが夢のようだった。
それに、彼は私のことをよく褒めてくれるんだ。
「レイラさんは今日も綺麗だね」
会う度に「綺麗」とか「可愛い」と褒めてくれる。それが凄く嬉しくて照れくさくて、胸がぎゅんっとするんだ。
私もアントーンに向かって言う。
「アントーン様も素敵です」
すると、彼ははにかんだ。その顔が可愛らしかった。
ある日、彼が私に贈り物をくれたことがあったんだ。贈り物はネックレスで、彼が私の首につけてくれた。
「よく似合ってる」
ネックレスをつけた私を見て、アントーンが嬉しそうに微笑む。
何かにつけアントーンは私のことを褒めたり、贈り物をくれたりするから、私は彼に愛されているんだと思っていた。
けれど、結婚式まであと二週間という時に、彼の態度ががらりと変わったのだ。私のことを褒めなくなったし、そっけない態度をとるようになった。
もしかして、私がアントーンを怒らせるようなことをしたのではないか。
不安になった私はアントーンにたずねた。
「私はアントーン様に何か失礼なことをしたでしょうか?何か気になることがあれば、はっきりと仰ってください」
「いや、何もないよ」
アントーンは首を横に振る。
「では、どうして、そっけない態度をおとりになるのですか?私が何かしたのでは…と思い、不安なのです」
私の言葉に、彼は複雑そうな顔をした。だが、一息ついて話し始めた。
「他に好きな人ができたんだ。でも、あなたと婚約しているんだから、この想いを消さないといけないって思った。だが、無理だったんだ」
他に好きな人がいるという言葉に、私は固まった。
私は彼のことが好きなのに、彼は違う。それが本当に本当にショックだった。
「ショックだよね。でも、君のことは好きじゃないんだよ。はっきり言って、君とは結婚したくないんだよね。婚約は破棄させてもらう」
「そんな!婚約を破棄するだなんて!」
「うるさいな。君とは結婚したくないんだよ。じゃあね」
そう言って、アントーンはその場を去った。
私とアントーンの婚約は破談となったんだ。
その後、アントーンはどこかの伯爵令嬢と結婚したそうだ。
しかし、その伯爵令嬢に浮気されて離婚したという。
だからなのだろうか。
アントーンが私のところに来て、頭を下げた。
「レイラ。君には申し訳ないことをした。許してほしい。レイラとまたやり直したいんだ」
復縁要求してきたのだ。今更、復縁したいと言われても困る。
私は破談になった後、お見合いをした。それで知り合った人と先日婚約したのだ。だから、アントーンと復縁することはできないんだ。
「私、あなたのことはもう好きじゃないんです。だから、あなたと結婚しません!さようなら」
はっきりと「NO」を突きつけ、アントーンを追い出した。
それから、アントーンに復縁を要求されることはなく、私は婚約者と結婚して幸せに暮らしている。
~end~
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