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第三部

ピクニックというより冒険

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 キュウちゃんに乗って始まったピクニックは、もうすぐ目的地に到着する。
 これまでの道のりを簡潔にまとめると、壮絶だった。
 とりあえず言っておきたいのは、ものすごい速かったこと。
 四人を乗せているにも関わらず、九尾は全くスピードを緩めることなく走り続けた。
 九尾の魔法のおかげで風を全く感じることなく快適なピクニックだったと言える。

「……いやいや、これピクニックって言えるの?」

私は、高速で最強の移動手段を用いた冒険だと思った。

「あら、ノアちゃんは楽しくなかった?」

「そんなことないですけど、ピクニックらしいことしたのは休憩とか食事の時だけじゃないですか」

 休憩中や食事中は、綺麗な景色を楽しみながらお茶を飲んだり美味しいご飯を食べたり、とても素敵な時間だった。
 ただ、移動している時は違う意味で恐怖を感じた。

「あれって、災害指定の魔物ですよね。いや~、やっぱり神獣ってすごいんだなぁ。あんな凶悪なのを一撃だなんて。僕、思わず興奮しちゃいましたよ!」

「うむうむ。そうであろうそうであろう。わらわ、実はすごいんじゃよ!」

 ハヤト兄が珍しく高揚した様子で、九尾に話しかけている。
 九尾は褒められたことが嬉しいのか、自慢げに胸を張っていた。

「そうね。キュウちゃんもやればできる子なのよねぇ」

「むむっ。姫よ、聞き捨てならないぞ。わらわはいつでもできる子であるぞ」

「タマモの体を借りていつもお昼寝しかしないじゃない」

「むっ。確かに……言われてみれば……」

 思い当たるところがあるのか、難しい顔で唸っている。

「ノアちゃんノアちゃん。シンジロウさんてどんな人なんだろうね」

「どんなって言われても……元々偉い家の人なんでしょ。高圧的な態度で嫌な事言ってきたりとか?」

「シンジロウ様はそんな方じゃないよ。彼は困っている人に優しく手を差し伸べられる人だ。何より民を一番に思っている。ノアとカナモも大事にしてくれるよ」

「それなら、ますますピッタリの子ね。せっかく国を変えても変な人を王様にしてしまっては元も子もないもの」

「姫が治めるのが一番安心じゃがな」

「嫌よ。私はこの森で生きていくと決めてるの。王様なんて面倒だわ」

 ユミエラさんは九尾の尻尾を撫でながらそう言った。
 いや、待って。それ九尾の尻尾じゃなくて、ただの狐の尻尾だったわ。
 というか、いつの間にかユミエラさんの周りにはたくさんの動物たちが集まっていた。
 どっから来たのあなたたち。

「この広い森には人間以外のたくさんの動物たちが自由に生きているわ。彼らと共に私も自由でありたいの」

 ふわぁ~、と眠そうにあくびをした。
 そのまま大きな狼の体を枕にユミエラさんは眠りについた。
 いやいや、ユミエラさん。今休憩中ですよね。

「……ダメ……お嬢が寝てるときは静かに……」

 いきなりタマモに変わり、寝ているユミエラさんの毛布を掛けた。
 しばらく休憩は続きそうです。
 そう思った時、近くの茂みがガサガサと音を立てた。

「「!?」」

「ノア、カナモ、下がって」

「……いるのは分かってた……早く出て……静かにね……」

 タマモが声をかけると、茂みから森の雰囲気に不釣り合いで、鮮やかな着物を着た
 女性が出てきた。





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