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30.ラストイベント

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 洋のスマホからの電話は昊の後輩だと言うホストからだった。


「主任が刺された」


 その言葉を耳にした時には既に足を走らせていた。









--------




 時を遡ってラストイベントの日。

 デカデカと自分が写る大きなポスターと客や同業者が送ってくれた豪華なスタンド花に100個のバルーンを組みあわせた装飾品。

 フロアの中心部に置かれた10段のシャンパン用グラス。

「すげぇなぁ·····」

「昊さん。お客さん飛んだ時、借金返済頑張って下さい」

「····不吉な事言わないでくれる!?」

 10段のシャンパンタワーの値段は見積もって約300万。

「ねぇ!合掌すんのやめてもらえる!?」

 スタッフ一同昊の客が飛ぶにかけているのだとか。


 誠に失礼の極みである。



「ホール長からも言ってやってよ!!」

「····まぁ、最近色恋しなくなった上にラスイベだからな」

 受け付け担当のホール長にポンッと肩を叩かれる。

「飛ばれたらどんまい」

「人のお客様を飛び客扱いすんじゃねぇぞぉおぉ!!」

 
 もう一度言おう。




 誠に失礼の極みである。




 営業時間になり、お客である姫達が次々と来店し、色んな卓でボトルの注文やシャンパンコールが飛び交う中、自分の一番の太客が来店してきた。

 この二年間の付き合いの姫は高級店の風俗嬢。

「アンタ以外に私とまともに話せる奴いる?」

 キャストが卒業するとなればそのまま新しい担当を選ばなければならないのだが、彼女はトーク力と気配りを尊重する正統派であり厳しい目で相手の接客を見る為、昊以外に担当となれるキャストは居るのかと心配になる。

 担当として気に入られれば本当に売り上げが上がる。
 しかし、直ぐに見限られればキャストとして未熟であると言う証明をされてしまうのは確かだ。。

「私はアンタの接客は気に入ってたわよ」

「ありがとうな。俺もすげぇ成長させて貰った」

「ふんっ」と、鼻を鳴らして注がれたビールを飲む彼女に昊は笑う。
 彼女にもいい担当が見つかればいいが、いなかったら別の店に行くだけだと厳しいお言葉も頂き、昊は必死にキャストを呼んで彼らの長所と短所をプレゼンしていた。

「アンタのそういうところよ」

「ん?何が??」

 人に好かれるところと言いたかったのだろう。
 ‪α‬であると言うのに上から目線にならずに相手の懐に入って聞きに回るのが上手い。
 そして、何よりキャスト同士切磋琢磨をしつつ連携を取るために皆のいい所も悪い所もはっきり答えられる。
 だから彼女はそんな昊を支え続けたのだ。




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