上 下
19 / 81

19.受side

しおりを挟む
 真尋達とは午後から会うからと昨日の夜から呼び出されて泊まる羽目になって



 朝も行為を強いられた。



「····ぁ····ふぁ····」

「今から用意しねぇと間に合わねぇんじゃねぇの?」

 分かっている。
 言う事を聞かない身体を鞭打って引き摺るように準備を始める。


 久しぶりの友人達との約束。


 ノロノロとした動作で着替えてフラフラのまま玄関に向かう。
 後ろからの痛い視線を感じる。


 靴を履いて玄関ドアを開けようとした時に後ろから腕を引っ張られた。

「っな-···んぅ···っ!」

 突然唇を奪われて口の中に甘くて冷たいものが流れてくる。

「····っは·······」

「脱水でぶっ倒れるぞ」

 そう言えば朝から何も飲んでいない事を思い出した。

「持っていけ」

 冷たいスポーツ飲料を手渡されて見送られた。


「·············」



 たまにこう言う気遣いをしてくるのは一体何なのだろうか。

「·····クソッ····」




 訳が分からない。







--------





 13時駅前カフェで真尋を待っていたら先にある人物がやってきた。

「久しぶり!元気ー···してる?」

「俺、そんなに病人見てぇな顔してる!?」
 



 久しぶりに会った中学の時の友人【日下部大智くさかべたいち】が心配した面持ちで見てくる。


「うん。病弱そうな見た目になってる」

「まじか」

「·····なんかあった?」


 真尋にも同じ事を言われた言葉を大智にも言われるとは思わなかった。

「別に大したことじゃねぇよ」

「····そうか」

 何かあったら言ってくれと心強い事を言ってくれる。
 普通のイジメや嫌がらせならオブラートに包んで相談しているかもしれない。

「ありがとな」

 笑って言ったつもりなんだが、大智はなにか言いたそうな顔をしていた。


 その後、直ぐに真尋が到着して少し雑談の後に映画に行ったりゲーセンに行ったりと久しぶりに休日を楽しんだ。

 放課後も休日もずっと福山の家に行っていたから忘れていた。




 こう言う楽しい時があったんだって。






 ファミレスで晩飯を食べて「そろそろお開きだな」と、真尋が行った時に咄嗟に


「····え····帰りたくない」


 と、本音を漏らした。

 自分の家庭環境を知っている真尋達は「家で何かあったのか?」と、聞いてくる。
 家はいつも通り放置だ。

 そうじゃないんだ。

 友人と別れたら戻ってこいと言われている。








 あれ?


 いつから福山の家が自分んの家と認識していたのだろうか。



 いつも行くからきっと間違えただけ



 嫌な間違えだ。




「庵。家に帰りたくないなら今日うち泊まる?」


 どうせ明日も休みだからと大智が提案してくる。
 大智のおばさんにも会いたいしすごく有難い言葉だったが、それは出来ないから断った。

「でも····」

 本当に帰りたくなさそうな自分に大智は「来いよ」と、畳み掛ける。

 大智の誘いに心が揺らめきそうになった時だ。


「相川」



「·········」



 後ろから聞こえた声に身体が固まった。



 何でお前がいるんだよ。




「帰るぞ」


 
 後ろから福山がそう言った。





 
 


 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

処理中です...