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10話、「装備とアリス」
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「さて、ギルドに登録できたし……とりあえず家に戻るか」
「依頼を受けるのではないのですか?」
「ああ、ちょっとばかり“渡したいもの”があってな」
頭上に疑問符を浮かべて首を傾げるアリスに笑って見せて、帰路につく。
アイテムボックスから以前購入した武具を取り出し、机に並べてみせて。
「これはアリスの分、こっちは俺の」
俺の短剣とは違い、少々重みのある剣に、防具一式。
それを見てアリスは目を輝かせるも、「シロー?」と若干怒りの含んだ声色で声をかけてくる。
あれ、俺やっちゃいました? なんて、異世界物特有のセリフを頭の中で思い浮かべ、今までの状況を整理する。怒ることがあったとしたら。
「これ、正規の手段ではない方法で買いましたね? 言うなら、裏ルート」
ぎくり、と身体が強張る。その通り、俺は裏ルートで仕入れた。あの武具屋の店主はギルドが発行しているカード、通称ギルドカードを所持していなくても売ってくれた。ということを咎めたいのだろう。
「まぁまぁ……先行投資ってやつだよ」
その言葉を聞いて、アリスは眉をしかめた。
「そんなリスキーなことをして、政府の方に目をつけられたらどうするんですか?」
心配からくる言葉だと知っているからこその罪悪感。けど、ここは平気なフリを。
「今のところ気付かれてないようだし、今ならギルドカードもある、だろ? なら心配する必要ないって」
考えすぎだとその一言を投げかければ不満気な表情をされる。当たり前だ。そういう教育も受けていただろうからな。
「もしかしなくても、包丁を買う等といったのも嘘――」
騙された!? そう言いたげな表情のアリスに首を横に振って否定する。
「あれは本当だ、料理するには包丁が必須だからな」
アイテムボックスから包丁を取り出してみせれば、はぁ……と溜息を吐かれる。
あれ、俺またなんかやっちゃいました? Part2。
「シローにもシローの考えがあることは分かりますが、……私にこんな多額な武器を渡すなんていうのは……」
歯切れの悪い、それでもどこか嬉しそうな声色。そりゃあ、身体動かす方がアリスは好きだろうから。
「嫌だったか? アリスはこっちの方が向いてると思ったから買ったんだけど」
「それ、は」
暫しの沈黙が流れる。
少しして、アリスは口を開いた。
「私はまた剣を取っていいのでしょうか……?」
迷いと葛藤、そんなものが滲み出ている声で俺に心配そうに問いかけてくる。
「嫌なら別にいいけどさ。ほら、パーティってタンクと前衛と後衛がいるだろ? もし良ければタンクしてほしくて」
何故か? 鑑定で見たステータス的に適正があるから! なんてのは言えない。
「俺からのお願いなんだけどさ、どうかな?」
また流れる沈黙の間。
を、切ったのはアリスの柔らかな笑い声だった。
「分かりました、シロー。シローが望むなら、いくらでも前へ出ましょう」
思わず俺はその言葉に笑顔になって、アリスの手を取ってぶんぶんと上下に振る。
「これで心配事はなくなったし、装備をしておけば他の連中に舐められることもない。普段は俺のアイテムボックスにしまっておけばいい。冒険者ギルドに行くときと、結界の外に行くくらいにしよう」
その案に頷いたのを確認すれば、ぐう、と腹の音が鳴った。
「そろそろ昼飯にするか」
昼、昼。そうだな……卵と牛乳がこの世界にあるのは確認済みだし、あとは……パンと砂糖が売ってればアレができるな。
「仕入れがてらギルドで依頼を受注しよう」
装備類をアイテムボックスに仕舞って、一つ、大きな伸びをして。
にぃっと笑みを浮かべる。
とりあえずの目標は――“薬草採取”の依頼だ。
「依頼を受けるのではないのですか?」
「ああ、ちょっとばかり“渡したいもの”があってな」
頭上に疑問符を浮かべて首を傾げるアリスに笑って見せて、帰路につく。
アイテムボックスから以前購入した武具を取り出し、机に並べてみせて。
「これはアリスの分、こっちは俺の」
俺の短剣とは違い、少々重みのある剣に、防具一式。
それを見てアリスは目を輝かせるも、「シロー?」と若干怒りの含んだ声色で声をかけてくる。
あれ、俺やっちゃいました? なんて、異世界物特有のセリフを頭の中で思い浮かべ、今までの状況を整理する。怒ることがあったとしたら。
「これ、正規の手段ではない方法で買いましたね? 言うなら、裏ルート」
ぎくり、と身体が強張る。その通り、俺は裏ルートで仕入れた。あの武具屋の店主はギルドが発行しているカード、通称ギルドカードを所持していなくても売ってくれた。ということを咎めたいのだろう。
「まぁまぁ……先行投資ってやつだよ」
その言葉を聞いて、アリスは眉をしかめた。
「そんなリスキーなことをして、政府の方に目をつけられたらどうするんですか?」
心配からくる言葉だと知っているからこその罪悪感。けど、ここは平気なフリを。
「今のところ気付かれてないようだし、今ならギルドカードもある、だろ? なら心配する必要ないって」
考えすぎだとその一言を投げかければ不満気な表情をされる。当たり前だ。そういう教育も受けていただろうからな。
「もしかしなくても、包丁を買う等といったのも嘘――」
騙された!? そう言いたげな表情のアリスに首を横に振って否定する。
「あれは本当だ、料理するには包丁が必須だからな」
アイテムボックスから包丁を取り出してみせれば、はぁ……と溜息を吐かれる。
あれ、俺またなんかやっちゃいました? Part2。
「シローにもシローの考えがあることは分かりますが、……私にこんな多額な武器を渡すなんていうのは……」
歯切れの悪い、それでもどこか嬉しそうな声色。そりゃあ、身体動かす方がアリスは好きだろうから。
「嫌だったか? アリスはこっちの方が向いてると思ったから買ったんだけど」
「それ、は」
暫しの沈黙が流れる。
少しして、アリスは口を開いた。
「私はまた剣を取っていいのでしょうか……?」
迷いと葛藤、そんなものが滲み出ている声で俺に心配そうに問いかけてくる。
「嫌なら別にいいけどさ。ほら、パーティってタンクと前衛と後衛がいるだろ? もし良ければタンクしてほしくて」
何故か? 鑑定で見たステータス的に適正があるから! なんてのは言えない。
「俺からのお願いなんだけどさ、どうかな?」
また流れる沈黙の間。
を、切ったのはアリスの柔らかな笑い声だった。
「分かりました、シロー。シローが望むなら、いくらでも前へ出ましょう」
思わず俺はその言葉に笑顔になって、アリスの手を取ってぶんぶんと上下に振る。
「これで心配事はなくなったし、装備をしておけば他の連中に舐められることもない。普段は俺のアイテムボックスにしまっておけばいい。冒険者ギルドに行くときと、結界の外に行くくらいにしよう」
その案に頷いたのを確認すれば、ぐう、と腹の音が鳴った。
「そろそろ昼飯にするか」
昼、昼。そうだな……卵と牛乳がこの世界にあるのは確認済みだし、あとは……パンと砂糖が売ってればアレができるな。
「仕入れがてらギルドで依頼を受注しよう」
装備類をアイテムボックスに仕舞って、一つ、大きな伸びをして。
にぃっと笑みを浮かべる。
とりあえずの目標は――“薬草採取”の依頼だ。
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