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嵐の生徒総会
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私立海常臨学園。
由緒正しいこの学校の校風は
――自主性
それに則り、生徒総会は教員の出席もなく、生徒のみで行われる。圧倒的な権威を盾に暴動、反乱、公序良俗に反する行為を徹底して、取り締まっていた生徒会があるからこそ成り立っている伝統的な集会。
だがそんな生徒総会で生徒会長のパンツ丸出しという空前の大事件が起こった。そして生徒会長のパンツにプリントされていたのは大人気子供番組の山芋マン……
この事件は未来永劫、海常臨高校に刻まれるであろう。
事は生徒総会、閉会挨拶。
凛とした立ち姿でマイクから美声を発したのは生徒会長、青橋星美《あおはしほしみ》である。
「これにて生徒総会を閉会いたします。生徒の皆さんは速やかに教室に戻ること。以上」
「ちょぉぉと待った!!」
皆が長時間の体育座りに疲れ、腰を伸ばす中、一人の女子生徒が叫び声を上げた。
雷伝未知留《らいでんみちる》。元アニメ部部長だった。
「ら、雷伝未知留!!」
生徒会長の惚けたような声がマイクに拾われる。すぐさま咳ばらいをし、皆に退場を求めた。
「あんな人の言葉など着ななくてよいです。だからとっとと教室に戻りなさい」
青橋はその女子生徒のことを知っていた。ただ一つ言えることは何をやり出すか分からないということだった。
追い詰められた人間の爆発力を計り知れない。
だが生徒たちに声は届いていない。いまはスピーカーから聞こえてくる美声よりも、へんてこな格好をして、喚いている一人の女子生徒のほうが注目の的なのだ。
雷伝はものもらいでもないのに眼帯をし、ブレザーに袖を通さずみ羽織っていた。手には包帯を巻き、中学生が付けるような指だしグローブをはめていた。
全校の耳目が集中する。こんなのは生まれて初めてだ。
「あ、青橋星美ぃぃ」
だんだんと声が小さくなる雷伝。顔を真っ赤にして、緊張に耐えられなくなった。
よくあんな堂々としゃべるな。生徒会長という奴は。少しだけ尊敬してしまったではないか。
「部長殿……皆が待っておりますぞ」
「だが我には荷が……」
「何を言っているでありますか、あなたがこの学校の英雄になるのでしょ」
震える足を温かい手で握り、グッドポーズで背中を押したのは、一風灯《ひとかぜともり》である。元アニメ部副部長で、数少ない雷伝の友人と呼べるだろう。
この女子生徒もおかしな着こなし? というかもはやコスプレをしている。学校の規定に沿っているのはもはやスカートのみ、ブラウスの上にはなぜか迷彩服を着ている。それだけではなく、軍隊で使用されているヘルメットまで被っている始末。
……完全に浮いていた。
しかしその思いは雷伝に届いたようだ。
〝英雄〟という言葉を聞いた瞬間、雷伝の目つきが変わった。
――そうか我は英雄なのだ。これは試練。ここでへこたれていては大銀河帝国の沽券にかかわる!
雷伝は再び大きく胸を張った。
「おい! 青橋星美!!」
「な、なんなのです……」
「いまからそのマイクを奪いに行くぞ」
雷伝がおもむろに走り出した。一般生徒たちをかき分けて、ステージに向かって猛ダッシュをしている。
「副会長、あの者を止めるのです!!」
だが副会長はじっとしたまま動かなかった。どこが違う方向を見て誤魔化している。
「ちょっと、あなた何を考えて……」
だが説教をしているどころではない。雷伝はもうすぐそこまで迫ってきているのだ。
「ミュージックカモン!」
ステージに駆け上がった雷伝は指を鳴らした。
すると体育館のスピーカーから爆音でロボットアニメのテーマ曲が流れる。それに合わせながら距離を詰め、青橋のバックを取った。
「あ、あなた何を!?」
「このクソアマが!!!!」
雷伝はそう叫びながら、青橋の胴体を持ち上げて、そのままジャーマンスープレックスを決めた。
完璧なホールドだった。
――ゴーンッ
という鈍い音と共にこの学校始まって以来明かされることのなかった生徒会長のパンツが白日の下にさらされる。
それと同時に、生徒会長が子供用のパンツ……その上、戦隊ヒーローの山芋マンがプリントされているパンツを履いていることが全校生徒に知れ渡ることとなったのだ。
「会長!!」
脇で見守っていた生徒会役員が一斉に叫んだ。
その中で唯一唖然としたまま鼻血を垂らしていたのは副会長だった。
あまりの恥辱に耐えられなくなった青橋はスカートの裾を押さえ、顔を真っ赤にし、そのまま泣き叫びながら逃げ帰ってしまった。
「許しませんことよ! 雷伝未知留!!」
「いい気味だよ。全く」
勝ち誇る雷伝。そして完璧のタイミングでテーマ曲が止まる。ステージの脇に隠れて、ラジカセのスイッチを押したのは元アニメ部の岩寺俊《いわてらしゅん》だった。
トレードマークの眼鏡が輝いている。
「我はここに宣言する!」
ステージの中心、先ほどまで青橋が喋っていた場所でマイクに向かって大声を上げた。
その瞬間、ステージの上部に設置された垂れ幕が下ろされる。紙吹雪と共に現れた文字は、
【バンキシャ部】
「我らはこの海常臨高校に蔓延る悪を一匹残らず成敗してみせる。この学校の闇を全て公にさらすのだ」
雷伝は拳を掲げて叫んだ。女子生徒の
乱入そして、謎の部活の発足宣言、伝統ある生徒総会はお祭り騒ぎになった。
これが生徒総会で起こった事件の全容である。
由緒正しいこの学校の校風は
――自主性
それに則り、生徒総会は教員の出席もなく、生徒のみで行われる。圧倒的な権威を盾に暴動、反乱、公序良俗に反する行為を徹底して、取り締まっていた生徒会があるからこそ成り立っている伝統的な集会。
だがそんな生徒総会で生徒会長のパンツ丸出しという空前の大事件が起こった。そして生徒会長のパンツにプリントされていたのは大人気子供番組の山芋マン……
この事件は未来永劫、海常臨高校に刻まれるであろう。
事は生徒総会、閉会挨拶。
凛とした立ち姿でマイクから美声を発したのは生徒会長、青橋星美《あおはしほしみ》である。
「これにて生徒総会を閉会いたします。生徒の皆さんは速やかに教室に戻ること。以上」
「ちょぉぉと待った!!」
皆が長時間の体育座りに疲れ、腰を伸ばす中、一人の女子生徒が叫び声を上げた。
雷伝未知留《らいでんみちる》。元アニメ部部長だった。
「ら、雷伝未知留!!」
生徒会長の惚けたような声がマイクに拾われる。すぐさま咳ばらいをし、皆に退場を求めた。
「あんな人の言葉など着ななくてよいです。だからとっとと教室に戻りなさい」
青橋はその女子生徒のことを知っていた。ただ一つ言えることは何をやり出すか分からないということだった。
追い詰められた人間の爆発力を計り知れない。
だが生徒たちに声は届いていない。いまはスピーカーから聞こえてくる美声よりも、へんてこな格好をして、喚いている一人の女子生徒のほうが注目の的なのだ。
雷伝はものもらいでもないのに眼帯をし、ブレザーに袖を通さずみ羽織っていた。手には包帯を巻き、中学生が付けるような指だしグローブをはめていた。
全校の耳目が集中する。こんなのは生まれて初めてだ。
「あ、青橋星美ぃぃ」
だんだんと声が小さくなる雷伝。顔を真っ赤にして、緊張に耐えられなくなった。
よくあんな堂々としゃべるな。生徒会長という奴は。少しだけ尊敬してしまったではないか。
「部長殿……皆が待っておりますぞ」
「だが我には荷が……」
「何を言っているでありますか、あなたがこの学校の英雄になるのでしょ」
震える足を温かい手で握り、グッドポーズで背中を押したのは、一風灯《ひとかぜともり》である。元アニメ部副部長で、数少ない雷伝の友人と呼べるだろう。
この女子生徒もおかしな着こなし? というかもはやコスプレをしている。学校の規定に沿っているのはもはやスカートのみ、ブラウスの上にはなぜか迷彩服を着ている。それだけではなく、軍隊で使用されているヘルメットまで被っている始末。
……完全に浮いていた。
しかしその思いは雷伝に届いたようだ。
〝英雄〟という言葉を聞いた瞬間、雷伝の目つきが変わった。
――そうか我は英雄なのだ。これは試練。ここでへこたれていては大銀河帝国の沽券にかかわる!
雷伝は再び大きく胸を張った。
「おい! 青橋星美!!」
「な、なんなのです……」
「いまからそのマイクを奪いに行くぞ」
雷伝がおもむろに走り出した。一般生徒たちをかき分けて、ステージに向かって猛ダッシュをしている。
「副会長、あの者を止めるのです!!」
だが副会長はじっとしたまま動かなかった。どこが違う方向を見て誤魔化している。
「ちょっと、あなた何を考えて……」
だが説教をしているどころではない。雷伝はもうすぐそこまで迫ってきているのだ。
「ミュージックカモン!」
ステージに駆け上がった雷伝は指を鳴らした。
すると体育館のスピーカーから爆音でロボットアニメのテーマ曲が流れる。それに合わせながら距離を詰め、青橋のバックを取った。
「あ、あなた何を!?」
「このクソアマが!!!!」
雷伝はそう叫びながら、青橋の胴体を持ち上げて、そのままジャーマンスープレックスを決めた。
完璧なホールドだった。
――ゴーンッ
という鈍い音と共にこの学校始まって以来明かされることのなかった生徒会長のパンツが白日の下にさらされる。
それと同時に、生徒会長が子供用のパンツ……その上、戦隊ヒーローの山芋マンがプリントされているパンツを履いていることが全校生徒に知れ渡ることとなったのだ。
「会長!!」
脇で見守っていた生徒会役員が一斉に叫んだ。
その中で唯一唖然としたまま鼻血を垂らしていたのは副会長だった。
あまりの恥辱に耐えられなくなった青橋はスカートの裾を押さえ、顔を真っ赤にし、そのまま泣き叫びながら逃げ帰ってしまった。
「許しませんことよ! 雷伝未知留!!」
「いい気味だよ。全く」
勝ち誇る雷伝。そして完璧のタイミングでテーマ曲が止まる。ステージの脇に隠れて、ラジカセのスイッチを押したのは元アニメ部の岩寺俊《いわてらしゅん》だった。
トレードマークの眼鏡が輝いている。
「我はここに宣言する!」
ステージの中心、先ほどまで青橋が喋っていた場所でマイクに向かって大声を上げた。
その瞬間、ステージの上部に設置された垂れ幕が下ろされる。紙吹雪と共に現れた文字は、
【バンキシャ部】
「我らはこの海常臨高校に蔓延る悪を一匹残らず成敗してみせる。この学校の闇を全て公にさらすのだ」
雷伝は拳を掲げて叫んだ。女子生徒の
乱入そして、謎の部活の発足宣言、伝統ある生徒総会はお祭り騒ぎになった。
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