一番のクズは…

蛭魔だるま

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私11

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彼は2、3日に一度は必ず家を訪ねてくるようになった。
 
飽きっぽい彼のことだ、すぐ来なくなると思っていたが意外と続いている。
 
我儘で自己中心的な彼、それは昔から変わらない。
 
でも、最近は私の我儘と言うか、私の言うことを割りと聞いてくれる。例えば、一緒にテレビを見ていて美味しそうと言えば次の日買ってきたり、雑誌の服に印をつけておけばいつの間に見たのか、その服を買ってきてくれたりした。
 
言うことを聞いてくれるというよりは、私の望みを勝手に叶えてくれるの方が合っているのかもしれない。
 
ただ、私がこの関係を終わらせたいと願えば、彼は嘘つくなよって笑って取り合ってはくれないのだ。
 
彼が男女問わずモテる理由が最近よくわかってきた。彼は人を良く見て、その人が望むものを提供するのだ。彼の仕事の成功もその眼があってこそかもしれない。
 
彼は私を自分の一番の理解者だと言う。
でも彼の気持ちも、夫の気持ちも全くわからなかった。
 
テーブルに二人分のコーヒーを置き、ソファに座る彼の隣に私も座った。
 
「ねぇ、もし私が夫と別れたいって言ったらどうする?」
 
「別れてぇの?」
 
私は左右に首を振った。
 
「そうじゃないけど…」
 
「生活も何不自由なく、お前の好きなちょうどいい距離感、顔も割とお前の好みだろ?」
 
「…そうだけど。私達の場合、距離感が遠くない?」
 
「色んな夫婦の形があるだろ」
 
「夫は私のこと好きなの?」
 
「あいつは自分の意思でお前を選んで、お前と結婚したんだよ」
 
彼は頭を優しく撫でてくれた。
 
「…私は彼のこと好き?」
 
彼は私の顎を掴み噛み付くかのようにキスをしてきた。
 
「お前が好きなのは俺でしょ?」
 
「ははは、そうだね、そうだったね」
 
よくわからない涙が出てきた。私が必死に隠してきたものが出てきてしまったようだ。
 
「もし、もしも私が夫と別れたとして、私のことまだ愛してくれる?」
 
彼はただ返事をせず私の頭を撫でるだけだった。
 
彼の中で私に魅力を感じるのは、あくまで私が誰かのものであるときだけなのだろう。
 
彼に捨てられないために、夫から捨てられないようにしないと。
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