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私8
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顔を掴まれ無理やり動画の方を向かされる。
『お前もさぁ、寂しかったんだろ?彼氏いなくて』
違うだろ。あんたを愛していたが故の犯行だろう。犯行とまではいかないだろうが。
『いや、ちがっ』
『な?』
『はい』
従兄の手口を見た気がする。人の気持ちを勝手に決め、否定させる間もなく認めさせる。
私の結婚もこんな風に決められたのだろう。 私の場合、この人のように自分の気持ちに気付いてさえいなかったが。
『でさぁ、お前にいい男を見つけてやったよ』
『え?え?』
スマホの画面を見せる。
『まあ俺も一夜を共にしたんだ。どんな奴がお前と合うかくらいはわかるよ』
『でも』
『3月15日、喫茶はなや。そこに行け』
女はゆっくりと首を左右に振る。
『俺への愛を示せ』
女の首がピタッと止まった。
『あの子も、同じか』
従兄は女の頬を思い切り叩いた。
『一緒にすんな』
今日一番低い声だった。
『なにが違うのよ、なにが』
また叩いた。女はたまらず泣き出す。
『お前には一生わかんねぇよ』
彼が撮影しているスマホに近づいて、ドアップになる。 そこで、動画は終わった。
「え、なにこれ」
「ちゃんとマナーを叩き込んでやったぜ動画」
「いや、マナーっていうか普通に平手打ちしてんじゃん。何この後味悪い動画」
「じゃあ次こっち」
スマホの誰かとのトーク画面を見せられた。
『ありがとうございました。本当に求めてた、理想の人です。彼女と幸せになります』
最後まで読むと彼の腕が伸びてきて、違う画面に変えられた。
『ありがとう、本当に、本当に。私も、幸せになれそうです』
この前の女と、見知らぬ男の、ツーショット画像も送られてきている。 男は女の肩に手を回し、2人は幸せそうな顔をしている。
『お前もさぁ、寂しかったんだろ?彼氏いなくて』
違うだろ。あんたを愛していたが故の犯行だろう。犯行とまではいかないだろうが。
『いや、ちがっ』
『な?』
『はい』
従兄の手口を見た気がする。人の気持ちを勝手に決め、否定させる間もなく認めさせる。
私の結婚もこんな風に決められたのだろう。 私の場合、この人のように自分の気持ちに気付いてさえいなかったが。
『でさぁ、お前にいい男を見つけてやったよ』
『え?え?』
スマホの画面を見せる。
『まあ俺も一夜を共にしたんだ。どんな奴がお前と合うかくらいはわかるよ』
『でも』
『3月15日、喫茶はなや。そこに行け』
女はゆっくりと首を左右に振る。
『俺への愛を示せ』
女の首がピタッと止まった。
『あの子も、同じか』
従兄は女の頬を思い切り叩いた。
『一緒にすんな』
今日一番低い声だった。
『なにが違うのよ、なにが』
また叩いた。女はたまらず泣き出す。
『お前には一生わかんねぇよ』
彼が撮影しているスマホに近づいて、ドアップになる。 そこで、動画は終わった。
「え、なにこれ」
「ちゃんとマナーを叩き込んでやったぜ動画」
「いや、マナーっていうか普通に平手打ちしてんじゃん。何この後味悪い動画」
「じゃあ次こっち」
スマホの誰かとのトーク画面を見せられた。
『ありがとうございました。本当に求めてた、理想の人です。彼女と幸せになります』
最後まで読むと彼の腕が伸びてきて、違う画面に変えられた。
『ありがとう、本当に、本当に。私も、幸せになれそうです』
この前の女と、見知らぬ男の、ツーショット画像も送られてきている。 男は女の肩に手を回し、2人は幸せそうな顔をしている。
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