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スルトの結婚
【50話】盗み聞き
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「スルト様、今日はお仕事お昼までとおっしゃっていましたのに…遅いですわね」
自称新婚生活順風満帆、多少普通ではないが、毎晩愛する夫と熱い夜を過ごしハッピーハッピーな毎日を送っているエリザベスは、その日もスルトの帰りを寝室で待っていた。
(なんだかんだ言って、スルト様は私のことを一番愛してくれていますわ。ええ、そうですとも。最近はケーゴの助けも最小限でできてますしっ。きっと近いうちにはケーゴなしでも私を求めてくれるようになるはずですわ。きっとそうです)
自らに言い聞かせるよう、ウンウンと頷く。エリザベスはスルトが帰ってくるのを出迎えようと部屋を出た。
圭吾の部屋の前を通り過ぎようとすると、ガタガタとドアが音を立てた。
「ん?」
「んっ、んん、ちょ、も、スルトっ!せめてベッドで…!」
「えっ?」
(ケーゴの声…よね…?今スルト様のお名前を呼んだ?)
「これ以上待てん」
(ス、スルト様の声?!もう帰っていらしたの?!ケーゴの部屋で何をしていらっしゃるの?!)
エリザベスはドアに耳を当てた。いやらしい音と圭吾の吐息が聞こえてくる。
(やだ、ケーゴったら、私を差し置いてスルト様とこんなお昼から!)
むぅ、と頬を膨らませてドアノブを掴む。
「…僕のこと、"俺以外の男"呼ばわりしたこと、怒ってるんだからね」
「む、なんのことだ?」
エリザベスの手がドアノブを回す。
「エリザベスが僕に初めて裸を見せた時言ってたじゃん」
「ああ、あれか。あれはお前が女性の体で興奮するところを見たくなかったからだ」
「なっ」
ドアノブを握る手が止まる。
(な…なんと言いましたスルト様…?ケーゴに私の裸を見せないのは、ケーゴに妻の裸を見せたくないからでしょう?)
「お前、女性と経験がないだろう?そんなやつがエリザベスの美しい体を見てみろ。抱きたいと思ってしまうだろう」
「いやそこまでは…まあ、確かにえっちだなあと思って勃っちゃいましたけど…」
「ほらみろ。俺とエドガー以外で反応することなど許さん」
(な、な…。では、目の敵にされていたのは私と言うことですの…?ケーゴを誘惑させないことしか、スルト様は考えていらっしゃらなかったの…?)
エリザベスは立ち尽くした。ドアの奥から圭吾とスルトが激しく求め合う声と音が響く。終わったと思えばまた遠くで圭吾の喘ぎ声が聞こえ始めた。
「エ、エリザベス様…」
彼女の様子を見ていたピーターがうろたえながら声をかける。しかしエリザベスは、ピーターに笑顔を向けた。
「私は大丈夫ですわよ。主人が複数の人と関係を持つなんて、貴族の間では普通のことでございましょう?」
「しかし…」
「護衛さん、スルト様の情事が終わりましたら、ケーゴに伝言をお願いいたしますわ。明日の夜、いつもより半時間早めに寝室へ来るようにと。スルト様には内緒にしておいてくださいまし」
「かしこまりました…」
エリザベスは会釈をしてから、自分の部屋へ戻って行った。
◇◇◇
スルトがエリザベスの待っている寝室に戻ったときには夜中を過ぎていた。おそるおそるドアを開けてこっそり中を覗く。エリザベスが椅子に腰かけてワインを飲んでいた。
「あら、お帰りなさいませ。スルト様」
「あ、ああ」
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですわよ。さあ、お座りくださいな」
スルトがびくびくしながら椅子に腰かける。エリザベスはにっこり笑ってグラスを手渡した。
「半日ケーゴと楽しんでいらっしゃいましたわね」
「ブッ」
「あ、いえ。責めているわけではございませんのよ!」
「すまない…」
「いいのですいいのです。私、いいことを考えたんですわ。きっとスルト様も楽しんでくださるわ」
「…何をするつもりだ?」
「それは明日のお楽しみですわ。ふふふ」
自称新婚生活順風満帆、多少普通ではないが、毎晩愛する夫と熱い夜を過ごしハッピーハッピーな毎日を送っているエリザベスは、その日もスルトの帰りを寝室で待っていた。
(なんだかんだ言って、スルト様は私のことを一番愛してくれていますわ。ええ、そうですとも。最近はケーゴの助けも最小限でできてますしっ。きっと近いうちにはケーゴなしでも私を求めてくれるようになるはずですわ。きっとそうです)
自らに言い聞かせるよう、ウンウンと頷く。エリザベスはスルトが帰ってくるのを出迎えようと部屋を出た。
圭吾の部屋の前を通り過ぎようとすると、ガタガタとドアが音を立てた。
「ん?」
「んっ、んん、ちょ、も、スルトっ!せめてベッドで…!」
「えっ?」
(ケーゴの声…よね…?今スルト様のお名前を呼んだ?)
「これ以上待てん」
(ス、スルト様の声?!もう帰っていらしたの?!ケーゴの部屋で何をしていらっしゃるの?!)
エリザベスはドアに耳を当てた。いやらしい音と圭吾の吐息が聞こえてくる。
(やだ、ケーゴったら、私を差し置いてスルト様とこんなお昼から!)
むぅ、と頬を膨らませてドアノブを掴む。
「…僕のこと、"俺以外の男"呼ばわりしたこと、怒ってるんだからね」
「む、なんのことだ?」
エリザベスの手がドアノブを回す。
「エリザベスが僕に初めて裸を見せた時言ってたじゃん」
「ああ、あれか。あれはお前が女性の体で興奮するところを見たくなかったからだ」
「なっ」
ドアノブを握る手が止まる。
(な…なんと言いましたスルト様…?ケーゴに私の裸を見せないのは、ケーゴに妻の裸を見せたくないからでしょう?)
「お前、女性と経験がないだろう?そんなやつがエリザベスの美しい体を見てみろ。抱きたいと思ってしまうだろう」
「いやそこまでは…まあ、確かにえっちだなあと思って勃っちゃいましたけど…」
「ほらみろ。俺とエドガー以外で反応することなど許さん」
(な、な…。では、目の敵にされていたのは私と言うことですの…?ケーゴを誘惑させないことしか、スルト様は考えていらっしゃらなかったの…?)
エリザベスは立ち尽くした。ドアの奥から圭吾とスルトが激しく求め合う声と音が響く。終わったと思えばまた遠くで圭吾の喘ぎ声が聞こえ始めた。
「エ、エリザベス様…」
彼女の様子を見ていたピーターがうろたえながら声をかける。しかしエリザベスは、ピーターに笑顔を向けた。
「私は大丈夫ですわよ。主人が複数の人と関係を持つなんて、貴族の間では普通のことでございましょう?」
「しかし…」
「護衛さん、スルト様の情事が終わりましたら、ケーゴに伝言をお願いいたしますわ。明日の夜、いつもより半時間早めに寝室へ来るようにと。スルト様には内緒にしておいてくださいまし」
「かしこまりました…」
エリザベスは会釈をしてから、自分の部屋へ戻って行った。
◇◇◇
スルトがエリザベスの待っている寝室に戻ったときには夜中を過ぎていた。おそるおそるドアを開けてこっそり中を覗く。エリザベスが椅子に腰かけてワインを飲んでいた。
「あら、お帰りなさいませ。スルト様」
「あ、ああ」
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですわよ。さあ、お座りくださいな」
スルトがびくびくしながら椅子に腰かける。エリザベスはにっこり笑ってグラスを手渡した。
「半日ケーゴと楽しんでいらっしゃいましたわね」
「ブッ」
「あ、いえ。責めているわけではございませんのよ!」
「すまない…」
「いいのですいいのです。私、いいことを考えたんですわ。きっとスルト様も楽しんでくださるわ」
「…何をするつもりだ?」
「それは明日のお楽しみですわ。ふふふ」
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