【完結】【R18BL】異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました

スルトの結婚

【４５話】もう僕だけの二人はいない

「ケーゴ、元気がないね」

エドガーがベッドに座って、布団にくるまっている僕に話しかける。元気が出るわけない。だって今日はスルトの結婚式だ。

「…つらいよね」

「つらくない。分かってたことだから」

「……」

「エドガーも結婚相手決まったもんね…」

「ああ、半年後に結婚する」

スルトも、エドガーも結婚してしまう。今までのように毎晩二人がここに来ることはもうなくなるだろう。いつの間にか、この世界に転移して５年が経っていた。５年間僕のものでいてくれた二人が、ちがう人のものになる。ここに来てからエドガーとスルトが僕の全てだった。これから僕はどうしていけばいいんだろう。

「…そろそろ、準備をしてくるね」

「…うん」

「ピーター、ケーゴを頼むよ」

「はいっ！」

エドガーの足音が廊下に消えていった。

「ピーター…」

「なんだ、ケイゴ」

「僕、後悔ばっかりしてるんだ」

ピーターがベッドに腰かけ、布団越しに僕の頭を撫でる。

「もっとさ、二人に優しくしておけばよかったなあとか。もっと素直になっとけばよかったなあとか」

「ケイゴはそのままが一番だよ。そんなケイゴのことを、エドガー様もスルト様も大好きだったんだから」

「二人が僕を好きだったのは、僕がΩだからだよ」

「それ、本気で言っているのか？そうだとしたら本気で怒るぞ」

「……」

「ケイゴ、お二人は今でもお前を一番愛しているぞ。断言する」

愛してる…。分かってる。エドガーも、スルトも、僕のこと愛してくれている。僕だって…。
でも、それでも僕たちは結ばれない。貴族と庶民だから。男と男だから。この世界だから…。

涙が溢れて仕方ない。前の世界では、こんなに人を好きになったことなんてなかった。こんな苦しい気持ち、知らなかった。でも、お互い想い合っているのに結ばれないのなら…出会わない方が良かった。

僕はこの城から追い出されることはないだろう。でも、それは地獄でしかない。