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こいつらめっちゃ僕のこと好きじゃん
【32話】この世で一番の天邪鬼
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そのあと、僕たちはまったりとした一日を一緒に過ごした。僕の淹れるお茶はそれほど上手じゃないけれど、エドガーは美味しそうに(というより嬉しそうに)飲んでくれた。
メイドがエドガーと僕のために朝食を持ってきてくれた。その朝食が豪華な事と言ったら。フルーツ、ポーチトエッグ、ソーセージ、トースト…数えきれないほどの品数がテーブルに並ぶ。エドガーって毎日こんな朝食とってたの?それであの体型保ってるの?どうなってんだよ。
朝食をとってから二人で城の庭を散歩した。久しぶりに外を気兼ねなく歩けて気持ち良かった。使用人たちの視線は非常に気になったけれども。
エドガーと僕は木の陰に座って休憩した。エドガーは僕の肩にもたれかかりながら本を読んでいる。この国の文字が読めなくてさっぱりだと言うと、エドガーが音読してくれたけど内容が難しすぎてものの1分で眠気が襲ってきた。
「ケーゴ、ケーゴ」
「ん…」
「外が肌寒くなってきたから部屋に戻ろう」
「えっ…?」
エドガーに肩を揺らして起こされる。いつの間にか眠ってしまったらしい。空を見上げると、日が暮れかけていた。木の陰で休憩し始めてから3時間ほど寝てしまっていたようだ。
「わっ、ごめんなさい!僕すっかり居眠りしちゃってて…」
「かまわないよ。寝息をたてているケーゴもかわいかったし。さあ、戻ろう」
エドガーが立ち上がり、服についた草を叩き落とす。そして僕に手を差し伸べて優しい笑みを浮かべた。やだ、王子様じゃん…。
再びエドガーの寝室へ戻り、次は豪華な夕食が用意された。見ているだけで胸焼けするほどの量だった。残してもいいと言われたので、食べたいものだけつまんでいく。エドガーはニコニコと僕を眺めていた。
夕食が下げられたあと、僕たちは早めの風呂に入りベッドの上でくつろいだ。エドガーは僕を腕枕しながら、昼に読んでいた本の続きを読んでいる。しばらくじっとエドガーの読書姿を眺めていたけど、さすがに暇になってきた。構えと言うのも癪だし、腕枕されている腕をきつく噛んでみた。
「いたっ!突然なにするんだケーゴ!」
「ひまだったから」
僕が不機嫌そうな声を出すと、少し驚いた顔をしてからなぜか表情をゆるめるエドガー。たまらなくなったのか僕をぎゅぅぅぅぅっと抱きしめた。
「ぐぁっ!エドガー!くるしい!」
「そうか!寂しかったんだねケーゴ!ごめんね!」
「そんなこと言ってない!」
「素直じゃないところもかわいいよケーゴ!」
「くそっ!ポジティブすぎるこいつ!」
「わあ!僕の腕にケーゴの歯形がついている!もっと噛んでいいよケーゴ!」
「むごぁっ」
エドガーがそう言って僕の口に腕を押し付けた。早く噛んで、ねえ噛んで、いやそんな優しくじゃなくてさ、さっきみたいにきつく噛んで、と興奮した様子で口走っている。僕思うだけどスルトよりエドガーの方が性癖歪んでるって絶対。遠慮がちに噛んだら逆に怒るんだよ?それじゃ歯形がつかないって。このひと本気で頭おかしいと思う。
半ば無理矢理エドガーの腕を何度も噛まされたあと、この変態は信じられないことを言った。
「ケーゴ、僕に歯形を付けたんだから、僕もケーゴに歯形をつけていいよね?」
ついに脳み溶けたの?それとも僕の耳が壊れたのかな?
「エドガー、ちょっと意味がわからない」
「ほら、ケーゴ。腕貸してごらん」
「噛まれるって分かってて誰が腕を貸すと思うの?!」
まあね、僕がなにを言ったってね。無駄なんですよ。はい、分かってます。
しっかり鍛えられたエドガーの握力に僕の細腕が勝てるわけない。強引に腕を口元に持っていかれ、エドガーの歯が触れた。
「い"だい"い"だい"い"だい"い"だい"!!!」
噛みちぎられるかと思った。しかもこの人、僕の腕を噛みながらギリギリ歯ぎしりした。
「見てケーゴ、くっきりと歯形がついたよ!」
「そりゃ付くでしょうよ!あんなにギリギリやられたらさあ!」
「わー、感動するなあ」
「もうツッコむことに疲れた…天然サイコパスの相手するの疲れた…」
「疲れたのかい?もう寝る?」
「寝ようかな…」
「分かった。明かり消すね」
エドガーが指示すると、メイドが部屋の明かりを消した。昨晩と同じようにエドガーに抱きしめられながら布団に入る。エドガーは僕をあやすように背中を優しく叩く。しばらくして小さな声で話で僕に話しかけた。
「ケーゴ、僕考えたんだけど」
「ん?」
「君はスルトと番になるべきだと思う」
「…え?」
僕は思わずエドガーを見た。暗いから表情が見えない。
「番ができたら、番以外にあの甘い匂いはしなくなるんだよね?」
「…はい」
「昨日みたいな辛い思い、したくないでしょ?」
「はい、でも。僕は番ができたら他の人と関係を持てなくなります」
「…そう言っていたね」
「もちろんエドガーともですよ。それを分かって言ってるんですか?」
「ああ」
「……」
エドガーは僕のことを本当に大切に思ってくれているんだとその時確信した。自分と関係を持てなくなってでも、僕の安全を優先しようとしてくれている。
でもエドガー、僕はこの世で一番の天邪鬼なんだ。
「却下」
「え?」
「僕はスルトと番にならない」
「どうしてだい?確かにスルトは自分勝手だが、あれでなかなか良い奴だよ。それに貴族だし…」
「スルトが良い奴なのは知ってます。あと貴族とかどうでもいいです」
「どうしてスルトじゃだめなんだい?」
「エドガー、まさか本気でそれ言ってます?」
「え…?」
「僕、わがままなんですよ。僕がスルト一人で満足すると思いますか?僕はスルトとあなたの両方が欲しいんですよ。一人だけのものになんてなりません」
「ケーゴ…」
「まあお二人が僕に飽きるまでですが…」
息を巻いてまくしたてたのはいいけど、途中で自信がなくなってきて声が徐々に小さくなる。そんな僕をエドガーがまたきつく抱きしめた。
「ぐぼぁっ」
「君はまた、苦しい発情期を迎えるけれど、それでいいのかい?」
「はい。あなたを失うよりずっとましです」
だからエドガー。そんなこと言わないで。本音じゃないのなんてすぐ分かる。不安げに、震える声でそんなこと言われたって、僕が許すわけないじゃないか。僕のために、スルトのために、勝手に僕をスルトに譲ろうとするなんて、そんなの絶対許さない。
Ωはαと番になるために生まれてきたと思っていた僕が。Ωがβと関係を持つなんてバカらしいと思ってた僕が、まさかこんな風に思うようになるなんて。死ぬ前までは…エドガーと出会うまでは、思いもしなかった。それに気付かせてくれたエドガーを、僕が手放すわけないじゃん。
メイドがエドガーと僕のために朝食を持ってきてくれた。その朝食が豪華な事と言ったら。フルーツ、ポーチトエッグ、ソーセージ、トースト…数えきれないほどの品数がテーブルに並ぶ。エドガーって毎日こんな朝食とってたの?それであの体型保ってるの?どうなってんだよ。
朝食をとってから二人で城の庭を散歩した。久しぶりに外を気兼ねなく歩けて気持ち良かった。使用人たちの視線は非常に気になったけれども。
エドガーと僕は木の陰に座って休憩した。エドガーは僕の肩にもたれかかりながら本を読んでいる。この国の文字が読めなくてさっぱりだと言うと、エドガーが音読してくれたけど内容が難しすぎてものの1分で眠気が襲ってきた。
「ケーゴ、ケーゴ」
「ん…」
「外が肌寒くなってきたから部屋に戻ろう」
「えっ…?」
エドガーに肩を揺らして起こされる。いつの間にか眠ってしまったらしい。空を見上げると、日が暮れかけていた。木の陰で休憩し始めてから3時間ほど寝てしまっていたようだ。
「わっ、ごめんなさい!僕すっかり居眠りしちゃってて…」
「かまわないよ。寝息をたてているケーゴもかわいかったし。さあ、戻ろう」
エドガーが立ち上がり、服についた草を叩き落とす。そして僕に手を差し伸べて優しい笑みを浮かべた。やだ、王子様じゃん…。
再びエドガーの寝室へ戻り、次は豪華な夕食が用意された。見ているだけで胸焼けするほどの量だった。残してもいいと言われたので、食べたいものだけつまんでいく。エドガーはニコニコと僕を眺めていた。
夕食が下げられたあと、僕たちは早めの風呂に入りベッドの上でくつろいだ。エドガーは僕を腕枕しながら、昼に読んでいた本の続きを読んでいる。しばらくじっとエドガーの読書姿を眺めていたけど、さすがに暇になってきた。構えと言うのも癪だし、腕枕されている腕をきつく噛んでみた。
「いたっ!突然なにするんだケーゴ!」
「ひまだったから」
僕が不機嫌そうな声を出すと、少し驚いた顔をしてからなぜか表情をゆるめるエドガー。たまらなくなったのか僕をぎゅぅぅぅぅっと抱きしめた。
「ぐぁっ!エドガー!くるしい!」
「そうか!寂しかったんだねケーゴ!ごめんね!」
「そんなこと言ってない!」
「素直じゃないところもかわいいよケーゴ!」
「くそっ!ポジティブすぎるこいつ!」
「わあ!僕の腕にケーゴの歯形がついている!もっと噛んでいいよケーゴ!」
「むごぁっ」
エドガーがそう言って僕の口に腕を押し付けた。早く噛んで、ねえ噛んで、いやそんな優しくじゃなくてさ、さっきみたいにきつく噛んで、と興奮した様子で口走っている。僕思うだけどスルトよりエドガーの方が性癖歪んでるって絶対。遠慮がちに噛んだら逆に怒るんだよ?それじゃ歯形がつかないって。このひと本気で頭おかしいと思う。
半ば無理矢理エドガーの腕を何度も噛まされたあと、この変態は信じられないことを言った。
「ケーゴ、僕に歯形を付けたんだから、僕もケーゴに歯形をつけていいよね?」
ついに脳み溶けたの?それとも僕の耳が壊れたのかな?
「エドガー、ちょっと意味がわからない」
「ほら、ケーゴ。腕貸してごらん」
「噛まれるって分かってて誰が腕を貸すと思うの?!」
まあね、僕がなにを言ったってね。無駄なんですよ。はい、分かってます。
しっかり鍛えられたエドガーの握力に僕の細腕が勝てるわけない。強引に腕を口元に持っていかれ、エドガーの歯が触れた。
「い"だい"い"だい"い"だい"い"だい"!!!」
噛みちぎられるかと思った。しかもこの人、僕の腕を噛みながらギリギリ歯ぎしりした。
「見てケーゴ、くっきりと歯形がついたよ!」
「そりゃ付くでしょうよ!あんなにギリギリやられたらさあ!」
「わー、感動するなあ」
「もうツッコむことに疲れた…天然サイコパスの相手するの疲れた…」
「疲れたのかい?もう寝る?」
「寝ようかな…」
「分かった。明かり消すね」
エドガーが指示すると、メイドが部屋の明かりを消した。昨晩と同じようにエドガーに抱きしめられながら布団に入る。エドガーは僕をあやすように背中を優しく叩く。しばらくして小さな声で話で僕に話しかけた。
「ケーゴ、僕考えたんだけど」
「ん?」
「君はスルトと番になるべきだと思う」
「…え?」
僕は思わずエドガーを見た。暗いから表情が見えない。
「番ができたら、番以外にあの甘い匂いはしなくなるんだよね?」
「…はい」
「昨日みたいな辛い思い、したくないでしょ?」
「はい、でも。僕は番ができたら他の人と関係を持てなくなります」
「…そう言っていたね」
「もちろんエドガーともですよ。それを分かって言ってるんですか?」
「ああ」
「……」
エドガーは僕のことを本当に大切に思ってくれているんだとその時確信した。自分と関係を持てなくなってでも、僕の安全を優先しようとしてくれている。
でもエドガー、僕はこの世で一番の天邪鬼なんだ。
「却下」
「え?」
「僕はスルトと番にならない」
「どうしてだい?確かにスルトは自分勝手だが、あれでなかなか良い奴だよ。それに貴族だし…」
「スルトが良い奴なのは知ってます。あと貴族とかどうでもいいです」
「どうしてスルトじゃだめなんだい?」
「エドガー、まさか本気でそれ言ってます?」
「え…?」
「僕、わがままなんですよ。僕がスルト一人で満足すると思いますか?僕はスルトとあなたの両方が欲しいんですよ。一人だけのものになんてなりません」
「ケーゴ…」
「まあお二人が僕に飽きるまでですが…」
息を巻いてまくしたてたのはいいけど、途中で自信がなくなってきて声が徐々に小さくなる。そんな僕をエドガーがまたきつく抱きしめた。
「ぐぼぁっ」
「君はまた、苦しい発情期を迎えるけれど、それでいいのかい?」
「はい。あなたを失うよりずっとましです」
だからエドガー。そんなこと言わないで。本音じゃないのなんてすぐ分かる。不安げに、震える声でそんなこと言われたって、僕が許すわけないじゃないか。僕のために、スルトのために、勝手に僕をスルトに譲ろうとするなんて、そんなの絶対許さない。
Ωはαと番になるために生まれてきたと思っていた僕が。Ωがβと関係を持つなんてバカらしいと思ってた僕が、まさかこんな風に思うようになるなんて。死ぬ前までは…エドガーと出会うまでは、思いもしなかった。それに気付かせてくれたエドガーを、僕が手放すわけないじゃん。
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