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ちょっと前まで処女だったのにね

【9話】兄弟の会話

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「なあエドガー」

「なんだいスルト」

圭吾が城で住み始めて約1週間が経った頃、スルトが真剣な表情でエドガーの部屋を訪れた。いつも座っているソファへ腰かけ、両手を口元で組みながらボソボソと話し始めた。

「…こんな気持ちになったのは初めてだ」

「ん?突然なんの話かな」

「ケーゴだよ。あいつは一体何者なんだ。言葉は流暢に話すのに、この国のことを何も知らない。文字も読めない。だがバカではない。…口は悪いが」

「さあね。隣国のスパイかもしれないと探らせたが、どうもそうではないらしい。危険な人には見えないが」

「お前がそう言うなら大丈夫なんだろうな」

「僕の勘は外れたことがないからね」

「……」

スルトが黙り込んでしまう。エドガーはコインを弄びながら弟の様子を伺った。彼が考えていることはだいたい察しがついている。しばらく待っていたが、一向に口を開かないのでエドガーから切り出した。

「ケーゴのような人ははじめてだね」

「…ああ」

「体質や体の具合の良さだけじゃなくて、性格や僕たちへの接し方も」

「…そうだな」

「それに対してなにか思うところが?」

「……」

「……」

「…ケーゴは、俺に媚びないんだ」

「そうだね。僕にも媚びない」

「口が悪い」

「あんな口が悪い子ははじめてだね」

「…一緒にいて、とても心地がいい」

「…そうだね。僕もだよ」

「ケーゴの前では、貴族ということを忘れ、ただの俺としていられる」

「うん」

「まだ出会ってから一週間ほどしか経っていないのに…。ただの町で拾った男娼のはずなのに。この城にいる誰よりも…惹かれてしまう」

「ふふ。やっぱりそうだよね。僕と君は好みが同じだから、そうなってしまうよね」

「ではエドガーも?」

「そうだね。自分でも信じられないが…ずっと傍においておきたいと思うよ」

「そうか。ふふ」

「嬉しそうだねスルト」

「いや…。お前がそういうなら間違いないと思ってな。こんな気持ちになったのが初めてだったから不安だったんだ。よかった」

「よかったって…。同じ子を気に入ってしまったんだから、もう少し他になにかあるんじゃないのかい?」

「どうして?二人でケーゴをかわいがればいいじゃないか」

「まあ、そうか…?」

「どうせ俺たちは、貴族の女性と結婚しなきゃいけないんだ。それまでの時間を…3人で楽しめばいい」

「…そうだね」

「ケーゴが貴族の女性だったならよかったのにな」

「残念。正反対だね」

「だがだからこそ、お前と2人でかわいがれる。それはそれでいいのかもな」

「そういうものなのかな」

「…そういうものさ」
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