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スルトの結婚
【44話】エリザベス
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城の前に一台の馬車が止まる。スルトが馬車から降りると、一人の女性が駆け寄ってきた。
「スルト様!お待ちしておりました!」
「エリザベス。押しかけてすまない」
「とんでもないですわ!さあ、中へ」
エリザベスはスルトの腕に抱きついて、彼を城の中へ招いた。城ではエリザベスの両親がスルトを歓迎した。
「スルト様。わざわざお越しくださり恐縮でございます」
「侯爵、ご無沙汰しております。お元気そうで」
「そりゃあ、娘の想い人がわざわざ隣国に足を運んでくださって、元気じゃないわけがない。今日はゆっくりとお過ごしください」
「ありがとうございます」
「スルト様!あちらでゆっくりとお話いたしましょう!」
スルトとエリザベスは、茶を飲んだり食事をしたり、まったりとした一日を過ごした。エリザベスは終始上機嫌で笑顔が絶えなかった。
日が暮れ、二人はしっとりと酒を飲む。スルトはまわりに人がいないことを確認したあと、重い口を開いた。
「エリザベス。聞いてほしいことがある」
「まあ、なんですの?」
「君にとってかなり苦しい話になる。これを聞いてから、俺と結婚をするかどうか決めてほしい。そうでないと、俺は君を必ず不幸にする」
「…聞きますわ」
スルトはしばらく言葉が出なかった。スルトは決してエリザベスの事を嫌いなわけではない。むしろ、好感を持っている。そんな彼女を必ず傷付けてしまうことを、今から言わなければいけない。
「……」
「スルト様。ゆっくりでいいですわ」
「すまない…」
「どうぞ、おっしゃってくださいな」
「…俺は…不能に近いんだ」
「…はい?」
「…二度言わせないでくれ…」
予想外の言葉にエリザベスの口がぽかんと開く。
「で、でも、信じられませんわ。だって、噂ですと、スルト様はかなり…その…。私の口からは言えませんけれど…。とにかく、かなり元気だと聞いておりますわ」
「隣国にまでそんな噂が伝わっているのか…」
かぁっと顔を赤らめるスルト。エリザベスは(か、かわいいですわ!スルト様ぁ!)と心の中で叫ぶ。
「お気に入りの子と毎晩楽しんでいらっしゃると聞いておりますわ!」
「どこからそんな噂が流れているのだ!ダダ洩れではないかっ!」
「ええ。ええ。だからご冗談はおやめください。スルト様が、その、ね?そんなわけございませんでしょう?」
「いや、エリザベス。実はな…。俺は、君の言う"お気に入りの子"にしか反応せんのだ」
「あら、まぁ…」
確かに、エリザベス独自の情報網で掴んだ話では、スルトはここ数年同じ男娼としか寝ていないということだった。
「まさか、スルト様は男色家でございますの?」
「そういうわけではない。他の男には反応しない」
スルトが、はぁと深いため息をつく。
「エリザベス。俺たちが結婚をするとなれば、もちろん子を成さねばならん。しかし俺はこんな状態だ。君の前できちんと機能するかどうか…」
(え、これ遠回しにフラれてませんこと?!私からお断りの言葉を言わせようと思っていますのスルト様?!そんなの絶対いやですわ!!必死にお父様にお願いしてここまで漕ぎつけたんですわよ?!相手は所詮男娼でございましょう?!この美しく豊満な躰を持つわたくしが、男娼なんかに負けるわけがありませんわ!!)
エリザベスはガッとスルトの手を握る。そして今まで何人もの男性を惚れさせてきた笑顔を見せた。
「スルト様。それでも構いませんわ。わたくし、がんばりますから。それでもダメでしたら、その時に考えましょう?」
「エリザベス…」
(スルト様は私のものですわ!!ああ、このキリッとした瞳、薄い唇、高い鼻!がっしりした胸板…!ああ、はやくスルト様と結婚したい!私の躰で悦ぶスルト様を早く見たい!!ああ、スルト様!)
「もうひとつ、ワガママを言っていいか?」
「ええ、なんなりとどうぞ」
「俺はお気に入りを手放す気はない。それでもいいのか?」
(はあああ?!ダメに決まってますでしょう?!スルト様は私だけのものでしょう?!なぜそこまで男娼にこだわるのですスルト様?!…落ち着くのよエリザベス。こんなことを言うのもはじめだけよ。きっとすぐに私に虜になってしまいますわ。今までのバカな男たちと同じでね)
「ええ、もちろんですわ。スルト様と結婚できるのであれば、なんだって許せます」
「結婚前に、こんなひどい話をしてしまってすまなかった。これを言わないと騙しているような気分になってな。いてもたってもいられなくて、ここに来てしまった」
(なんて律儀!!なんて真っすぐな方なの?!素敵すぎますわさすが私が選んだお方!!だいすき今すぐ抱いてほしい!!今すぐ結婚したい!!スルト様ぁ!!だいすきいいいい!!)
「スルト様!お待ちしておりました!」
「エリザベス。押しかけてすまない」
「とんでもないですわ!さあ、中へ」
エリザベスはスルトの腕に抱きついて、彼を城の中へ招いた。城ではエリザベスの両親がスルトを歓迎した。
「スルト様。わざわざお越しくださり恐縮でございます」
「侯爵、ご無沙汰しております。お元気そうで」
「そりゃあ、娘の想い人がわざわざ隣国に足を運んでくださって、元気じゃないわけがない。今日はゆっくりとお過ごしください」
「ありがとうございます」
「スルト様!あちらでゆっくりとお話いたしましょう!」
スルトとエリザベスは、茶を飲んだり食事をしたり、まったりとした一日を過ごした。エリザベスは終始上機嫌で笑顔が絶えなかった。
日が暮れ、二人はしっとりと酒を飲む。スルトはまわりに人がいないことを確認したあと、重い口を開いた。
「エリザベス。聞いてほしいことがある」
「まあ、なんですの?」
「君にとってかなり苦しい話になる。これを聞いてから、俺と結婚をするかどうか決めてほしい。そうでないと、俺は君を必ず不幸にする」
「…聞きますわ」
スルトはしばらく言葉が出なかった。スルトは決してエリザベスの事を嫌いなわけではない。むしろ、好感を持っている。そんな彼女を必ず傷付けてしまうことを、今から言わなければいけない。
「……」
「スルト様。ゆっくりでいいですわ」
「すまない…」
「どうぞ、おっしゃってくださいな」
「…俺は…不能に近いんだ」
「…はい?」
「…二度言わせないでくれ…」
予想外の言葉にエリザベスの口がぽかんと開く。
「で、でも、信じられませんわ。だって、噂ですと、スルト様はかなり…その…。私の口からは言えませんけれど…。とにかく、かなり元気だと聞いておりますわ」
「隣国にまでそんな噂が伝わっているのか…」
かぁっと顔を赤らめるスルト。エリザベスは(か、かわいいですわ!スルト様ぁ!)と心の中で叫ぶ。
「お気に入りの子と毎晩楽しんでいらっしゃると聞いておりますわ!」
「どこからそんな噂が流れているのだ!ダダ洩れではないかっ!」
「ええ。ええ。だからご冗談はおやめください。スルト様が、その、ね?そんなわけございませんでしょう?」
「いや、エリザベス。実はな…。俺は、君の言う"お気に入りの子"にしか反応せんのだ」
「あら、まぁ…」
確かに、エリザベス独自の情報網で掴んだ話では、スルトはここ数年同じ男娼としか寝ていないということだった。
「まさか、スルト様は男色家でございますの?」
「そういうわけではない。他の男には反応しない」
スルトが、はぁと深いため息をつく。
「エリザベス。俺たちが結婚をするとなれば、もちろん子を成さねばならん。しかし俺はこんな状態だ。君の前できちんと機能するかどうか…」
(え、これ遠回しにフラれてませんこと?!私からお断りの言葉を言わせようと思っていますのスルト様?!そんなの絶対いやですわ!!必死にお父様にお願いしてここまで漕ぎつけたんですわよ?!相手は所詮男娼でございましょう?!この美しく豊満な躰を持つわたくしが、男娼なんかに負けるわけがありませんわ!!)
エリザベスはガッとスルトの手を握る。そして今まで何人もの男性を惚れさせてきた笑顔を見せた。
「スルト様。それでも構いませんわ。わたくし、がんばりますから。それでもダメでしたら、その時に考えましょう?」
「エリザベス…」
(スルト様は私のものですわ!!ああ、このキリッとした瞳、薄い唇、高い鼻!がっしりした胸板…!ああ、はやくスルト様と結婚したい!私の躰で悦ぶスルト様を早く見たい!!ああ、スルト様!)
「もうひとつ、ワガママを言っていいか?」
「ええ、なんなりとどうぞ」
「俺はお気に入りを手放す気はない。それでもいいのか?」
(はあああ?!ダメに決まってますでしょう?!スルト様は私だけのものでしょう?!なぜそこまで男娼にこだわるのですスルト様?!…落ち着くのよエリザベス。こんなことを言うのもはじめだけよ。きっとすぐに私に虜になってしまいますわ。今までのバカな男たちと同じでね)
「ええ、もちろんですわ。スルト様と結婚できるのであれば、なんだって許せます」
「結婚前に、こんなひどい話をしてしまってすまなかった。これを言わないと騙しているような気分になってな。いてもたってもいられなくて、ここに来てしまった」
(なんて律儀!!なんて真っすぐな方なの?!素敵すぎますわさすが私が選んだお方!!だいすき今すぐ抱いてほしい!!今すぐ結婚したい!!スルト様ぁ!!だいすきいいいい!!)
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