上 下
45 / 72
一年:三学期~学年末考査

第三十九話

しおりを挟む
 ◆◆◆
 (凪side)


 俺はあいつらと同じになりたくない。
 自分の感情だけで理玖の体を好き勝手したような、あんなヤツらなんかと。

 だから自分から触れるのをやめた。

 それにはもうひとつ理由があった。
 理玖の過去を知ってから、理玖をめちゃくちゃにしたいという欲望に駆られるようになった。
 俺の意思とは関係なく、理玖を自分だけのものにしたいという感情に支配されるようになった。

 そんな自分が怖かった。
 理玖に嫌われるのが怖かった。

 はじめは軽い気持ちだった。
 ちょっとゲームに付き合ってもらおうって、その程度だった。
 それがいつしか俺たちは……いや、俺は……引き返せないところまで来てしまっていたようだ。

 〝学年二位が学年一位の言うことをなんでも聞く〟
 こんな関係、さっさとやめなきゃいけない。
 理玖のためにも、俺のためにも。

 こんな関係やめよう。そう決意した。自分から触れるのもやめた。
 だが情けないことに俺は、理玖を完全に手放すことができなかった。
 今もだらだらと理玖の家に入り浸り、理玖から触れてくれるのを期待している。

 あの日から理玖は変わった。
 理玖からキスをしてくれるようになった。それに、エロいこともおねだりしてくれるようになった。

 俺を求める理玖の姿が、少し前までの自分と重なった。
 辛いことを忘れるため、ごまかすために、誰とでもいいから触れ合っていたいと思っていたときの俺と。

 そんな理玖の姿が愛しくて、それと同じくらい切なかった。

 理玖から離れないと。こんな関係を続けていても、残るのは虚しさだけだ。何度頭の中でそう思ったことだろう。

 テスト一週間前に、友だちが遊びに誘ってくれたのはちょうどよかった。
 それなのに俺は、遊びの帰りに理玖の家に向かっていた。ほんと、自分の意思の弱さに呆れるよ。

(せめて……)

 せめてセックスはやめよう。理玖に誘われても断ろう。でもたぶん、そのときになったら決心が揺らぐだろうと分かっていた。
 だから俺はコンドームを買わずに家に行ったんだ。これなら物理的にセックスできないだろうから、さすがの俺でも諦めがつくだろうって思って。

「なくても……挿れたらいいじゃん」

 なんて、そんなことを言われるとは夢にも思っていなかった。

「……はぁぁぁ……」

 理玖、君は気付いていないだろうけど。
 俺は君にとってとんでもなく危険な存在なんだよ。

 俺がどんな思いで、君の顔に精液をぶっかけたいっていう欲求を抑え込んでいると思う?
 顔どころじゃない。理玖の全身に俺の精液塗り込んで、マーキングしたいって思っているんだぞ。異常だろ。

 理玖が、前の席のクラスメイトからプリントを受け取っているだけで、頭に血が上るんだぞ。
 この前、友人Cと一言二言こそこそ会話していたよな。それだって俺は、全身が震えるほど嫉妬していた。

 感情に振り回されることなんて、今まで一度もなかったのに。
 自分で自分が怖いんだ。理玖に何をしてしまうか、自分でも分からないんだ。

 理玖と直に触れ合うセックスは、気が狂いそうなほど気持ちよかった。
 実際、そのときの俺は正気じゃなかった。

「理玖……中に出していい……?」

 精液がこぼれる理玖のアナルを見て、ざっと血の気が引いた。
 とうとうしてしまった。しかも、顔射よりもひどいことをやってしまった。

 妊娠しないとかそういう話じゃない。
 理玖の体の中を、俺の精液で汚してしまったんだ。

 理玖。だめだよ。中出しされてそんな嬉しそうな顔しちゃ。
 ヤバいヤツに付け込まれて、離してもらえなくなるぞ。

 離れなきゃ。離れたくない。ずっと頭の中の俺が言い争っている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

プロデューサーの勃起した乳首が気になって打ち合わせに集中できない件~試される俺らの理性~【LINE形式】

あぐたまんづめ
BL
4人の人気アイドル『JEWEL』はプロデューサーのケンちゃんに恋してる。だけどケンちゃんは童貞で鈍感なので4人のアプローチに全く気づかない。思春期の女子のように恋心を隠していた4人だったが、ある日そんな関係が崩れる事件が。それはメンバーの一人のLINEから始まった。 【登場人物】 ★研磨…29歳。通称ケンちゃん。JEWELのプロデューサー兼マネージャー。自分よりJEWELを最優先に考える。仕事一筋だったので恋愛にかなり疎い。童貞。 ★ハリー…20歳。JEWELの天然担当。容姿端麗で売れっ子モデル。外人で日本語を勉強中。思ったことは直球で言う。 ★柘榴(ざくろ)…19歳。JEWELのまとめ役。しっかり者で大人びているが、メンバーの最年少。文武両道な大学生。ケンちゃんとは義兄弟。けっこう甘えたがりで寂しがり屋。役者としての才能を開花させていく。 ★琥珀(こはく)…22歳。JEWELのチャラ男。ヤクザの息子。女たらしでホストをしていた。ダンスが一番得意。 ★紫水(しすい)…25歳。JEWELのお色気担当。歩く18禁。天才子役として名をはせていたが、色々とやらかして転落人生に。その後はゲイ向けAVのネコ役として活躍していた。爽やかだが腹黒い。

配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!

ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて 素の性格がリスナー全員にバレてしまう しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて… ■ □ ■ 歌い手配信者(中身は腹黒) × 晒し系配信者(中身は不憫系男子) 保険でR15付けてます

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

処理中です...