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一年:冬休み

第三十一話

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 ◇◇◇
(回想 中学時代 修学旅行)

 修学旅行一日目が終わった。あとは先生に隠れてはしゃぐだけだ。

「りーくっ。風呂の番来たって! 入ろうぜ~」
「あっ、うん!」

 修学旅行を一緒に行動しているグループのリーダー、正弥(まさや)がお風呂に誘ってくれた。僕と同じグループのメンバーも一緒に大衆浴場に向かう。

「今日は楽しかったなー! 理玖はなにが一番楽しかった?」
「僕? 僕はねーー」

 なんて、他愛もない会話をしながら更衣室で服を脱いでいた。

「……」
「……?」

 急に正弥が静かになった。僕の体をじろじろ見てから、他のメンバーと目を見合わせる。

「どうしたの?」
「いや? 別に? ほら、早く入ろうぜ」
「う、うん」

 そのときからメンバーの間に変な空気が流れはじめた気がした。

 体を洗うとき、両隣にメンバーが腰掛けた。他にもたくさん空いている場所があるのに、なんでそんなにキツキツに座るんだろう……。むさくるしいなあ。

 髪を洗い終えたあたりで、正弥が僕に声をかけた。

「理玖、体洗ってやろうか」
「え? いいの?」
「おう。あとで俺のも洗ってくれよ」
「うん、いいよ」

 僕は正弥に背を向けた。人に背中を洗ってもらうのって気持ちいいなあ。

「お力加減いかがですかー」
「はい、気持ちいいですー」
「お背中流しまーす」
「はあい」

 背中を洗ってもらったので、振り返ろうとしたんだけれど……

「ひゃっ!?」

 正弥の手が前に伸びてきた。

「まだ背中終わっただけじゃん。前も洗わないと」
「い、いいよ前は。自分で洗うよ」
「遠慮すんなって」
「んぃ……」

 親切を無下にするのも申し訳ない。恥ずかしかったけど、僕は親切に甘えることにした。

「あっ」
「ん? どうした?」
「な、なんでもない……」

 正弥の指が乳首に当たって、変な声が出てしまった。

「っ、っ……っ~~……、っ……」

 なんか、変だ。
 タオルで洗ってくれているはずなのに、正弥の指が不自然のなほど僕の肌に触れてくる。特に乳首にカリカリと爪が引っかかって、声が出そうになるのを必死でこらえた。

「あっ!?」

 乳首を指でつままれて、思わず声が漏れた。

「ちょ、ちょっと、何してんの!?」
「あ、あはは。ごめん。ちょっとふざけた」
「もう。やめてよ」
「悪かったって。じゃ、下も洗うぞー」
「え!?」

 正弥の手がおなかを通って、僕のペニスを軽く握った。

「なっ、なにしてっ」
「そりゃお前、ちんこもちゃんと洗わないといけないだろ? タオルで洗ったら傷付くから、手で洗ってやるんじゃねえか」
「い、いいよっ、ここは自分で洗うから!!」
「いいっていいって。あとでお前も俺のちんこ洗ってくれたらいいから」
「んっ……んんん~~……」

 ここで断ったら嫌われるかもしれない。そう思うとノーと言うことができなかった。

 やっと正弥の手が離れたときには、僕のペニスは勃ってしまっていた。恥ずかしい。
 正弥はニヤニヤしながら、自分のペニスを指さした。正弥のペニスも勃っている。
 それどころか……僕が正弥に体を洗われているところを見ていた他のメンバーも、みんな勃起していた。

「理玖。今度は俺の番。ほら」
「……」

 嫌われたくない。ここで嫌われたら、僕は修学旅行で一人ぼっちになってしまう。
 だから、いわれるがまま、僕は正弥のペニスを握った。
 正弥だけじゃない。正弥のペニスを洗い終えたら、次のメンバーが僕にペニスを洗わせた。メンバーみんなが、僕にペニスを握らせた。

 お風呂を上がって寝室に戻った。寝室はグループごとに一部屋割り振られている。
 五つ並べられた布団の真ん中で、僕は着物を剝ぎ取られた。

「なに!? なにしてんの!? やめてっ!!」

 メンバーに手足を押さえつけられているせいで、いくら暴れてもたいした抵抗にはならない。
 正弥は僕のおしりをぺちんと叩き、興奮気味に言った。

「大丈夫大丈夫。気持ちいいことしかしねえから」
「いやっ、やめてっ、やめてってばぁ!!」

 正弥は僕のペニスを握り、激しく動かした。

「あぁぁぁ……っ!?」
「はは。こーんな女みたいな顔して、女みたいな体してんのに……ちんこ付いてんだもんな。信じらんねえ」

 僕の手足を押さえつけているメンバーたちが、口々に何かを言っている。

「あー、やっと好き勝手できる」
「修学旅行の目的、これみたいなもんだったよな」
「ぎゃはは。分かるー。他のヤツらもたぶんそうだったよな。理玖の取り合い」
「俺らのグループに来てくれてありがとね、理玖ちゃんっ」

 友だちだと思っていた。この人たちのことも。クラスメイトのことも……
 僕と仲良くしてくれる人、みんな。

 違ったんだ。
 みんな僕にこういうことしたくて、仲良いフリをしていただけだったんだ。

「おわ。泣いてる」
「泣いてる顔も可愛すぎてだな……。逆効果なんだが」
「泣いてんのにちんこ勃ててんのかわいー」

 正弥は僕の顔に精液をかけた。他のメンバーも、僕の体に向けて射精した。
 そういうのも、僕が射精したところも、全部動画に撮られていた。

 正弥が僕のおしりに挿入する直前に、見回りに来た先生が止めに入ってくれた。
 顔を真っ青にして怒鳴る先生に、正弥はこう叫んだ。

「理玖が悪いんすよ!! あんな女みたいな顔して……女みたいな体で!! 俺らと一緒に風呂入ったんすよ!? 年頃の男子がそんなの我慢できるわけないじゃないですか!!」

 ああ……僕が悪いのか。
 僕の顔が女の子みたいだから。
 僕の体つきが女の子みたいだから。
 だからみんな、そういう気持ちで僕に寄ってきていたんだ。

「あいつ、拒否しませんでしたよ!! 嫌なら拒否しますよねえ!! あいつ、風呂場で自分から俺らのちんこ握ってきたんすよ!? 俺らだけが悪いのおかしくないっすか!?」
「……本当か、理玖?」

 先生に訊かれ、僕は震えながら答えた。

「だって、嫌われたくなかったから……」

 先生は、僕にも反省するべきところがあると注意した。
 嫌われたくないからと言って、顔や体を使って相手の気を引くのは良くないと。

 そんなつもりはなかった。あんなこと、僕だってしたくなかった。されたくなかった。

「僕が悪いんですか……?」
「いいや。理玖を襲ったあいつらが悪いよ。でもね、理玖。君はちょっと……きれいすぎるから。気を付けて」

 こんなことをされるなら、こんな顔も体もいらない。
 友だちもいらない。誰もいらない。

 僕も、こんなクソのような世の中も、全部消滅してしまえばいいのに。
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