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一年:二学期期末考査~二学期最終日

第七話

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 翌朝。

「理玖、おはよっ」
「ひぅっ、お、オハヨ」
「なに? 〝ひぅっ〟て」
「ナンデモナイ」

 凪のヤツ、よくそんな平気な顔でいられるな。ああ、こいつにとったらキスなんて日常茶飯事なのか。空気吸うのと同じくらいの感覚なんだろうな。
 俺にとっては天と地がひっくり返ったくらいの一大事なのに。むかつく。

 今日も今日とて凪は人気者だ。いや、いつもより女子の熱量がすごい。凪がフリーだからというのも大きな理由の一つだろうが、なにより……クリスマスを凪を過ごしたいのだろう。

「凪くん~! 今日のお昼一緒に食べよ~!」
「あー……うん、いいよ」
「凪ー、今日の夜ヒマ? あんたんち行ってもいい?」
「え? 今晩? んー……いいよ」
「凪くん凪くん、私の先輩が凪くんの連絡先知りたいって言ってるんだけど、教えてもいい?」
「別にいいよー」

 ……と、ずっとこんな感じで女子たちになにかしら誘われている。
 そして凪はだいたいなんでもイエスと答えるのだ。

 にしてもなんだ。夜に女子が凪の家に行くって? 絶対こいつらセックスするじゃん。相変わらず爛れた高校生活送ってんなあ。あー、やだやだ。

 まあ、こうして女子たちが凪の時間を奪ってくれたら、次のテストでは俺が学年一位になる可能性が高まるわけだからありがたいね。凪が女子にちんこシコシコされている間に、俺はしこしこ勉強するからさ。見てろよあいつ。

 ――そう思っていたのに。

 夜十時過ぎ、凪からメッセージが届いた。

 《凪:今から家行ってもいい?》

 はあ?

 《理玖:女子といるんじゃないの?》
 《凪:え? なんで知ってんの?》
 《凪:もう帰ったよ》

 女子とセックスしたあとの凪と顔を合わせるの、なんか気まずい。

 《理玖:明日じゃダメなの?》
 《凪:ダメじゃないけど……》
 《凪:今日はさすがに無理?》
 《理玖:そんなに今日がいいの?》
 《凪:うん》

 なんか嫌なことでもあったのだろうか、と心配になってしまった。

 《理玖:別にいいけど》
 《理玖:なんかあった?》

 しばらくして、返事がきた。

 《凪:行ってから話していい?》

 なんかあったのか。

 《理玖:分かった》

 少し心配だ。こんな突然押し掛けるなんて、よっぽどのことがあったに違いない。

 すでに俺の家に向かっていたのだろう。十分程度でインターフォンが鳴った。
 部屋に入ってきた凪は、どことなく落ち込んでいるようだった。

「どうした? 何があった?」
「……」
「凪?」

 凪はムスッとした顔をして黙りこんだままだ。

「おーい。言ってくれないと分かんない」
「……理玖~~……」
「うっ!?」

 抱きつかれた。耳元で「えーん」と泣いているのかいないのかどっちか分からん声が聞こえる。

「お、俺、もうダメだぁ~……」
「ど、どうしたんだよ。何があった」
「俺、俺ぇ……」

 えぐっ、えぐっ、とキモい声が聞こえるところから、どうやら本気で泣いているようだ。

「俺、女の子で興奮しない体になっちゃったよぉ~~……!!」
「……は?」

 何言ってんだこいつは。

「さっきさ、女の子がうちに来たんだぁ……。それでさ、なんか流れでさ……付き合おっかーって話になってさぁ……」

 軽いな、ノリが。人ってそんな簡単に彼女できんだな。

「それでさ、そうなったらさ、セックスするじゃん……?」

 へー。付き合ったら初日にセックスするのが一般人のすることなのかー。知らなかったなー。

「でもさ、俺さ、全然ちんこ反応しなくてさぁ……。フェラすらままならなくて……」

 へえ……。さっきまでフェラされてたんだあ……。すごいねー……。人ってそんな簡単にフェラしてもらえるんだねー……。

「結局何にもせずに別れたぁ……」
「はぁ!? 付き合った初日に別れたのか!?」
「うん……」
「一回セックスできなかったくらいで!?」
「え……? だってセックスできなかったら付き合う意味ないじゃん」
「わー……」

 俺はそのとき、サイコパス凪を垣間見た。
 俺と凪の住む世界が違いすぎて、俺は放心状態になっていた。これ以上こいつの話を聞いていたらメンタルが死ぬ。

「でも、俺、原因分かってんだよね……」
「へー……。なになにー……」

 凪は俺の顔をじっと覗き込み、それからちゅっとキスをしてきた。

「ん!?」

 あれっ、これまだ続くの!? 昨日だけの気まぐれじゃなかったの!?

「んん……っ」

 凪の舌が無遠慮に俺の中に入ってくる。これ嫌だ。変になる。

「……ほら、やっぱり」

 思う存分俺の口内を掻き回したあと、凪はふっと笑った。
 そして俺の手にちんこをツンと触れさせた。

「!?!?」
「理玖とキスしただけで、こんなにちんこキツくなる」
「お、おま。おまっ、おい。おいっ」

 びっくりしすぎて語彙力なんて吹き飛んだわ。なんでクラスメイトの勃起ちんこを触らなきゃいけないんだよ。

 テンパっている俺の耳元で、凪が囁く。

「俺、理玖としたい」
「……は?」
「女の子とより、理玖としたい」

 ……は?
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