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プロローグ-3
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youtube視聴と勉強をしているだけで夏休みが終わってしまった。中学時代とさして変わらない夏休みに、少しばかりがっかりする。
ちょっとだけ夢を見ていた。高校生の夏休みでは、友だちと一緒に海で遊んだりしているんじゃないのかな、なんて。
はあ。現実はそう甘くない。夢見ていた自分が恥ずかしすぎて死にたい。
二学期が始まり、文化祭だの体育祭だののイベントがあった。みんな楽しそうにしていた。スマホでがしゃがしゃ写真撮りまくってさ。
俺? 俺は何人かの女子にカメラマンをさせられた。緊張して、撮った写真が全部ブレていた。それからは誰にも頼まれなくなった。ふん。面倒くさい仕事を押し付けられなくなって清々した。
くだらない浮かれたイベントなんぞどうでもいい。俺にとって最も重要なイベントは、二学期の中間テストだ。
絶対に学年一位になってやる。そのために夏休みをひたすら勉強につぎ込んだのだからな。(youtube視聴にもそこそこの時間を使ったが)
「凪くん~! 一緒に帰ろうよぉ~!」
「うん、いいよ。テスト前くらいしか一緒に帰れないもんね」
「うん! ねえねえ、わたし、パフェ食べに行きたいなあ~!」
「いいよ。行こうか」
中間テスト一週間前、凪は相も変わらず貴重な時間を彼女とのデートに使うつもりのようだ。ちなみにこの彼女は一学期期末テストのときと違う彼女だ。
毎日毎日背後から世間話が聞こえくるので知っているのだが、どうやら凪は前の彼女と夏休み中に別れたらしい。そして夏休み中に別の彼女ができたがものの半月で別れ、今は文化祭で仲良くなったクラスメイトの女子と付き合っている。相変わらずモテモテであり、節操がない。
テスト前日も彼女とデートに行くようだった。放課後、この前と同じような会話が聞こえた。
こいつ、もしかして学年一位を取られたことを悔しく思っていないのだろうか。それはそれで俺が悔しいわ。一人で勝手に勉強頑張ってさ。こんなの俺の独り相撲じゃんか。
そう思っていたのだが――
彼女と教室を出る前、凪が俺の肩を叩いた。
「なあなあ、理玖」
「な、なに」
こいつが俺に話しかけたのは、一学期の期末テスト結果発表日以来だ。
凪はいつもの満面の笑みを浮かべた。
「俺と勝負しない?」
「は?」
「中間テスト、どっちが学年一位を取れるか」
「……」
ほーう。
こいつ俺のことナメてないか?
お前が部活している間も、女子とイチャイチャしている間もずっと、俺は勉強しているんだぞ?
そんな俺に勝負を吹っ掛けてくるとは。
ムカつく。
「いいよ」
どこまでナメてんだ、俺のこと。
そのとき、俺ははじめて凪の顔を真っすぐ見た。
「何賭ける?」
「賭けるって?」
「勝負なんだろ? 勝った方に良いことないと、つまらない」
「へー! 理玖、けっこうおもしろいこと言うなあ。なにが良い? ファミレスでメシ奢るとか?」
バカ。そんなんじゃつまらない。
俺はニッと笑い、こう言った。
「次のテストまで、負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くってのは?」
さすがの凪も面食らったようだった。
「なんでも?」
「なんでも」
「へー!」
しかしすぐに笑顔に戻り、大きく頷いた。
「面白そう! じゃあそれで!」
こいつはエロ漫画を読んだことがないのだろうか。なんでも言うことを聞くなんてそんなこと、簡単に承諾しちゃあダメでしょうが。
廊下から、待ちかねた凪の彼女の声が飛んでくる。
「凪~! 早く行こうよぉ~!」
「あっ、ごめんすぐ行く! ……じゃあな、理玖!」
「おう」
これは面白いことになった。
このテストが終わったら、次のテストまで凪のこと好き勝手できるのか。
何させよう。焼きそばパンとか買ってこさせたい。
ちょっとだけ夢を見ていた。高校生の夏休みでは、友だちと一緒に海で遊んだりしているんじゃないのかな、なんて。
はあ。現実はそう甘くない。夢見ていた自分が恥ずかしすぎて死にたい。
二学期が始まり、文化祭だの体育祭だののイベントがあった。みんな楽しそうにしていた。スマホでがしゃがしゃ写真撮りまくってさ。
俺? 俺は何人かの女子にカメラマンをさせられた。緊張して、撮った写真が全部ブレていた。それからは誰にも頼まれなくなった。ふん。面倒くさい仕事を押し付けられなくなって清々した。
くだらない浮かれたイベントなんぞどうでもいい。俺にとって最も重要なイベントは、二学期の中間テストだ。
絶対に学年一位になってやる。そのために夏休みをひたすら勉強につぎ込んだのだからな。(youtube視聴にもそこそこの時間を使ったが)
「凪くん~! 一緒に帰ろうよぉ~!」
「うん、いいよ。テスト前くらいしか一緒に帰れないもんね」
「うん! ねえねえ、わたし、パフェ食べに行きたいなあ~!」
「いいよ。行こうか」
中間テスト一週間前、凪は相も変わらず貴重な時間を彼女とのデートに使うつもりのようだ。ちなみにこの彼女は一学期期末テストのときと違う彼女だ。
毎日毎日背後から世間話が聞こえくるので知っているのだが、どうやら凪は前の彼女と夏休み中に別れたらしい。そして夏休み中に別の彼女ができたがものの半月で別れ、今は文化祭で仲良くなったクラスメイトの女子と付き合っている。相変わらずモテモテであり、節操がない。
テスト前日も彼女とデートに行くようだった。放課後、この前と同じような会話が聞こえた。
こいつ、もしかして学年一位を取られたことを悔しく思っていないのだろうか。それはそれで俺が悔しいわ。一人で勝手に勉強頑張ってさ。こんなの俺の独り相撲じゃんか。
そう思っていたのだが――
彼女と教室を出る前、凪が俺の肩を叩いた。
「なあなあ、理玖」
「な、なに」
こいつが俺に話しかけたのは、一学期の期末テスト結果発表日以来だ。
凪はいつもの満面の笑みを浮かべた。
「俺と勝負しない?」
「は?」
「中間テスト、どっちが学年一位を取れるか」
「……」
ほーう。
こいつ俺のことナメてないか?
お前が部活している間も、女子とイチャイチャしている間もずっと、俺は勉強しているんだぞ?
そんな俺に勝負を吹っ掛けてくるとは。
ムカつく。
「いいよ」
どこまでナメてんだ、俺のこと。
そのとき、俺ははじめて凪の顔を真っすぐ見た。
「何賭ける?」
「賭けるって?」
「勝負なんだろ? 勝った方に良いことないと、つまらない」
「へー! 理玖、けっこうおもしろいこと言うなあ。なにが良い? ファミレスでメシ奢るとか?」
バカ。そんなんじゃつまらない。
俺はニッと笑い、こう言った。
「次のテストまで、負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くってのは?」
さすがの凪も面食らったようだった。
「なんでも?」
「なんでも」
「へー!」
しかしすぐに笑顔に戻り、大きく頷いた。
「面白そう! じゃあそれで!」
こいつはエロ漫画を読んだことがないのだろうか。なんでも言うことを聞くなんてそんなこと、簡単に承諾しちゃあダメでしょうが。
廊下から、待ちかねた凪の彼女の声が飛んでくる。
「凪~! 早く行こうよぉ~!」
「あっ、ごめんすぐ行く! ……じゃあな、理玖!」
「おう」
これは面白いことになった。
このテストが終わったら、次のテストまで凪のこと好き勝手できるのか。
何させよう。焼きそばパンとか買ってこさせたい。
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