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4月
プラトニックなラブがしたい!
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「じゃ、いってきまーす」
土曜日の早朝、僕とスルトは見支度をして家を出た。わざわざエドガーとピーターも早起きをして見送ってくれた。部屋着で眼鏡をかけたエドガーが、靴を履いた僕をぎゅっと抱きしめる。久しぶりにエドガーのにおいに包まれて、僕はほんのり頬を赤らめた。
「いってらっしゃいケーゴ。楽しんでね」
「うん。おみやげたくさん買ってくるね」
「楽しみにしてる。…スルト、ケーゴの写真をたくさん撮ってきてね」
「任せろ。そのために容量の多いスマホに買い替えたからな」
「え。きもちわる」
ピーターは相変わらずおかんのように、忘れ物はないかとかなんやかんやと世話を焼いてくれた。昨晩僕のキャリーバッグの中にあほほど酔い止めの薬とか胃薬とか詰め込んでたの知ってるよ。今だって、服がびしょびしょになるんじゃないかってくらいΩのにおいを消すスプレーを振ってるし。
「ケイゴ。絶対にスルト様から離れるんじゃないぞ。今のケイゴはにおいが濃くなってるから…」
「うん。分かったからスプレー振るのそろそろやめてピーター?」
「ケーゴ。行くぞ。新幹線の時間に遅れる」
「うん」
家を出た僕とスルトは新幹線に乗り奈良へ向かった。あれだけスプレーを振っても僕のにおいは消えていなかったみたいで、僕の座席の近くに座ってる人たちや、通路を通る人たちが僕をチラチラ見ていた。その視線にスルトがいらいらと舌打ちを鳴らしてて、帰るって言いださないかヒヤヒヤした。
「くそ、うしろに座ってたやつら、座席の隙間からお前を盗み見ながら自慰をしていたぞ」
「してたねー。ま、襲ってこないだけまし」
奈良に到着して宿へ向かっている途中、スルトがぷんぷん怒りながらぶつくさ言っていた。スルトがいなかったらほんとにまずかっただろうな…。絶対に襲われてたと思う。
「…ねえスルト。僕のにおいそんなに濃くなってるの?」
「ああ。以前の濃さとほぼ同じくらいだな。気を付けろよケーゴ。絶対に俺から離れるな」
「うん…」
不安げな表情をしている僕の背中をスルトはぽんぽんと優しく叩いた。
「大丈夫だ。俺がいたら誰も手を出してこないだろう。まわりは気にせず、旅行を楽しんでほしい」
「…うん!」
僕が元気よく答えると、スルトはニコっと笑って僕のキャリーバッグを持ってくれた。宿へ着くまでの間、ただの雑談をしたり、これから観光する場所のことを話してくれたりしてくれた。異様に奈良のことに詳しかったから、たぶんこの1週間で一生懸命予習したんだろうなあ。
いつもだったら二言目には「抱きたい」「勃った」「ベッド行くぞ」なのに一切そういう系のワード出してこないし…!え?なに今日のスルトさんすごく良いです…。やればできんじゃん…。優しいしかっこいいしスケベしてこないし最高じゃん…!しかもさりげなくモブが僕にちょっかい出してこないようにガードしてくれてるし…。今日のスルト、めちゃくちゃ夫って感じするじゃん!!!え、この非の打ち所がないイケメンが僕の夫?なにそれ夢?
「ん?どうしたケーゴ」
「…あなたほんとうにスルトさんですか?」
「はあ?どう見たって俺だろう」
「いや…誰かと中身入れ替わってない?」
「おい。そんな顔をしながら俺を他人と疑うなよ」
「え、僕どんな顔してる?!」
「恋に落ちたような顔をしているぞ。フン」
「ぎゃーーー!見ないでぇぇっ!」
「なんとも複雑な気分だ」
土曜日の早朝、僕とスルトは見支度をして家を出た。わざわざエドガーとピーターも早起きをして見送ってくれた。部屋着で眼鏡をかけたエドガーが、靴を履いた僕をぎゅっと抱きしめる。久しぶりにエドガーのにおいに包まれて、僕はほんのり頬を赤らめた。
「いってらっしゃいケーゴ。楽しんでね」
「うん。おみやげたくさん買ってくるね」
「楽しみにしてる。…スルト、ケーゴの写真をたくさん撮ってきてね」
「任せろ。そのために容量の多いスマホに買い替えたからな」
「え。きもちわる」
ピーターは相変わらずおかんのように、忘れ物はないかとかなんやかんやと世話を焼いてくれた。昨晩僕のキャリーバッグの中にあほほど酔い止めの薬とか胃薬とか詰め込んでたの知ってるよ。今だって、服がびしょびしょになるんじゃないかってくらいΩのにおいを消すスプレーを振ってるし。
「ケイゴ。絶対にスルト様から離れるんじゃないぞ。今のケイゴはにおいが濃くなってるから…」
「うん。分かったからスプレー振るのそろそろやめてピーター?」
「ケーゴ。行くぞ。新幹線の時間に遅れる」
「うん」
家を出た僕とスルトは新幹線に乗り奈良へ向かった。あれだけスプレーを振っても僕のにおいは消えていなかったみたいで、僕の座席の近くに座ってる人たちや、通路を通る人たちが僕をチラチラ見ていた。その視線にスルトがいらいらと舌打ちを鳴らしてて、帰るって言いださないかヒヤヒヤした。
「くそ、うしろに座ってたやつら、座席の隙間からお前を盗み見ながら自慰をしていたぞ」
「してたねー。ま、襲ってこないだけまし」
奈良に到着して宿へ向かっている途中、スルトがぷんぷん怒りながらぶつくさ言っていた。スルトがいなかったらほんとにまずかっただろうな…。絶対に襲われてたと思う。
「…ねえスルト。僕のにおいそんなに濃くなってるの?」
「ああ。以前の濃さとほぼ同じくらいだな。気を付けろよケーゴ。絶対に俺から離れるな」
「うん…」
不安げな表情をしている僕の背中をスルトはぽんぽんと優しく叩いた。
「大丈夫だ。俺がいたら誰も手を出してこないだろう。まわりは気にせず、旅行を楽しんでほしい」
「…うん!」
僕が元気よく答えると、スルトはニコっと笑って僕のキャリーバッグを持ってくれた。宿へ着くまでの間、ただの雑談をしたり、これから観光する場所のことを話してくれたりしてくれた。異様に奈良のことに詳しかったから、たぶんこの1週間で一生懸命予習したんだろうなあ。
いつもだったら二言目には「抱きたい」「勃った」「ベッド行くぞ」なのに一切そういう系のワード出してこないし…!え?なに今日のスルトさんすごく良いです…。やればできんじゃん…。優しいしかっこいいしスケベしてこないし最高じゃん…!しかもさりげなくモブが僕にちょっかい出してこないようにガードしてくれてるし…。今日のスルト、めちゃくちゃ夫って感じするじゃん!!!え、この非の打ち所がないイケメンが僕の夫?なにそれ夢?
「ん?どうしたケーゴ」
「…あなたほんとうにスルトさんですか?」
「はあ?どう見たって俺だろう」
「いや…誰かと中身入れ替わってない?」
「おい。そんな顔をしながら俺を他人と疑うなよ」
「え、僕どんな顔してる?!」
「恋に落ちたような顔をしているぞ。フン」
「ぎゃーーー!見ないでぇぇっ!」
「なんとも複雑な気分だ」
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