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僕を抱きしめてくれますか?
第六十一話
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◆◆◆
(ローランside)
いつかエディの発情期が来る。
そのときにはエディにあんな思いをさせないように。エディを優しく抱きしめられるように。
僕はこの日まで、エディのオメガの匂いに慣れてきた。
それなのに僕は、どうして発情の兆しが見えるエディから離れようとしているんだ。
受け入れたいのに。抱きしめたいのに。体と心が自分の思うように動いてくれない。
全身が寒い。震えが止まらない。それなのにペニスだけは燃えるように熱く、反応している。
アルファの本能がエディを求めている。ただの獣のように、交尾する相手としてエディに挿入したがっている。
そんな自分が気持ち悪い。僕は交尾するためじゃなく、愛し合うために繋がりたいんだ。
同時に、これまでの不快な記憶が蘇る。自我を忘れ、発情したオメガに激しく腰を振る自分。それを見て満足げな笑みを浮かべるお父さま。苦い顔をしつつも黙って立っているだけのロジェ。
「く、来るな――」
と言いかけて、咄嗟に口を噤んだ。
もう二度とエディに拒絶の言葉を浴びせたくない。エディを傷つけたくない。
もう、自分がどうしたいのかすら分からない。どうしていいのかなんて、分かるわけない。
そのとき、ロジェにそっと肩を掴まれた。
「ローラン様」
「っ……」
「お辛いでしょうね」
「……」
ロジェは哀れみを込めた目で僕を見つめる。
「あなたは今、絶壁から落ちないよう必死に爪を立てているのでしょう」
「……」
「踏ん張っているけれど、ずるずると落ちていく。その間に指は削れ、爪は剥がれ……怖くて痛くてしょうがないでしょう」
ああ、怖い。痛い。それでも止められないんだ。
だから相手を突き放すしか……追い出すしか、方法が思いつかないんだ。
「ローラン様。思い切って手を放してみませんか」
手を放したら落ちてしまうじゃないか。
アルファの欲望に支配され、どろどろの性欲の渦に沈みこんでしまう。
「どうせ落ちてしまうのです。だったら潔く落ちましょう。手を放せば指も爪も痛みません。恐怖が長引くこともありません。ただ重力に身を任せて落ちていけばいいのです」
ご安心ください、と言ってロジェがエディを指さした。
「何も怖がることはありません。あなたは地の底に落ちるのではありません。空から地に降り立つだけです」
ベッドの上でエディが顔を上げた。
本格的に発情してきたようだ。呼吸が乱れ、焦点が定まっていない。それに……フェロモンの匂いが部屋に充満するほど濃くなっている。
僕と目が合ったエディは、火照った頬をふんわりと緩める。
「ああ、よかった……。怖がってはいらっしゃいますけど……いつもと同じ、優しい目……」
今の僕の顔を見て「優しい目」だなんて。以前の僕は、どれほどひどい目を彼に向けてしまっていたのだろう。
ロジェに背中を押された。僕の体はまだ震えている。だが、僕は少しずつエディに近づいた。
エディが手を伸ばす。僕はおそるおそるその手を握った。とても熱く、汗ばんでいる。
「エ、エディ……。ぼ、僕、僕は……自分が怖い……」
エディを他のオメガと同じように交尾相手として抱いてしまったらどうしよう。
自我を忘れ、乱暴に抱いてしまったらどうしよう。
自分の快楽のためだけに腰を振ってしまったらどうしよう。エディの体を痛めてしまったら――
エディが僕の手をきゅっと握り返す。
「ラットになったローラン様も、ローラン様であることに変わりありません……」
「ラットになると途中から記憶が飛ぶんだ。どんなことをしてしまうか分からない。それでも……君は僕を軽蔑しないか?」
「僕も同じですよ、ローラン様……。僕だって発情したら途中から記憶が飛びます。二人とも記憶がないのですから、何も心配することはありませんよ」
冗談交じりにエディがそう言い、目じりを下げる。
「やっぱりローラン様は優しい方ですね……。ラットになりそうなときでも、僕のことを気遣ってくれてる……。そんなあなたに身を預けることが怖いわけありません……」
喉元が熱くなった。
それはこちらのセリフだ。発情しているにもかかわらず欲情のこもった言葉すら一言も吐かない。きっと僕に気遣って、意識的にそういうことを言わないように気を付けているのだろう。
本当は、自我を失いそうなほど欲情しているはずなのに。
ベッドの前で立ち尽くしている僕に、ロジェが言った。
「落ちた先で待っているのは、あなたの愛するエディです。彼があなたをしっかりと抱きとめてくれますよ」
ロジェはクスクスと笑う。
「それどころかエディが待ちくたびれていますよ」
「……ロジェ。もし僕がエディにひどいことをしそうになったら止めてくれ……」
「はい。そのときはあなたをこの部屋から追い出しますね」
「はは……。そうしてくれ」
僕は震えながらベッドに上がった。
「っ……」
エディがくるまっていた布団をめくると、濃厚なオメガのフェロモンが僕に襲いかかってきた。欲情の波が体を熱くする。呼吸は乱れ、カウパーが服を汚す。
「エディ……ッ、怖かったり痛かったりしたら僕を突き飛ばしてくれ……っ」
すでに意識が朦朧としているのだろう。エディは返事をせず、潤んだ目で僕を見つめるばかりだった。
エディの脚を開かせる。シーツには大きなシミができており、エディの尻はいつも以上に愛液が溢れていた。
僕がためらっている間に射精していたようだ。ペニスから精液が垂れており、腹には自身の精液が飛び散っている。一度射精したにもかかわらず、エディのペニスは硬く膨張したままだ。
「はっ……はっ……」
挿れたい。この中を××××、僕の精液で××××。
このオメガを××××。
このオメガ――
「ローラン様……っ」
「っ!」
意識が飛びそうになっていた僕を、オメガが抱きしめた。
「ローラン様……、大丈夫ですか……?」
聞き慣れた声。心が落ち着く、優しい声。
欲情を支配する暴力的なまでのオメガのフェロモンの奥から、心地のよい匂いがした。
「……エディ……」
「はい……、エディです……。えへへ」
そうだ。彼は「このオメガ」じゃない。エディだ。
「ローラン様……いつもみたいに、キスしてください……」
キス……?
「愛のある性交はキスからはじまるって……僕たち、ロジェさんに教えてもらったでしょう……?」
「っ……」
エディが僕に唇を重ねた。ちゅ、ちゅ、と何度か軽いキスをしてから、そっと舌を差し込んでくる。
ああ、この感覚は知っている。エディとキスをしているときが一番しあわせな時間だと、僕は思っていた。
アルファに支配されていた意識が徐々にはっきりしてきた。
目の前にいるのはオメガじゃない。僕が一番大切に想っているエディ。
僕たちが抱き合うのはオメガとアルファだからじゃない。発情とラットのせいじゃない。
大切な人同士だからだ。愛し合っているからだ。
「――……」
キスが終わる。エディはぼんやりした目で僕の顔を覗き込み、ほうっと吐息を漏らした。
「ほら。ラットになったローラン様も、ちゃんとローラン様です。……っ」
そうして僕は、発情しているエディをやっと自分から抱きしめることができた。
(ローランside)
いつかエディの発情期が来る。
そのときにはエディにあんな思いをさせないように。エディを優しく抱きしめられるように。
僕はこの日まで、エディのオメガの匂いに慣れてきた。
それなのに僕は、どうして発情の兆しが見えるエディから離れようとしているんだ。
受け入れたいのに。抱きしめたいのに。体と心が自分の思うように動いてくれない。
全身が寒い。震えが止まらない。それなのにペニスだけは燃えるように熱く、反応している。
アルファの本能がエディを求めている。ただの獣のように、交尾する相手としてエディに挿入したがっている。
そんな自分が気持ち悪い。僕は交尾するためじゃなく、愛し合うために繋がりたいんだ。
同時に、これまでの不快な記憶が蘇る。自我を忘れ、発情したオメガに激しく腰を振る自分。それを見て満足げな笑みを浮かべるお父さま。苦い顔をしつつも黙って立っているだけのロジェ。
「く、来るな――」
と言いかけて、咄嗟に口を噤んだ。
もう二度とエディに拒絶の言葉を浴びせたくない。エディを傷つけたくない。
もう、自分がどうしたいのかすら分からない。どうしていいのかなんて、分かるわけない。
そのとき、ロジェにそっと肩を掴まれた。
「ローラン様」
「っ……」
「お辛いでしょうね」
「……」
ロジェは哀れみを込めた目で僕を見つめる。
「あなたは今、絶壁から落ちないよう必死に爪を立てているのでしょう」
「……」
「踏ん張っているけれど、ずるずると落ちていく。その間に指は削れ、爪は剥がれ……怖くて痛くてしょうがないでしょう」
ああ、怖い。痛い。それでも止められないんだ。
だから相手を突き放すしか……追い出すしか、方法が思いつかないんだ。
「ローラン様。思い切って手を放してみませんか」
手を放したら落ちてしまうじゃないか。
アルファの欲望に支配され、どろどろの性欲の渦に沈みこんでしまう。
「どうせ落ちてしまうのです。だったら潔く落ちましょう。手を放せば指も爪も痛みません。恐怖が長引くこともありません。ただ重力に身を任せて落ちていけばいいのです」
ご安心ください、と言ってロジェがエディを指さした。
「何も怖がることはありません。あなたは地の底に落ちるのではありません。空から地に降り立つだけです」
ベッドの上でエディが顔を上げた。
本格的に発情してきたようだ。呼吸が乱れ、焦点が定まっていない。それに……フェロモンの匂いが部屋に充満するほど濃くなっている。
僕と目が合ったエディは、火照った頬をふんわりと緩める。
「ああ、よかった……。怖がってはいらっしゃいますけど……いつもと同じ、優しい目……」
今の僕の顔を見て「優しい目」だなんて。以前の僕は、どれほどひどい目を彼に向けてしまっていたのだろう。
ロジェに背中を押された。僕の体はまだ震えている。だが、僕は少しずつエディに近づいた。
エディが手を伸ばす。僕はおそるおそるその手を握った。とても熱く、汗ばんでいる。
「エ、エディ……。ぼ、僕、僕は……自分が怖い……」
エディを他のオメガと同じように交尾相手として抱いてしまったらどうしよう。
自我を忘れ、乱暴に抱いてしまったらどうしよう。
自分の快楽のためだけに腰を振ってしまったらどうしよう。エディの体を痛めてしまったら――
エディが僕の手をきゅっと握り返す。
「ラットになったローラン様も、ローラン様であることに変わりありません……」
「ラットになると途中から記憶が飛ぶんだ。どんなことをしてしまうか分からない。それでも……君は僕を軽蔑しないか?」
「僕も同じですよ、ローラン様……。僕だって発情したら途中から記憶が飛びます。二人とも記憶がないのですから、何も心配することはありませんよ」
冗談交じりにエディがそう言い、目じりを下げる。
「やっぱりローラン様は優しい方ですね……。ラットになりそうなときでも、僕のことを気遣ってくれてる……。そんなあなたに身を預けることが怖いわけありません……」
喉元が熱くなった。
それはこちらのセリフだ。発情しているにもかかわらず欲情のこもった言葉すら一言も吐かない。きっと僕に気遣って、意識的にそういうことを言わないように気を付けているのだろう。
本当は、自我を失いそうなほど欲情しているはずなのに。
ベッドの前で立ち尽くしている僕に、ロジェが言った。
「落ちた先で待っているのは、あなたの愛するエディです。彼があなたをしっかりと抱きとめてくれますよ」
ロジェはクスクスと笑う。
「それどころかエディが待ちくたびれていますよ」
「……ロジェ。もし僕がエディにひどいことをしそうになったら止めてくれ……」
「はい。そのときはあなたをこの部屋から追い出しますね」
「はは……。そうしてくれ」
僕は震えながらベッドに上がった。
「っ……」
エディがくるまっていた布団をめくると、濃厚なオメガのフェロモンが僕に襲いかかってきた。欲情の波が体を熱くする。呼吸は乱れ、カウパーが服を汚す。
「エディ……ッ、怖かったり痛かったりしたら僕を突き飛ばしてくれ……っ」
すでに意識が朦朧としているのだろう。エディは返事をせず、潤んだ目で僕を見つめるばかりだった。
エディの脚を開かせる。シーツには大きなシミができており、エディの尻はいつも以上に愛液が溢れていた。
僕がためらっている間に射精していたようだ。ペニスから精液が垂れており、腹には自身の精液が飛び散っている。一度射精したにもかかわらず、エディのペニスは硬く膨張したままだ。
「はっ……はっ……」
挿れたい。この中を××××、僕の精液で××××。
このオメガを××××。
このオメガ――
「ローラン様……っ」
「っ!」
意識が飛びそうになっていた僕を、オメガが抱きしめた。
「ローラン様……、大丈夫ですか……?」
聞き慣れた声。心が落ち着く、優しい声。
欲情を支配する暴力的なまでのオメガのフェロモンの奥から、心地のよい匂いがした。
「……エディ……」
「はい……、エディです……。えへへ」
そうだ。彼は「このオメガ」じゃない。エディだ。
「ローラン様……いつもみたいに、キスしてください……」
キス……?
「愛のある性交はキスからはじまるって……僕たち、ロジェさんに教えてもらったでしょう……?」
「っ……」
エディが僕に唇を重ねた。ちゅ、ちゅ、と何度か軽いキスをしてから、そっと舌を差し込んでくる。
ああ、この感覚は知っている。エディとキスをしているときが一番しあわせな時間だと、僕は思っていた。
アルファに支配されていた意識が徐々にはっきりしてきた。
目の前にいるのはオメガじゃない。僕が一番大切に想っているエディ。
僕たちが抱き合うのはオメガとアルファだからじゃない。発情とラットのせいじゃない。
大切な人同士だからだ。愛し合っているからだ。
「――……」
キスが終わる。エディはぼんやりした目で僕の顔を覗き込み、ほうっと吐息を漏らした。
「ほら。ラットになったローラン様も、ちゃんとローラン様です。……っ」
そうして僕は、発情しているエディをやっと自分から抱きしめることができた。
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