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セドラン侯爵家のボーイになりました
第十話
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(ローランside)
僕にああいうことをさせようとするのは、ロジェだけではない。
ある夜、望まない来客があった。お父様だ。
「ローラン、お邪魔するよ」
お父様が夜に僕の部屋を訪れる理由は、ひとつしかない。
僕は顔を青くして、震え上がった。
「お父様……いやです。やめてください。いやです。いやです」
「わがままを言うんじゃないよ。お前はもう少し、跡取りとしての……アルファの自覚を持つべきだからな」
「いやです……。本当にいやなんです……」
「大丈夫だ。はじめは慣れないだろうが、だんだんと良さが分かってくるさ」
お父様がベルを鳴らすと、ロジェが一人のメイドを連れて部屋に入ってきた。
メイドが部屋に入ってきたとたん、部屋中に甘い匂いが充満する。
「あ……」
この匂いを嗅ぐと頭が変になる。思考が鈍り、体が勝手に反応して……
このオメガを××××という気持ちに支配される。
逃げようとする僕を、ロジェがベッドに押さえつけた。
「ローラン様……。早くラットになってください……そうすればすぐ終わりますから……」
「やめろ……っ、出て行け……どっかいけ……っ」
発情期中のオメガがベッドに上がり込む。甘いフェロモンを垂れ流して、涙目で僕を見つめている。
「ローラン様……っ、お願いします……っ、早く……ください……っ」
「いやだ……いやだっ……こっち来るな……僕に触るな……触るなあああ!!」
いくら抵抗しても、アルファの性に僕は勝てない。
発情期のオメガを目の前に差し出された僕は――
ラットとなり、自らオメガを犯す野獣と化す。
「はっ……、はっ、はっ……」
「あぁぁっ、ぁあっ、ぁあぁあん!! あっ、あっ、あぁぁっ、ローラン様っ、ローラン様ぁぁっ!!」
僕が暴走するさまを、お父様が満足げに眺めている。その隣には、暗い顔をしたロジェがいた。
「おお……。やはりアルファはこうでなくてはなあ」
「……そうですね」
「なぜローランはアルファであることを恥じるのだろうか。こんなに勇ましく力強い姿を」
「……」
「はやくローランがアルファとしての自覚を持ち、積極的に励んでくれたらいいのになあ……」
「……そうですね」
「また上玉のオメガが発情期になったら教えてくれ。わしのかわいいローランがラットになった姿……これを見るのが唯一の楽しみでね」
「……かしこまりました」
望んでもいないときに、望んでもいない相手と性交させられ。
親にさえ鑑賞物にされ。
ラットの姿でさえ鑑賞物にされ。
僕は、今まで生きてきた。
「――……」
ラットになると、途中から記憶が飛ぶ。
僕の意識が戻ったときには、空が明るんでいた。
僕の部屋には、オメガもお父様もいなかった。
僕の体は清められ、シーツも真新しい物に替えられている。
ただの夢だったのかと思うくらい、昨晩の痕跡は何も残っていない。
ただ、オメガのフェロモンの残り香だけは消せなかったようだが。
「……ロジェ……いるか……?」
「はい」
「あれからどのくらい僕は……」
「三時間ほどです」
「……あのオメガに避妊はさせていたか?」
「はい」
「ロジェ……」
「はい」
「お父様に……発情期のオメガを連れてくるのはやめろと……頼むから……」
「……」
涙を流す僕の背中を、ロジェが優しく撫でる。
「もう……嫌なんだよ……っ。ラットになる瞬間、自分が人間じゃなくなる音がするんだ……っ。ただの動物になって……弱い動物を残忍に食い散らかしているような……そんな……感覚がして……嫌なんだ……っ」
「ローラン様……」
「僕は人間でいたいんだ……このアルファと言う性に、理性を奪われたくないんだ……っ。そんな自分を見たくないんだよ……っ」
泣いて懇願しても、お父様はやめてくれない。
僕がお願いしても、ロジェがお願いしても、どうしてもやめてくれない。
「こんな体……はやく壊れてしまえばいい……っ。ラットになるくらいなら、ショックになって死んだ方がずっといい……」
なぜ穏やかに過ごさせてくれないんだ。
僕はただ、一人の少年として平和に暮らしたいだけなのに。
欲情とは無縁の場所で、ただただ穏やかに。
僕にああいうことをさせようとするのは、ロジェだけではない。
ある夜、望まない来客があった。お父様だ。
「ローラン、お邪魔するよ」
お父様が夜に僕の部屋を訪れる理由は、ひとつしかない。
僕は顔を青くして、震え上がった。
「お父様……いやです。やめてください。いやです。いやです」
「わがままを言うんじゃないよ。お前はもう少し、跡取りとしての……アルファの自覚を持つべきだからな」
「いやです……。本当にいやなんです……」
「大丈夫だ。はじめは慣れないだろうが、だんだんと良さが分かってくるさ」
お父様がベルを鳴らすと、ロジェが一人のメイドを連れて部屋に入ってきた。
メイドが部屋に入ってきたとたん、部屋中に甘い匂いが充満する。
「あ……」
この匂いを嗅ぐと頭が変になる。思考が鈍り、体が勝手に反応して……
このオメガを××××という気持ちに支配される。
逃げようとする僕を、ロジェがベッドに押さえつけた。
「ローラン様……。早くラットになってください……そうすればすぐ終わりますから……」
「やめろ……っ、出て行け……どっかいけ……っ」
発情期中のオメガがベッドに上がり込む。甘いフェロモンを垂れ流して、涙目で僕を見つめている。
「ローラン様……っ、お願いします……っ、早く……ください……っ」
「いやだ……いやだっ……こっち来るな……僕に触るな……触るなあああ!!」
いくら抵抗しても、アルファの性に僕は勝てない。
発情期のオメガを目の前に差し出された僕は――
ラットとなり、自らオメガを犯す野獣と化す。
「はっ……、はっ、はっ……」
「あぁぁっ、ぁあっ、ぁあぁあん!! あっ、あっ、あぁぁっ、ローラン様っ、ローラン様ぁぁっ!!」
僕が暴走するさまを、お父様が満足げに眺めている。その隣には、暗い顔をしたロジェがいた。
「おお……。やはりアルファはこうでなくてはなあ」
「……そうですね」
「なぜローランはアルファであることを恥じるのだろうか。こんなに勇ましく力強い姿を」
「……」
「はやくローランがアルファとしての自覚を持ち、積極的に励んでくれたらいいのになあ……」
「……そうですね」
「また上玉のオメガが発情期になったら教えてくれ。わしのかわいいローランがラットになった姿……これを見るのが唯一の楽しみでね」
「……かしこまりました」
望んでもいないときに、望んでもいない相手と性交させられ。
親にさえ鑑賞物にされ。
ラットの姿でさえ鑑賞物にされ。
僕は、今まで生きてきた。
「――……」
ラットになると、途中から記憶が飛ぶ。
僕の意識が戻ったときには、空が明るんでいた。
僕の部屋には、オメガもお父様もいなかった。
僕の体は清められ、シーツも真新しい物に替えられている。
ただの夢だったのかと思うくらい、昨晩の痕跡は何も残っていない。
ただ、オメガのフェロモンの残り香だけは消せなかったようだが。
「……ロジェ……いるか……?」
「はい」
「あれからどのくらい僕は……」
「三時間ほどです」
「……あのオメガに避妊はさせていたか?」
「はい」
「ロジェ……」
「はい」
「お父様に……発情期のオメガを連れてくるのはやめろと……頼むから……」
「……」
涙を流す僕の背中を、ロジェが優しく撫でる。
「もう……嫌なんだよ……っ。ラットになる瞬間、自分が人間じゃなくなる音がするんだ……っ。ただの動物になって……弱い動物を残忍に食い散らかしているような……そんな……感覚がして……嫌なんだ……っ」
「ローラン様……」
「僕は人間でいたいんだ……このアルファと言う性に、理性を奪われたくないんだ……っ。そんな自分を見たくないんだよ……っ」
泣いて懇願しても、お父様はやめてくれない。
僕がお願いしても、ロジェがお願いしても、どうしてもやめてくれない。
「こんな体……はやく壊れてしまえばいい……っ。ラットになるくらいなら、ショックになって死んだ方がずっといい……」
なぜ穏やかに過ごさせてくれないんだ。
僕はただ、一人の少年として平和に暮らしたいだけなのに。
欲情とは無縁の場所で、ただただ穏やかに。
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