15 / 44
やらかしました
しおりを挟むああ・・・なぜこうなってしまったんでしょうか・・・
目の前にいる同い年くらいの少年を見つめながら、私は回想という名の現実逃避に走ります。
「俺と共に城に来い。」
金の髪に碧の瞳、整った顔立ち。
まさにこれぞ王子様といった男の人が私を引き寄せたまま放しません。
ああ、本当に、どうしてこうなったのでしょう・・・
***
神力とは、神が天使に与えた神様の力に一部を差します。
天使は神力をつかって飛ぶこと、守ること、癒すことができます。
守護の力や、治癒の力が、神力なのです。
天使に何かを傷つけることはできません。
ただひたすらに守る。
それが天使の特徴です。
もちろん私も例にもれず、恐怖から神力の暴走なんてことをしてしまいましたが、その力は誰も傷つけませんでした。
ただ私を男たちから守り、彼らを拘束しただけ。
「この人たち・・・どうすればいいんでしょうか。」
「放っておけばいい。」
「ヒャアッ!?」
ぽつりとこぼした独り言に返事が返ってきて、私は文字通り飛び上がりました。
・・・翼を出して。
「・・・あ。」
やらかしました。
天使だって、バレちゃいます。
「っ、ちょっと待て!」
「え?あっ・・・!」
焦ってそのまま逃げようとした私の腰を、彼が捕まえました。
そのまま引き寄せられて、私は逃げるすべを失ってしまいました。
そうして冒頭の状況に至るわけです。
***
「と、とりあえず、放してください。」
「嫌だ。」
「い、嫌って・・・」
「だって、放したらお前は逃げてしまうだろう。」
当たりです、逃げます。
そう口に出すわけにもいかず、私は今困っています。
父さま以外の男の人と、こんなにくっついたこと、ありません。
「うう・・・そもそもなんであなた方、ここにいたんですか。」
そう、あなた方、です。
この人は1人じゃなかったんです。
いきなり抱きしめられた後、木の陰草の陰からゾロゾロと騎士のような人たちがでてきたのは軽く恐怖でした。
そのまま私をさらおうとした男2人を捕縛してくれたのは嬉しかったのですが。
「ここを人さらいが通っていると聞いてな。ここは王都からも近いし、見過ごせなかったので少し張っていたのだが、案の定すぐにお前を乗せた荷車がやって来たんだ。まあ、俺たちが出る間もなかったが。」
ちらりと視線を向けられて、私は条件反射で下を向いた。
ああ、本当にどうしましょう。
絶対これ、私が天使だとばれていますよね。
「お前の正体はわかっている。」
ほら、やっぱり!
やっぱりバレてます!
今から言われるんです、きっと。
お前は・・・
「お前は、聖女だろう。」
そう、聖女だろうって・・・え?
「聖女・・・?」
予想外のことを言われて、私はポカンとしてしまいました。
えっと、聖女って、奇跡の人のことですよね?
私、聖女になったつもりはないんですが・・・
「い、いえ、私は・・・」
「ごまかしても無駄だ、ここまで聖女の力を見せられたらもう聖女だということははっきりしている。」
聖女じゃありません、と言おうとしたのですが、きっぱり否定されました。
本当に、聖女ではないのに・・・
でもここで否定して、じゃあ何だ、と聞かれても困りますし・・・
ここは、肯定しておいた方がいいのでしょうか。
いやでも、聖女は噂を聞く限りかなり珍しい存在。
ここは否定も肯定もしない方がいい気がします。
「えっと・・・わかりません。」
とりあえず、知りませんで通します!
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる