能力者は正体を隠す

ユーリ

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高校生編 6月

前期考査

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今日から一週間、テスト期間に入る。
部活に入っていない私には関係ないが、テストのために全部活動が活動停止になるらしい。

実は、高校から光陰学園に入学した私達外部生にとって、このテストは重要なのだ。
光陰学園は幼等部からあり、中等部までは一定の財力を持つ家の子供に入学の権利が与えられている。

でも、高等部からは違う。
学園の学力を上げるため、一般の家庭にも門戸を開き、高い学力を持つ者を特待生という形で入学させる。
学園の生徒が補わなければならない学費はかなり高いが、特待生は無償で授業を受けることが出来る。
ただし、その条件として・・・

「あっ・・・」

ビリリッ!

「あなたなんか、あなたなんか、次のテストで十五位以内に入らなければおしまいよ!さっさと退学してこの私の前に現れないでちょうだい!」

西園寺姫璃、だったよね、この人。
目の前で授業ノートが破られていく。
ヒラヒラと、紙が舞う。

随分、私も嫌われたな・・・

そう、私達外部生は、毎回テストで十五位以内に入らなければ、学費を自分で負担しなければならなくなる。
年に四回行われるテストで再び十五位以内に戻ればまた学費が免除されるようになるのだが、たった三ヶ月程度とはいえ、一般の家庭が超高額なこの学園の学費を負担するのは難しい。
まあつまり、十五位から外れるということは、退学に等しいのだ。

私の場合、万が一成績を落としたとしてもカイお兄ちゃんがお金を出してくれると言っていたので退学はありえないのだけれど。
でも、そうなったら私の家がどんな家なのか、に注目が集まってしまいそうだし、余計なお金を使わせたくないから出来るだけ成績はキープしていきたいけどね。

ビリビリに破られたノートをじっと見つめる。
もうこのノートは使えないな・・・

視線を西園寺さんに移す。
見下したように私を見つめる彼女は、私が彼女を威嚇したときのことを覚えていないのだろうか。
私がその気になれば彼女に恐怖を植え付けるなんて簡単にできるのに。
彼女のプライドが、私なんかに恐怖した記憶を留めておくことを許さなかったのだろうか。
ちょっかい出してこなければ、私も何もしないのに。

威嚇しようかと、思った。
でも・・・
威嚇したところでどうせ明日からの態度は変わらないわけだし、この人の相手をするなんて面倒くさいな、とも思った。
だから彼女を見つめたまま、私は黙っていた。

「何よ、文句でもあるの?」

私の視線をどう思ったのか、西園寺さんは目を吊り上げて手を振りかざした。
私、ぶたれるのかな。
避けようと思えば避けれる。
長い爪が頬にあたれば痛そうだし。
でも、避けたら避けたでまた逆上されて何かされそう。

一発だけ素直にあたっておくか・・・

迫り来る手を見つめながらじっとしていた。
とその瞬間、その手が何者かに掴まれた。

え・・・何、このナイスタイミングな感じ。
誰だろう。
西園寺さんの手首を掴んでいる手を辿る。

「お前、何してんだ。」

軽蔑を隠しもせずに西園寺さんを睨み付けている彼には、見覚えがある。

「あ、碧館様っ!?」

慌てふためく西園寺さんの声が遠く聞こえる。

碧館 樹(あおだて いつき)。
確か二年生で・・・光陰部。

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