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高校生編 4月
再会 ~紫月 司side~
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レクリエーションなんて、真面目にする気はなかった。
適当にどこかでサボろう。
そう思って、おれはいつも授業をサボる時に行く場所へ行った。
森の中にはこの学園の生徒は足を踏み入れようとしないし、快適だ。
おれはよくとある一本の大木に登っては昼寝をする。
今日もその木のところまで行き、登ろうとしたときだった。
潜められている気配に気付いた。
先客がいるのか・・・?
見上げると、揺れる銀が見えた。
「あ・・・」
あの屋上での一件以来、忘れることのできなかった色だ。
おれを助けてくれた少女。
彼女に関しておれが知っているのは、この学園の生徒で銀の髪に紫の瞳で、能力者だということ。
光陰部に、そんな特徴を持つメンバーはいない。
それはつまり、彼女は自分が能力者だということを隠しているということだ。
詳しい事情は分からないが、おそらくそうなのだろう。
それなのに、おれを助けてくれた彼女には感謝しかない。
だからおれは、彼女の存在を隠した。
本来なら光陰部に彼女の存在を報告すべきだったが、おれはそうしなかった。
今、この木の上にいるのは彼女に違いないだろう。
珍しい銀の髪を持つ少女は彼女の他にいない。
彼女のことを思うのならば、ここは気付かぬふりをして去るのがいいんだろう。
でも、おれはそうしたくなかった。
会って、感謝を述べたかった。
秘密を知ってしまったけれども、誰にも口外しないから信用してくれと伝えたかった。
彼女という存在を知りたかった。
彼女に、おれという存在を知って欲しかった。
結局、理性は欲望に負け、おれは木を登り始めた。
木の上から動揺した気配が伝わってくる。
でも、もう逃げられないだろう。
そうたかをくくっていたおれは信じられないものを目にした。
「なっ・・・!」
銀の髪がおれの頬をかすめる。
彼女は木の上から飛び降りて、そのまま走って行ったのだ。
嘘だろ?この高さから?
慌てておれも飛び降りて、彼女の後を追う。
彼女は女子生徒とは思えないほど足が速かった。
けれどもそこはおれの意地と根性で、どうにか追いついた。
捉えた手首は思いの外細くて、動揺する。
間近に見える少女は小さく、儚くて。
こちらを振り返ってくれない少女の顔が見たくて、おれは声をかけた。
「桐谷。」
おれだって、分かっていた。
あの少女が誰なのかってことくらい。
銀の髪と紫の瞳を持つ少女なんて1人しかいない。
それでも、2人で話せる機会なんて今日くらいしかないだろう。
そう思って名を呼べば、彼女はこちらを向く。
初めて彼女の顔をちゃんと見たおれは、正直言って驚いた。
今年の代表挨拶をした外部生が珍しい色彩を持つ絶世の美少女だという噂はおれも聞いていた。
外部生だからと差別されるのではなく、男子生徒からは捕食者の目で、女子生徒からは嫉妬の目で見られていると。
でも、聞くのと見るのとでは大違いだった。
頭の上で一つに纏められた、癖のない艶やかな銀の髪。
白い肌に整った顔立ち。
透明感のある綺麗な紫の瞳。
全てがおれを惹きつけた。
その瞬間、おれは堕ちた。
一目惚れ、というヤツだ。
どうにかして彼女と仲良くなりたい。
明日から学校で出会った時、挨拶を交わしたり、話したりできるようになりたい。
彼女に、近づきたい。
その一心で、おれは口を開いた。
適当にどこかでサボろう。
そう思って、おれはいつも授業をサボる時に行く場所へ行った。
森の中にはこの学園の生徒は足を踏み入れようとしないし、快適だ。
おれはよくとある一本の大木に登っては昼寝をする。
今日もその木のところまで行き、登ろうとしたときだった。
潜められている気配に気付いた。
先客がいるのか・・・?
見上げると、揺れる銀が見えた。
「あ・・・」
あの屋上での一件以来、忘れることのできなかった色だ。
おれを助けてくれた少女。
彼女に関しておれが知っているのは、この学園の生徒で銀の髪に紫の瞳で、能力者だということ。
光陰部に、そんな特徴を持つメンバーはいない。
それはつまり、彼女は自分が能力者だということを隠しているということだ。
詳しい事情は分からないが、おそらくそうなのだろう。
それなのに、おれを助けてくれた彼女には感謝しかない。
だからおれは、彼女の存在を隠した。
本来なら光陰部に彼女の存在を報告すべきだったが、おれはそうしなかった。
今、この木の上にいるのは彼女に違いないだろう。
珍しい銀の髪を持つ少女は彼女の他にいない。
彼女のことを思うのならば、ここは気付かぬふりをして去るのがいいんだろう。
でも、おれはそうしたくなかった。
会って、感謝を述べたかった。
秘密を知ってしまったけれども、誰にも口外しないから信用してくれと伝えたかった。
彼女という存在を知りたかった。
彼女に、おれという存在を知って欲しかった。
結局、理性は欲望に負け、おれは木を登り始めた。
木の上から動揺した気配が伝わってくる。
でも、もう逃げられないだろう。
そうたかをくくっていたおれは信じられないものを目にした。
「なっ・・・!」
銀の髪がおれの頬をかすめる。
彼女は木の上から飛び降りて、そのまま走って行ったのだ。
嘘だろ?この高さから?
慌てておれも飛び降りて、彼女の後を追う。
彼女は女子生徒とは思えないほど足が速かった。
けれどもそこはおれの意地と根性で、どうにか追いついた。
捉えた手首は思いの外細くて、動揺する。
間近に見える少女は小さく、儚くて。
こちらを振り返ってくれない少女の顔が見たくて、おれは声をかけた。
「桐谷。」
おれだって、分かっていた。
あの少女が誰なのかってことくらい。
銀の髪と紫の瞳を持つ少女なんて1人しかいない。
それでも、2人で話せる機会なんて今日くらいしかないだろう。
そう思って名を呼べば、彼女はこちらを向く。
初めて彼女の顔をちゃんと見たおれは、正直言って驚いた。
今年の代表挨拶をした外部生が珍しい色彩を持つ絶世の美少女だという噂はおれも聞いていた。
外部生だからと差別されるのではなく、男子生徒からは捕食者の目で、女子生徒からは嫉妬の目で見られていると。
でも、聞くのと見るのとでは大違いだった。
頭の上で一つに纏められた、癖のない艶やかな銀の髪。
白い肌に整った顔立ち。
透明感のある綺麗な紫の瞳。
全てがおれを惹きつけた。
その瞬間、おれは堕ちた。
一目惚れ、というヤツだ。
どうにかして彼女と仲良くなりたい。
明日から学校で出会った時、挨拶を交わしたり、話したりできるようになりたい。
彼女に、近づきたい。
その一心で、おれは口を開いた。
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