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高校生編 4月
出会い
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近くに人の気配を感じて、私は身じろぎをした。
急速に意識が浮上していく。
「ん・・・」
目を開くと、目に飛び込んできたのは、橙色。
「あれ、起きたの?」
「だ、誰っ!?」
驚いて飛び上がると、バランスを崩して木の上から落ちそうになった。
「あ、危ないよ!」
ギュッと支えられ、パニックになる。
広い胸に、適度に筋肉のついた堅い体。
それらを感じて、声は女の子のように高いけれど、私を抱き留めている相手は男子だと分かった。
するりと腕の中から抜け出し、距離をとる。
とはいえ木の上だからそんなに離れられないけど。
フワフワの橙色の髪に、クリッとした大きな黄緑色の瞳。
男子にしては小柄な体つき。
火の気配を感じて、私は思わず顔をしかめた。
火属性の能力者だ。
つまり光陰部のメンバー。
なんだか私、光陰部との遭遇率、高くない?
気のせいだといいんだけど。
ジャージに刺繍された名前は、萌黄。
もえぎって読むのかな。
刺繍糸の色から見て、同級生。
「こんなところで寝てるなんて危険だよ。落ちちゃったらどうするの。ボク、ソラちゃんが落ちないように守っててあげてたんだよ!」
褒めて褒めて、という子に突っ込みたい。
なんで私の名前知ってるの?
ジャージに刺繍されているのは桐谷という名字だけ。
「なんで、私の名前・・・」
ポツリとこぼすと目の前の子はニコニコ笑う。
「だってソラちゃん、有名じゃん!入学式で代表挨拶してたし。それにかわいいし!」
ああ、そっか。
納得した。
かわいいという所に納得したわけじゃないよ。
自分の容姿は良くも悪くも平凡だと自覚している。
入学式で代表挨拶をした外部生。
ただでさえ外部生は少ないから、異質な存在として記憶に残りやすい。
おまけに私は銀の髪に紫の瞳という珍しい色彩を持っているからなおさら覚えやすいのかもしれない。
「あ、ボク、萌黄 春馬(もえぎ はるま)っていうんだ!よろしくね!ボク、可愛い女の子大好きだから仲良くしてくれたら嬉しいな!」
萌黄くん、か。
フワフワしてて、可愛い甘えん坊キャラ。
容姿も整っているから、女子生徒にも人気があるんだろうな。
できれば関わりたくない、よろしくしない。
どこかに行ってくれないかな、この子。
知らない人と2人って、なんだか落ち着かない。
そんな私の願いが天に通じたようだ。
彼は何かに気付いたように眉を上げた。
「あ、誰か来たみたい。鬼かも。ボク逃げなきゃ!知ってる?賞品ってお菓子の詰め合わせなんだよ!絶対ゲットしなきゃね!」
そう言うとピョーンと木から飛び降りた。
「じゃあ、またね!ソラちゃん!」
またねじゃなくていいんだけど、とりあえずどこかにいってくれて嬉しい。
密かにホッと胸をなで下ろす。
同時にこちらに近づいてくる人の気配を察知する。
うん、あの子の言ってたことは本当みたいだ。
・・・でも、私より先に人の気配を察知するなんて。
自慢じゃないけど私、人の気配には敏感だ。
私より先に気配を見つける人なんて、そうそういない。
分かったことが一つ。
あの子、可愛いだけじゃなくて、裏がありそうだな。
なんて言うかこう、黒いものを抱えてそう。
急速に意識が浮上していく。
「ん・・・」
目を開くと、目に飛び込んできたのは、橙色。
「あれ、起きたの?」
「だ、誰っ!?」
驚いて飛び上がると、バランスを崩して木の上から落ちそうになった。
「あ、危ないよ!」
ギュッと支えられ、パニックになる。
広い胸に、適度に筋肉のついた堅い体。
それらを感じて、声は女の子のように高いけれど、私を抱き留めている相手は男子だと分かった。
するりと腕の中から抜け出し、距離をとる。
とはいえ木の上だからそんなに離れられないけど。
フワフワの橙色の髪に、クリッとした大きな黄緑色の瞳。
男子にしては小柄な体つき。
火の気配を感じて、私は思わず顔をしかめた。
火属性の能力者だ。
つまり光陰部のメンバー。
なんだか私、光陰部との遭遇率、高くない?
気のせいだといいんだけど。
ジャージに刺繍された名前は、萌黄。
もえぎって読むのかな。
刺繍糸の色から見て、同級生。
「こんなところで寝てるなんて危険だよ。落ちちゃったらどうするの。ボク、ソラちゃんが落ちないように守っててあげてたんだよ!」
褒めて褒めて、という子に突っ込みたい。
なんで私の名前知ってるの?
ジャージに刺繍されているのは桐谷という名字だけ。
「なんで、私の名前・・・」
ポツリとこぼすと目の前の子はニコニコ笑う。
「だってソラちゃん、有名じゃん!入学式で代表挨拶してたし。それにかわいいし!」
ああ、そっか。
納得した。
かわいいという所に納得したわけじゃないよ。
自分の容姿は良くも悪くも平凡だと自覚している。
入学式で代表挨拶をした外部生。
ただでさえ外部生は少ないから、異質な存在として記憶に残りやすい。
おまけに私は銀の髪に紫の瞳という珍しい色彩を持っているからなおさら覚えやすいのかもしれない。
「あ、ボク、萌黄 春馬(もえぎ はるま)っていうんだ!よろしくね!ボク、可愛い女の子大好きだから仲良くしてくれたら嬉しいな!」
萌黄くん、か。
フワフワしてて、可愛い甘えん坊キャラ。
容姿も整っているから、女子生徒にも人気があるんだろうな。
できれば関わりたくない、よろしくしない。
どこかに行ってくれないかな、この子。
知らない人と2人って、なんだか落ち着かない。
そんな私の願いが天に通じたようだ。
彼は何かに気付いたように眉を上げた。
「あ、誰か来たみたい。鬼かも。ボク逃げなきゃ!知ってる?賞品ってお菓子の詰め合わせなんだよ!絶対ゲットしなきゃね!」
そう言うとピョーンと木から飛び降りた。
「じゃあ、またね!ソラちゃん!」
またねじゃなくていいんだけど、とりあえずどこかにいってくれて嬉しい。
密かにホッと胸をなで下ろす。
同時にこちらに近づいてくる人の気配を察知する。
うん、あの子の言ってたことは本当みたいだ。
・・・でも、私より先に人の気配を察知するなんて。
自慢じゃないけど私、人の気配には敏感だ。
私より先に気配を見つける人なんて、そうそういない。
分かったことが一つ。
あの子、可愛いだけじゃなくて、裏がありそうだな。
なんて言うかこう、黒いものを抱えてそう。
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